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令和元年の労働衛生の現況(最新版)

こんにちは、りこ@産業医兼労働衛生コンサルタントです。
習慣化の難しさを痛感しております・・・
今日は労働衛生の現況について、解説します。最新のデータやある程度の数値を把握しておきましょう。面接の際に聞かれた時に答えられる準備をしておくことをお勧めいたします。それぞれの項目で重要な数値を書いていきます。あまり解説文はありませんが、重要な数値なので覚えながら読んでいただけると嬉しいです。

労働災害及び業務上疾病の推移

休業4日以上の死傷者数(平成30年)127,329人→(令和元年)125,611人
業務上疾病者数           8,684人 → 8,310人↓
死亡者数               909人 → 845人↓
いずれも前年より減少。

疾病分類別業務上疾病者数(令和元年8,310人の内訳)
負傷に起因する疾病(業務上の負傷により一次的に発生した疾病+続発性疾病)(平成30年)5,937人 → (令和元年)6,015人↑
うち、災害性腰痛(令和元年)5,132人と負傷に起因する疾病の85%!!
物理的因子(異常温度、異常気圧下、騒音など)による疾病(熱中症、放射線障害、耳の疾患など)(平成30年)1,437人 → (令和元年)1,118人↓
作業態様(重激業務、振動など)に起因する疾病(運動器疾患、負傷によらない腰痛、末梢神経障害など)(平成30年)457人 → (令和元年)457人
化学物質による疾病(がん、喘息、皮膚疾患、酸素欠乏症など)
 (平成30年)263人 → (令和元年)220人
じん肺及びじん肺合併症
 (平成30年)165人 → (令和元年)164人

業種別業務上疾病発生状況(令和元年)
1位 保健衛生業 1,930人
 (1位 災害性腰痛1,648人、2位 病原体による疾病69人) 
2位 製造業   1,569人
 (1位 災害性腰痛 776人、2位 異常温度条件による疾病264人)
3位 商業・金融・広告業 1,231人
 (1位 災害性腰痛 848人、2位 異常温度条件による疾病124人)
4位 運輸交通業 994人
 (1位 災害性腰痛 668人、2位 異常温度条件による疾病113人)

これまでの数値を見ても、いかに「災害性腰痛」が多いか、ということがわかると思います。だからこそ、腰痛をいかに減らすか、という視点で職場巡視をする必要があり、その対策が必須なのだと思います。

石綿による疾病

「労働者災害補償保険法」に基づく石綿による肺がん及び中皮腫の労災保険給付支給決定状況
★石綿による肺がん 
(平成29年)335件→(平成30年)376件→(令和元年)375件
★石綿による中皮腫
(平成29年)564件→(平成30年)534件→(令和元年)641件↑

上記の令和元年の数値は、労働衛生のしおり令和2年度 中央労働災害防止協会に載っている数値とは違っています。労働衛生のしおりが出版された段階では速報値でした。令和2年12月16日に公表された、厚生労働省 「令和元年度 石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめ(確定値)」 より引用しました。

令和元年度分の「労災保険給付」の請求件数は1,204件(石綿肺を除く)、支給決定件数は1,093件(同)で、請求件数・支給決定件数ともに、昨年度と比べると、やや増加しました。
肺がん、中皮腫、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚
請求件数 1,204件 (前年度比 35件増、3.0%増)
支給決定件数 1,093件 (同 96件増、9.6%増)
※引用元 厚生労働省 「令和元年度 石綿による疾病に関する労災保険給付などの請求・決定状況まとめ(確定値)」

過重労働による労災、自殺者数

過重労働による脳・心臓疾患、精神障害等の労災補償支給決定件数の推移
★脳・心臓疾患に係る労災補償の支給決定件数
(平成29年)253件→(平成30年)238件→(令和元年)216件↓
★精神障害等に係る労災補償の支給決定件数
(平成29年)506件→(平成30年)465件→(令和元年)509件(過去最多)
内、自殺者数(平成29年)98件→(平成30年)76件→(令和元年)88件

強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合
(平成29年)58.3%→(平成30年)58.0% (労働者計=100%)

自殺者数の推移
(平成30年)20,840人  → (令和元年)20,169人
  男性  14,290人  → 14,078人
  女性   6,550人  → 6,091人
  被雇用者 6,447人  → 6,202人(全体の30.7%)

上記の図は、警察庁 令和元年中における自殺の状況 資料から引用した図です。全体の人数は徐々に減少傾向、そして男性は女性の2.3倍と多く、被雇用者は全体の30.7%を占めていました。

令和2年の統計も公表されていました。
下記の表は、警察庁 令和2年の月別自殺者数について(12月末の速報値)から引用しました。

この速報値を見ると、総数20,919人、男性13,943人、女性6,976人となり、令和元年より総数と女性が増え、男性が減っています。

今回は数値ばかりでしたが、現状を知るために大切な数値ばかりなので、質問で聞かれた際に「令和元年では業務上疾病者数は8310人、その内負傷による疾病が6015人と最も多く、その中の85%が災害性腰痛となっています。」等と答えられると良いと思います。

以上、労働衛生の現況について書きました。労働衛生のしおり令和2年度 中央労働災害防止協会 に載っている数値を元に私なりに覚えておいた方が良い数値をピックアップして書いてきました。試験勉強や実際の現場でお役に立てると嬉しいです。

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