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わがままで愛おしい人
私の夫はわがままだ。
日々の行動1つをとっても、常に自分が決定権を持ち、自分の意志で選択しなければ気が済まない。
誰かから強要されたり急かされたりして、自分のペースを崩されることが大嫌いなのだ。
一方私は、基本的に「自分がこうしたい」という想いが湧き上がるまでに時間がかかるタイプで、時には湧き上がってこないことすらあるため、夫の「ああしたい」「こうしたい」「これは嫌だ」という要望を受け入れやすい。
むしろ私は相手がどんなに親しい相手であっても、「私といる時間って楽しいのかな?楽しめてるかな?」という不安が常に付き纏うため、自分のペースを絶対に崩さない夫といると「私には彼の行動を左右させる力はない」という事実に安心して、自分の気持ちにゆっくりと想いを馳せることができる。
だから、夫婦としての相性は悪くない。むしろ良いと思う。
でも、そんな夫のわがままは時に私の常識の範囲を超えてくる。
特に私たち夫婦間の出来事に、他の人の意思や思惑といった「他者の介入」を察した途端、恐ろしく意固地になる。
その察知能力は、敵の存在を察知した野生動物みたいに鋭い。
「いやいや、そんなもんだよー」とか言いたくなるようなことでも、夫自身が納得できないことは断固拒否。
そんな夫といると、私がコツコツと準備をしていた計画がおじゃんになることだってしばしば。
今回もそうだった。
私がコツコツコツコツ…時間をかけて計画していた出来事の背後に「他者の介入」を察知した夫。
…気づかれたら終わり。野生動物だもん。
気付いてしまった夫は、いつも納得がいくまでジーッと考える。
そしてひとしきり考え終わると、私も驚くような奇想天外な新しい提案をしてくるのだ。
その提案は型破りなようで的を得ていて、私はいつも驚かされる。
比較的常識的な(?)感覚を持つ私には、考えが及ばないから。
結婚当初は、常識外れな夫の行動にイライラして、よく喧嘩していた。
でも長年一緒に過ごした日々を振り返ると、夫の感覚に従って私が嫌な思いをしたことは一度もなかった。
だから、私は夫の決断を気長に待つ。
計画がおじゃんになったやるせなさに、「次はどんな提案をしてくるのだろうか?」とちょっとのワクワクを添えて、待つ。
そして2人で決めた決断に対して、「私たちはこれでいいんだった」と毎回思うんだった。
でも、いつも忘れて、また繰り返す。
私は今も、わがままで愛おしい夫の決断を待っている。
でもタダでは待たない。コツコツ計画したんだもん。
美味しいごはんを食べながら、待っている。