「パンデミック条約」の現在地
WHO加盟国は4月29日、「パンデミック条約」の最終文言をめぐる話し合いを再開する。5月27日から始まるWHOの第77回年次総会での採択を目指してのことだ。
パンデミック条約とは、世界がパンデミック再発を抑止に努め、次にパンデミックが起きた際に収束に向けて平等にワクチンに配分できるよう協力するための枠組みだ。
条約はワクチン義務とは全くの無関係
13日、東京では「ワクチンが任意である日本の主権を無視して、接種を強要するWHOに強く抗議する」「健康を人質にしたWHOの横暴を許すな」「政府は条約の情報を国民に開示せよ」などとして反対デモをする人もいたそうだが、パンデミック条約はワクチン接種の義務化とも強要とも何ら関係がない。
具体的には、感染症サーベイランス体制の強化、、透明でタイムリーな情報共有、ワクチンや治療薬の協力的な開発・平等な分配・技術移転、資金調達などについて定める文書で、最新のドラフトにも「ワクチン」という言葉は11回出てくるが、先進国から途上国へのワクチンのライセンス移転や平等な分配などに関する記述しかない。
条約の草案は、
2023年1月付「バージョン0」
Zero draft of the WHO CA+for the consideration of the Intergovernmental
Negotiating Body at its fourth meeting
2023年10月30日付「提言」
Proposal for negotiating text of the WHO Pandemic Agreement
2024年3月付「改訂版」
Revised draft of the negotiating text of the WHO Pandemic Agreement
の全バージョンがすべてネット公開されており、非開示でも何でもない。
本記事ではパンデミック条約の草案を読むことを通じ、パンデミック条約は何を目指し、最終調整と決議を前にどんな問題を抱えているのかを解説する。
軍事大国は締結に消極的
パンデミック条約の採択に二の足を踏んでいる国は多い。
アメリカ、中国、ロシアなどの軍事大国だ。
なぜか。
詳しくは、拙著『新しい自由論ーパンデミックを終わりにするための新しい自由論』第7章(特に150頁~)を参照してもらいたいが、これらの国々は
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