"市谷のマザーテレサ"秋山正子さんが立ち上げた第二のわがや。地域密着型ホスピス「坂町ミモザの家」
本noteでは、ホスピス特化型メディアとして、ホスピスの見学レビューや業界の動向をレポートしています。
今回は「市谷のマザーテレサ」の呼び名もある秋山正子さんが立ち上げられた「坂町ミモザの家」(以下、「ミモザの家」)にお伺いしたので、施設のご紹介や見学レビューをしていきます。
(1)「坂町ミモザの家」の成り立ちやサービス概要について
設立者の秋山正子さんが、地域の方々がより早期に専門家に気軽に相談できる場所を作りたいと思ったことがきっかけだったようです。
秋山さんは、訪問看護の現場で長く従事されてきた他、がん患者とその家族のための相談支援施設「マギーズ東京」を創設するなど、患者やその家族が頼れる場所を幅広く地域に作ってこられました。
それらの活動の中で、患者の症状が悪化する前のもっと早い段階で、気軽に相談できる場の必要性を感じていたところ、近隣の空き家を活用する話が秋山さんの元に届きました。
元々ホスピスを立ち上げたいという思いもあり、ホスピス機能を兼ね備えた、地域に開かれた相談支援の場として「坂町ミモザの家」を立ち上げるに至りました。
ちなみに「ミモザの家」の名前の由来は、以前そこに住んでいたミホさんとモトさんの姉妹の名前から「ミ」と「モ」が取られて名付けられたそうです。
「ミモザの家」の形態は、看護小規模多機能型居宅介護で医療依存度の高い方や、退院直後で状態が不安定な方に対して、在宅での看取り支援など、住み慣れた自宅での療養を支える介護保険サービスを提供しています。
主治医との連携のもと、24時間365日医療処置も含めた多様なサービスを展開しています。
「ミモザの家」の利用料金は下記のとおりです。(「坂町ミモザの家」HPより)
「ミモザの家」では、これまでご紹介してきたような"医療型ホスピス"とは違い、通所の利用が中心で、数週間や1ヶ月など長期的に宿泊される方は少ないのだそう。ご家族が罪悪感なく、ちょっとだけ預けたいなというときにすごく助かる存在ですよね。
お看取りもされており、実際に「ミモザの家」で最期を迎えられた方もいるとのことでした。
(2)施設内ぐるっと一周見学レビュー
「ミモザの家」までのアクセスは都営新宿線曙橋駅から徒歩6分、JR四ツ谷駅から徒歩10分の住宅街にひっそりと佇んでおり、駅から近く通いやすいです。
また、元々住宅だったこともあり、外観は一般的な家と全く変わらないので、私がお伺いした時にも一度、施設の前を通り過ぎてしまうほどでした。
中に入ると、そこにはパッとあたたかな空間が広がっています。照明の蛍光や木々に囲まれた雰囲気、木目調の内装などアットホームさを感じました。
施設内は全て新築で、1から利用しやすいように設計されたのだとか。
玄関から入るとすぐに、広いスペースがあります。普段は通所の方々が食事をされたり、思い思いの時間を過ごされているスペースとのことです。
1階にはお風呂とトイレがついており、お風呂は一般浴なので、リフトもついています。
2階に上がるとベッドが4台。「ミモザの家」の泊まり利用定員は5人なので、施設の中には全部で5台のベッドがあります。
部屋は個室なので、プライベートな空間が保たれています。
2階中央には事務所が設置されているため、スタッフさんとの距離が近く、安心して時間を過ごすことができそうですよね。
2階ベランダでは小さな家庭菜園をしており、ここで穫れた野菜は食事に出てくることもあるようです。
(3)「ミモザの家」のご利用事例
私が見学に行ったこの日は、「ミモザの家」を実際に利用されたAさんのご家族が来訪されており、当時のお話を少し伺うことができました。
元々デイサービスを利用していたAさんですが、心臓が悪かったりとご家族の心配が膨らみ、他の介護施設を探していたところに「ミモザの家」を知ったのだと言います。
Aさんは75歳で胃癌を部分切除したのち、86歳で腰椎圧迫骨折をしてしまったことから、同社の白十字訪問看護ステーションの利用をスタート。
そして同時期に「ミモザの家」にも登録され、週に2回ほど通所されていました。
90歳ごろには、だんだんと繊維物を飲み込むことが難しくなり、夜間転倒も増えたことから、通所のみならず定期的なお泊まりや、連日の訪問介護を開始されたAさん。
その後何度かお泊まりを繰り返されたのち、93歳にご自宅で老衰のため永眠されました。
認知症が進み、時に娘さまに強く当たることもあったようですが、最後まで自宅で過ごしたいというAさんの強い思いと、それをサポートしたいというご家族の思いを、「ミモザの家」の利用を通じて実現した事例のひとつでした。
(4)施設長からみた「ミモザの家」の魅力
「ミモザの家」施設長の吉住さんにもお話をお伺いすることができました。
吉住さんの芯ある看護感やご利用者の"最期まで自宅で過ごす"という希望を叶えられるようにと、懸命に働きかけられている様子がとても印象的でした。
前職で福祉用具関連のお仕事をされていた吉住さん。
「寝たきりの人なんていない。シーティングをサポートすれば、寝たきりの状態は防げる」という考えを持っておられ、福祉用具を扱っているときにも特にシーティング用具にこだわり活動されていました。
(福祉用具の世界は、男性社会であることが往々にして多い中で、女性として20年ほどご活躍されていたそう。会話の端々から女性としての力強さもすごく感じました…!)
そのように、お客さまがより豊かに日々暮らせるようにと、強いこだわりを持って働いていたところに、当時クライアントだった秋山さんから声をかけられ、白十字訪問看護ステーションで働くことになったそうです。
そして、2021年から「ミモザの家」での仕事をスタート。
訪問看護や「ミモザの家」では、お看取りの場面も多くありますが、介護や「死」に対して不安を抱えている患者さまとしっかりお話し、向き合うことを大切にされていました。
ご逝去後に「死に目に会えなかった」「もっと優しくすればよかった」などと後悔される方は後を絶えません。
そうした方に対して、亡くなる前のグリーフケアはもちろんのこと、これまでの豊富な看取り経験を通じて「死に目に遭える人の方が少ないし、十分優しくしていたよ」と自分の意見を時折混ぜつつ、対話をされているようです。
そうして、施設の利用が終わってからも、ずっと寄り添い続けることで、また困ったときには同じように助けを求めてくれる関係性が構築できているのだと言います。
病院から退院するとき、病院でできていたことが自宅でできるか不安な人も多くいますし、一方でちょっと泊まれるところがあれば、入院せずに済んだのに、という事例もとても多いようです。
そうした方に対しても、「ミモザの家」で一度泊まってもらって、状態を確認し、「これだったら自宅に帰られるね」という移行支援をしたり、長期宿泊の相談を受けたら臨機応変に調整したり、など柔軟に対応されているそう。
そのように、心から患者のことを思っている吉住さんの言動が、「ミモザの家」が支持され続けている根底にあるように感じました。
いつでも誰でも頼れる第二の家「ミモザの家」が今後も地域の方々に広く使っていただけることを願っています。
坂町ミモザの家のホームページはこちら↓
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