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診療同行看護師の誇りを持って、お看取りまで支える。四街道まごころクリニック診療同行部門看護主任インタビュー

本noteでは、ホスピス特化型メディアとして、ホスピスの見学レビューや業界の動向をレポートしています。

今回は、在宅看護の第一線で活躍し、何人ものお看取り経験もされてきた、医療法人社団まごころ四街道まごころクリニックの診療同行部門看護主任湊由美香さんへインタビューをしました。

在宅での看取りに関してもっと知りたい方、診療同行看護師ってどんな方が活躍しているの?と気になる方は、ぜひ最後まで読んでください!

医療法人社団まごころ四街道まごころクリニック
診療同行部門看護主任湊由美香さん

秋田県出身。看護師専門学校にて正看護師を取得後、病棟や外来にて外科、内科、整形、循環器、脳外科など幅広く経験。
10年前より四街道まごころクリニックにて診療同行看護師として活動を開始。
現在は診療同行部門看護主任として活躍している。
趣味は4匹の保護猫と愛車でのドライブ。

秋田から東京へ上京。手に職をつけたい一心で看護師の資格を取得

ー湊さん、今日はよろしくお願いします!湊さんが看護師を志したきっかけや、診療同行看護師として四街道まごころクリニックへ入社するまでの経緯を教えてください。


私は秋田県出身ということもあり、学生の時に「東京で働きたい」という思いを強く持っていたんです。ですが、当時は働きたいと思ったら働けるというわけでもなく、まずは手に職をつけるために看護師の道を選びました。

いわゆる地方の人が上京したい、と憧れる気持ちと同じだったと思います。

バスガイドと迷っていたくらいでしたから、憧れの看護師さんがいたなどの綺麗なストーリーがあったわけではなく、当時はあくまで生きていくための手段として考えていました。

それから看護師として15年ほど、病院の外来やクリニックを中心に転々と働いていました。

その時、実の父親がパーキンソン病になってしまい、彼を一人にはして置けない、と私自身の働き方を検討する必要が出てきたんです。

その時、いつもの道沿いに"18:00には必ず電気が消えるクリニック"を見つけたんです。
中を覗いてみても患者さんはいないし、待合室はすごく小さいし「・・・これは一体なんだ?」と気になった私は、思い切って電話をしてみました。

すると、電話口の方が「ここは訪問診療ですよ」と教えてくれたんです。

お恥ずかしながら「訪問診療」というものを、その時に初めて知りました。
そして、介護との両立が叶いそうだったので、入社を決めました。
それが、この四街道まごころクリニックだったんです。

ー資格を取得されてから25年ほど経った今、看護主任さんとして活躍されていて、本当に素晴らしいです。これまで看護師を辞めたいと思ったことはなかったのでしょうか?


たくさんありました。
特に、普段から本を読まない私が、「勉強をし続けて、知識のアップデートをしていくこと」がたいへんなことでした。

自分の学のなさが、目の前の患者の体に悪影響を直に与えてしまう。
自分が知らないことで、本当は症状を改善できるかもしれないのにそれができないというのは、とてつもなく恐ろしいことだと思います。

患者さんの性格も症状も十人十色ですから、自分自身が常に学び続けてどんな患者さんにも対応でき、安心して療養してもらい、満足度が得られればいいなといつも思っています。

ですが、今はこの診療同行看護師をもっとみんなに知って欲しいし、一緒に働く仲間がやりがいを持って働いて欲しいと思って、私も鋭意奮闘しています。

入社1日目は看護師0人からのスタート。手探り状態での訪問診療がスタート

ーこれまで様々な現場で活躍されてきた湊さんですが、四街道まごころクリニックさんへの入社後は、順調なスタートを切れたのでしょうか?

