「21世紀の阿片」フェンタニルと港町ハンブルク
ドイツでは今、従来のヘロイン、コカイン、覚せい剤などに加え、「フェンタニル」と呼ばれる合成麻薬が大きな社会問題としてクローズアップされています。
処方麻薬のフェンタニルは、手術の後や末期がんなどの疼痛を緩和するため、医療の現場でよく使われています。その強度は、モルヒネの100倍、ヘロインの50倍と言われており、少量でも疼痛を抑え、多幸感をもたらす強烈な効果があります。
そのため、オーバードーズとなりやすく、2021年にはドイツだけで88人が急性中毒で死亡しています。同じ年、ドイツ以外のEU諸国におけるフェンタニールの死者は合計149人ですので、フェンタニル汚染は、特にドイツで深刻であることが伺われます。
アメリカでは状況はより深刻で、年間10万人を超える人が死亡。その依存度の高さと社会への広がりの速さから、「21世紀のアヘン」と呼ばれています。
麻薬常用者が麻薬を安全に使うための公共施設
ドイツの都市の中央駅の周りは、治安が良くないところがたくさんあります。わたしの暮らすドイツ・ハンブルクもそうで、中央駅周辺は明らかに薬物使用者といった人が多く、おのずと早足になります。
ドイツには麻薬法で定められた「麻薬使用室(Drogenkonsumraum)」と呼ばれる、麻薬常用者が麻薬を使用するための施設があります。日本からすると信じられないことですが、麻薬使用室では、
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