診療画像機器工学11/26(土)
問1
X線管の管電流で正しいのはどれか。2つ選べ。
1、空間電荷電流は電極間距離の2乗に比例する。
2、温度制限領域の管電流は管電圧に依存する。
3、空間電荷制限領域の管電流は陰極温度に依存する。
4、焦点が小さいほど空間電荷が多くなる。
5、管電流とフィラメント電流の関係を管電流特性という。
解答:4、5
解説
1、空間電荷電流は電極間距離の2乗に反比例する。
→Langmuir-Childの式を参照(以下記載)
2、温度制限領域の管電流は管電圧を上げても管電流は変化しない。陰極の温度に比例する。
3、空間電荷制限領域の管電流は管電圧に依存する。
管電流特性
・整流作用
陽極を陰極に対し、正電位としたとき、熱電子が陽極に到達して陽極電流が流れるが、電圧の極性を逆にすると熱電子が陽極に到達できないため陽極電流が流れない性質。
・空間電荷
空間に残留した熱電子
・空間電荷制限領域
陰極の温度を一定にして管電圧を上げていくと管電圧の上昇とともに管電流が流れる領域
→陰極温度に関係なく、管電圧に依存して管電流が流れる。
陰極から放出された熱電子の一部が陽極に達して管電流となり、残りの熱電子は空間電荷となる。空間電荷は、負電荷のため、陰極前面も負となり、陰極からの熱電子放射を抑制する。そのため、陰極温度を上げても熱電子放射量は変化しない(一定となる)。このとき流れる管電流を空間電荷電流といい、Langmuir-Childの式で表され、空間電荷電流は、管電圧の3/2乗に比例し、電極間距離の2乗に反比例する。
Langmuir-Childの式
・飽和電流
温度制限領域での管電流
・温度制限領域
空間電荷制限領域のときの管電圧よりも高い管電圧で管電流がプラトーとなり、管電圧を上げても管電流が変化しない領域
→陰極の温度を上げて熱電子放出量を増やせば飽和電流は増加する。
→陰極の温度によって管電圧が決まる。
・電流の動作特性
暗記用にご利用ください。
・現在の回転陽極X線管の特徴
許容電流が大きく、焦点が小さい。
※焦点が小さいほど鮮鋭度が向上する。
・管電流特性(=エミッション特性)
管電流とフィラメント電流の関係
・フィラメント特性
フィラメント電圧とフィラメント電流の関係
焦点寸法と管電流の関係
・焦点が小さいほど熱電子の通路が狭くなるため、電子ビームは流れにくくなる。よって、小さい焦点に同一の管電流を流すためには、フィラメントからの熱電子放射を増やす必要があり、小焦点ほど空間電荷が多くなる。
・フィラメント後方から発生した熱電子は、ほとんどが空間電荷となるが、管電圧が高くなるにつれ、陽極に吸引される。この空間電荷も小焦点ほど多く存在するため、空間電荷電流と飽和電流のはっきりとした境界はない。
電極間距離と管電流の関係
・電極間距離が長くなると管電流は流れにくくなるため、熱電子放射を増やす必要がある。そのため、空間電荷が増加し、管電圧が低く、管電流が大きい場合は、空間電荷電流で動作するようになる。
・空間電荷制限領域では、わずかな管電圧の変動が管電流値に大きく影響し、低管電圧で大管電流を必要とする撮影が困難となる。
参考文献