それが、なんと私が入社する数日前に看護師さんが辞めてしまい、当時そこにいたのは先生(お医者)と事務の方のみ。
患者さんの申し送りもなければ、訪問診療のことを教えてくれる看護師仲間もいなかったんです。

先生に「車の運転はできますか?」と聞かれて、言われるがままに運転して患者様のご自宅へ。当時は「もうやるしかない」という気持ちでしたね。

先生がバイタルを取り始め処置をスタートされて、私も手探りではあるものの、「こういうことをしたら良さそう」とか、先生がやっていることを「私がやります」と引き受けたりする中で、少しずつ仕事を覚えていきました。

在宅看護は初めての経験でしたが、患者様の前に立つと、不思議と体が動いているんですよね。

その後、私以外にも看護師さんが入社し、仲間がどんどん増えました。
今では他職種併せて45人くらいのチームになりました。

ですが、訪問診療の経験がある看護師がいないため、老舗クリニックに研修に生かせていただきました。
その時に、「訪問診療の看護師は、先生の鞄持ちだから」と一人の看護師が言っていた言葉を、今でも強烈に覚えています。

確かに、まだまだ診療同行看護師は認知が低いかもしれないし、実際に行っていることは理解できる部分もある反面、「ただの鞄持ちでは終わらせたくない。そこにプライドがないのは格好悪い」と思ったんです。

それから、今でも、定期的に診療同行看護師の集いを開いて、地域の情報を共有したり、知名度をあげるための活動をしています。

家族に見守られながらの看取りは最上の幸せ。その一方で感じている孤独死への課題

ー診療同行看護師として避けられないのがお看取りだと思いますが、湊さんは終末期の患者さまとそのご家族に対してどのようなことを意識していますか?


クリニックとして年間看取り数は100件を超え、私としても看取りは数々経験させていただいてきました。

その中でも一番意識していることは、困った時にすぐに駆けつけられる行動力と、その場に臨機応変に対応できる実力を常に身につけておくことです。

診療同行看護師は、ご家族の思いに寄り添いつつ、医師の説明だけでは理解しがたい内容など、容態を判断して「この先、こういうふうに変わるだろう」ということをご家族にお伝えして、最期の覚悟を持たせる係だと思っています。

患者さまご本人に対しては、本当に人それぞれなんですよね。落ち込んで「何もしてくれるな」という方がいれば、自分の行く末を完全に受け入れて達観している方もいるので。

それでも共通して大切にしていることは「傾聴」と「無言の時間」です。
特に、前者の方に関しては、こちらから何を伝えても、何も伝わらないことが多いです。
ですから、本人が自分の気持ちを吐露してくれたら、そっと頷いてお話をたくさん聞きます。

相手が無言になったら、私も無言になる。
そうすると「まあ、そうはいってもね」ってこちらから何を言わずとも、自然に納得しはじめてくれるんです。

ですから、話してくれる話には耳を傾け続け、無言の時間も大切にするというコミュニケーションを意識しています。

ー私も祖母が癌で、先日「なんで私は、こんな病気になってしまったんだろう」と問われた時、言葉に詰まってしまったんです。
でも傾聴してそばで頷いてあげることが、大事なのですね。


そうですね。何よりも、りこさんの場合は、孫としてただただそばにいてあげて欲しいです。

おばあさまは、りこさんがケアの方法を勉強して実践してくれるとか、吐き出した言葉に対しての答えを求めているわけではなく、ただそばにいてお話を聞いて欲しいと思っているはずです。ご家族にしかできない役割があるのではないでしょうか。

実際、これまでお看取りの瞬間を見ていても、子供や孫たちに囲まれて旅立つことができるのって奇跡のようで、すごく幸せなことだなと思います。

以前、90歳のおじいちゃんが、孫やひ孫に囲まれて、天国に旅立たれた時、ご本人もとても穏やかな顔をされていたのが印象的でした。
そして、ご家族は「ありがとう、ありがとう」とおじいちゃんの体をさすり、お看取りのために訪問診療が到着してからは、ぴたりと涙を止めて、晴れやかな表情をされていました。

