人生最後の推し、渡邉美穂さんの卒業発表
3月31日、僕は目を疑った。
そこで見たのは日向坂46 7thシングル『僕なんか』のフォーメーションだ。
3列目の真ん中に彼女がいた。
デビュー曲からずっと2列目にいたが、最近メディアへの露出が増えてきたため、そろそろフロントメンバーになれると期待を膨らませていたところだった。
ありえない。どうしてみほちーが3列目なの。
不祥事とか問題を起こしたわけでもないのに。
凄くメンバーのことを想っていて、真面目で努力家で全力な彼女が何故報われないのか。
色んな嫌な予感が頭を駆け巡ってじわりと脂汗が出る。
そんなはずはない。まだまだこれから。彼女がセンターに立つその日を心待ちにしているのだから。
約束の地東京ドームでのライブ公演『ひな誕祭』は素晴らしかった。
彼女たちは輝いていた。間違いなくあの瞬間の日本中の誰よりも。
渡邉美穂さんも変わらず輝いていた。命を燃やしていた。全力でアイドルをしていた。
しかし、私は多忙なこともあり現地ではなく家でライブ配信を観ていた。
昔はライブなんてチケットが取れた勝者にのみ許されたものだったのに、昨今の感染症情勢のお陰(と言うのは少し不謹慎だが)でライブ配信が当たり前の世の中になった。
家にいながら現地組と同じように感想を抱けるのは便利な世の中だな、なんて思っていた私。
今なら言える。
お前は後悔するぞ。
推しは推せるうちに推せ。とはよく言うものだが、ちゃんとした推しが今までいなかった私にはあまりピンと来ていなかった。
推しが卒業したら推し変すれば良い。それくらいアイドルに溢れていた世の中だった。
実際僕は高城亜樹さん、生駒里奈さん、北原里英さん、竹内美宥さんの卒業を見送ってきた。
中には結婚されたり表舞台には出なくなった方もいる。
それでも、他のアイドルやアイドル以外を好きになったり、それまで通り変わらない日常を過ごしてきた。
しかし、今となっては僕の中で渡邉美穂さんがいかに特別な存在であったのかを思い知った。
4月3日、震えた。
渡邉美穂さんからアプリにメッセージが届いた。
いつも通り『昨晩ブログ更新したから見てね』なんて可愛い絵文字と共に自撮りが送られてきていた。
ライブ後最初のブログに彼女が何を綴るのか楽しみになりながら開いた。
開いたスマホの画面の真ん中辺りに、モヤがかかったように見にくい文字列がある。
何度も読み返した。
うそだ。
そんなはずない。
………。
ここまで読んで反射的に涙が溢れてきた。
彼女から感謝されることなんて何もない。
僕は彼女のお陰でここまで生きてこられた。感謝するのは僕の方なのに。
意味が分からなくなってしまった。
今この状況は夢なのか妄想なのか、とにかくこの場が現実ではない不思議な感覚に陥った。
とにかく部屋の窓を開けて外の空気を吸った。冷たい空気が僕の思考をクリアにした。
人生最後の推しにしていた渡邉美穂さんがアイドルを卒業する。
彼女はアイドルになるべくしてこの世に生まれたような、天性のアイドルと言っても良いくらい僕にとっての完璧にアイドルの理想像だった。
前にnoteで渡邉美穂さんのことについて言及した記事を以下に引用する。
このアイドルに対する考えを読むと分かる通り、僕はアイドルである/アイドルをしている渡邉美穂に恋をしていた。
それはあくまでも本気で人を好きになる恋ではなく、アイドル渡邉美穂の人間性、プロフェッショナルな姿勢、仲間を想う気持ちに尊敬の意を抱くと共に、素晴らしいアイドルだという自信から生まれていた。
それと同時に、渡邉美穂の本質を見抜くことはできないため、22歳女性渡邉美穂のことを好きになることなんてできなかった。
そんな日向坂46アイドル渡邉美穂が22歳女性芸能人渡邉美穂になると言う。
この先やりたいことを見つけたと言う。
女優なのかモデルなのかYouTuberなのか歌手なのか。
それはまだ分からない。(流石に女優だとは思うが)
僕は彼女がアイドルを辞めてでも目指したい新しい夢を応援したい。
アイドルに推しがいる人なら誰しもそう言うし、その姿勢こそが推し活に絶対不可欠なものである。
しかし、それは僕が恋していた日向坂46アイドル渡邉美穂との別れを意味する。
そんな葛藤に悩まされていると、アプリを通じて渡邉美穂さんからのメッセージが届く。
メンバーのことを想って応援してくれる誰かのためになりたいと思い続けたアイドル人生から、ちょっとだけワガママに自分のために生きていくという言葉が綴られていた。
彼女の人間性の根底にある熱と魂を感じた。
17歳で加入したときの彼女のメンタルの弱さから考えると信じられないくらい強くなった。
正義感が誰よりも強くて誰かのためになりたかった真面目な彼女が、自分のためにワガママに生きる道を選ぶのは強さだと想う。
ここで日向坂46アイドル渡邉美穂が選ぶ道に向かって笑顔で背中を押せないのは、彼女の強さに負けてしまっている。
僕の弱さを感じてしまう。
『最後は笑顔で、さよならしよう!その方が良い!』
突然、ランジャタイのネタ(『弓矢』より)の台詞が頭の中に流れた。
こんな強さを僕も身に付けたい。
彼女に追い付きたい。
絶対に追い付いてみせる。
あるのかは分からないが卒業コンサートでも最後のミーグリでも何でも良い。
日向坂46アイドル渡邉美穂の最後を必ず笑顔でこの目で見届ける。
今までもらった物を返す唯一の方法なのだと信じて。
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