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ウイルスの起源「研究所漏洩説」の報告書を書いた”濁った水”の正体


前回の記事で書いたとおり、いま新型コロナウイルスの起源をめぐる問題が急展開を見せている。原因不明肺炎の発生を受けた中国が2020年1月、武漢の市場を閉鎖した際、市場を消毒する前に採取した検体の遺伝子配列の情報が、国際的な遺伝子情報データベース「GISAID」に密かに公開されたからだ。

非公開になった武漢の市場の遺伝子情報

しかし、公開された情報は再び非公開になり、ウイルスの起源の解明をめぐる中国と世界との駆け引きはますます過熱している。

武漢の市場の遺伝子の一件がひと段落した4月17日、中国のこうした受動的な情報共有の流れに水を差す事件が起きた。

米共和党の元上院議員リチャード・バー氏が指示したという独自調査の報告書の全文が公開されたのだ。研究所漏洩説を示唆する同報告書の概要は、2022年10月にすでに公表されていた。しかし、報告書の全文は2023年1月にバー氏が退任した後に完成したとのことで、「AXIOS」という耳慣れないメディアがFOIA(情報公開請求)で入手した形で公開された。

報告書の筆者「濁った水」の正体


報告書の著者は「濁った水グループ(The Muddy Waters Group)」と匿名になっており、報告書には、赤いコロナウイルスが黒い沼のような水に沈む様子を表したおどろおどろしいイラストがついていた。

報告書によれば、2019年秋、武漢ウイルス研究所では、ワクチン開発に関連した2回の感染事故があった“可能性”があり、ワクチンが開発された時期からさかのぼって考えれば、中国では少なくとも2019年10月には2種類の新型コロナワクチンの開発が始まっていたことが“推測”され、その1つは武漢ウイルス研究所で行われていたことが“状況証拠”から強く伺われる、としていた。

レポートには、確たる情報も目新しい情報もなかったが、ひとつだけ驚いたことことがあった。それは、

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