多くの人が住み慣れた家で最後を迎えたいと思っていますが、その実現のためには、常時介護の必要性が高まった際に、ご家族の介護負担軽減をどのようにして行うかが課題ですが、社会的にはまだそれを十分に支えるだけの体制が整っていないのが現状です。

その結果、一人で旅立たれる方や看取り難民が増えています。

中には、「ああ、きっとトイレに行きたかったんだろうな」という状態で亡くなっていたり、それを見つけてショックで動けなくなってしまったヘルパーさんから泣きながら電話がかかってきたりすることもあります。

一人でも多くの人が、最期の時間の希望を叶えられるように、私も尽力していきたいと思っています。

ー今後は看取り難民が47万人にも膨らむと言われており大きな社会課題ですよね。
そこで在宅看護に加えて、選択肢の一つになるのが「ホスピス」だと思い立ち上げ中なのですが、湊さんが理想とするホスピス像みたいなものはありますか?


私は「施設」という要素が少ない、アットホームでこじんまりした、スタッフとの距離が近いところがいいなと思っています。

大きな組織になってしまうと、どうしても看護もシステム化されてしまい、一人一人に対してじっくりとケアができないといったことが不可避だと思います。

ご本人が自宅と同じくらい、満足できる環境を作ってあげられたら理想ですよね。

ーそうですよね。どんな場所もやはり自宅ではないわけですから、ご本人が心から穏やかさを感じられる工夫は必要ですよね。
加えて、残されるご家族に対しても、大事な人の「死」を受け入れるためにケアが必要なのでは、と感じています。


そうですね。
前述した通り傾聴や対話を通じて、私たちは4つの全人的苦痛に対してケアできるようにしています。
そして、座学なども繰り返し行くことで常に意識下にはおくようにしています。

あとは、大切な方の死はやはり誰にとっても悲しく寂しいことですが、この思いは、悲しいままでは絶対に終わらないんです。
初めは喪失感でいっぱいでも、「日薬」といい、時間がたつと必ず笑顔で話せるようになります。

例えば、私の主人の弟が難病を患い25歳で亡くなったことがあって。

お母さんはずっとニコニコしながら「大丈夫だから」と介護をしていたのですが、お看取りのあと、義弟の遺体が運び出される寸前で「私の息子を持っていかないで!!連れていかないで!!」と叫び出して。

その時に、「ずっと我慢して、隠していたけれど、この方の本心はここにあったんだな」と衝撃を受けました。

ところが、葬儀まで抜け殻のようになっていたお母様でしたが、数日たつとだんだんと元気になってきて、「ああ、これが日薬なんだな」と実感したんです。

決して忘れていくわけではなく、大切な我が子との思い出や存在をいい意味で整理できているんだなと。

そこには、看護師の私が介入するのではなく、「日薬」が解決してくれるんだなと思ったんです。

ー「日薬」初めて聞きましたが、とても心強く支えになる言葉ですね。
これまで多数のお看取りの経験をされてきた湊さんだからこそ言える言葉だと感じました。
では最後に、今後の意気込みや展望をお聞かせください。


在宅に携わる看護師さんが、やりがいを持って、楽しんでお仕事できる環境を作っていければいいなと思っています。

診療同行看護師は、働く中での経験に加えて、自分が育ってきた家庭環境なども含めて人生の経験を活かせる仕事です。

だからこそ、ある程度の経験を持っていないと厳しい、とよく言われていますが、私としては、患者の痛みに寄り添える方であれば、新卒の方も学生さんも受け入れられるような体制を整えたいと思っています。

在宅ってこんな世界があるんだよということを、多くの方に知っていただきたいです!

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以上、医療法人社団まごころ四街道まごころクリニックの診療同行部門看護主任湊由美香さんへのインタビューでした。

四街道まごころクリニックさんにご興味がある方は、下記HPの「お問い合わせ」または私までお気軽にご連絡ください!

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私は「自分の家族を預けられる」ホスピスを立ち上げ中です。
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