もじゃらんこものがたり
1⃣ももちゃんとみみちゃん、ふたりだけのせいかつ③
おとこのこのてのなかにはうまれたばかりのくろっぽいひなどりがいてちいさくいきをしています。
ももちゃんは、もっていたハンカチでひなをくるんであげました。おとこのこがひなのからだをそぅっとこすってあげるとひなはだんだんげんきになってきました。
ももちゃんも、おとこのこもおおよろこび。
おとこのこがひなにたべさせるむしをとってくると、ももちゃんがあわててとめました。
「むしはやめようよ」
「え?なんで?とりはむしをたべるんだよ」
「うーん…でももじゃらんこが…」
「え?なに?もじゃらんこって」
ももちゃんは、どうにもせつめいするのがめんどくさくて
「くだものにしよう。リンゴのかわとか」
といってみると、おとこのこはすぐとびついてきました。
「リンゴのかわ、いいね。うちからもってくるよ」
ふたりで、こうえんのかえでのきのしたにだんボールをおいて、ひなをもうふでくるみました。リンゴのかわもいれてね。
ももちゃんとおとこのこはいろいろなはなしをしました。
おとこのこのなまえはいちろうくん。
ももちゃんよりひとつうえの、2ねんせい。
ふだん、じゅくとならいごとでまいにちいそがしいとのこと。
シーフードヌードルとミカンがすきなこと。かっているカメのなまえはドロシー。
ももちゃんが、
「おとうさんもおかあさんもはたらきにでて、いえにはいもうととふたりだけなの」
というと、いちろうくんはめをまるくして
「すごいね」
といいました。
「ぼくなんか、あめふりだとがっこうのちかくまでおかあさんにおくってきてもらってる」
「えー?おくりむかえはダメなんだよ。がっこうなんだから」
「はいはい、ないしょな」
いちろうくんとのわかれぎわに、
「がんばれよっ。おうえんしてる」
とポンッとせなかをたたかれて、ももちゃんはおもわずむねがドキドキしました。
ほっぺがポッポポッポしながら、ポケットにてをつっこむと、おとうさんからもらったおまもりがありました。
よる、かいちゅうでんとうをつけてもじゃらんこのおはなしをかんがえようとしたとき、とつぜんみみちゃんがしゃべりだしました。
「うまれてきてくれてありがとう」
え?
なんで??
みみちゃんもさくらえんでなんかあったの?
ももちゃんがかたまっていると、みみちゃんは
「てれび」
といいました。
「あっはっはっは」
ももちゃんはみみちゃんをだきしめました。
そのあと、ひなはどうなったのでしょう?
ふしぎなことがおこったんです。
ももちゃんといちろうくんが、がっこうからのかえりみちにこうえんのかえでのきのしたをのぞくと、ひなのところにたべものがおいてありました。
おこめとナシとミカンのかわです。
そのつぎのひはさつまいもにおまめ、つぎのひはおさかな。みずをのめるよういれものまであります。そんなひがまいにちつづきます。
おまけにあめのひにはひなのうえにかさがさしてありました。
ももちゃんといちろうくんは、かおをみあわせます。
「みんなでひなをまもってるね」
いちろうくんがそんなことをいうので、またももちゃんは、ほっぺがポッとしてしまいました。
もじゃらんこのおはなしも、いまはふゆへんです。
4ひきのこどものもじゃらんこがゆきのなかで、ゆきみだいふくをつくるおはなしです。
あんこをいれて、ゆきでくるんで、せっせせっせとだいふくをつくっていたら、そのまっさいちゅうにとりのひなが空からふってきてだいふくの中に、ぼちゃんっ。4ひきはびっくり。
でもあんこをたっぷりたべてひなはげんきになるのです。
そしてやっと、やっと、1ねんがすぎました。
おとうさんとおかあさんがかえってきました。
2人はこどもたちをだきしめて、かおじゅうにやまほどキスをするので、ももちゃんとみみちゃんはたべられるかもしれないとちょっとハラハラしました。
おかねもたくさんてにはいってもうだいじょうぶ。
そのめでたいひのよる、ももちゃんとみみちゃんは、もじゃらんこのおはなしをさいしょからさいごまできかせてあげました。
よにんはなみだなみだのおおわらい。
さてさて、そのごのことですが、ちょっとだけ大きくなったふたりはかいものにいっても、あんまりおかしをねだらなくなったんですよ。
バナナはべつですけどね。
おしまい。