セットリストから見るナナヲアカリライブ

はじめに

先日ナナヲアカリ氏にとって3年ぶりの全国ツアーとなった「DELICIOUS HUNT TOUR 2022 」の全公演が終了した。

時に、ライブの醍醐味には何があるだろうか。色々あると思うが、そのうちのひとつに「セットリスト」があると筆者は考える。どの曲をどのような順番で披露するか、それによってライブの印象が大きく変わる。

この記事ではツアーのセットリストを

①単体の流れとして
②全会場を踏まえた大きな流れとして
③Youtubeの再生回数と合わせて

考察する。

まずは各会場のセットリストから。公式の発表ではなく有志の情報を取りまとめたものであることはご了承いただきたい。

太字は2022年にリリースされた曲、下線付きはメジャーデビュー後再録されていない曲である

適宜こちらの表に戻りながら記事を読み進めてもらえればと思う。

縦に見るセットリスト

まずは公演日ごとのセットリストの傾向を見る。

いくつかの例外もあるが、構成としては
①1曲目~3曲目
②MC1+4曲目~7曲目
③MC2+8曲目~11曲目
④MC3+12曲目~15曲目
④アンコール2曲
という流れである。なおかつセットリストの流れは、
落ち着いた曲→明るめの曲→落ち着いた曲→明るめの曲→アンコール
とメリハリがついたものになっている。ひたすら盛り上がるライブもよいものだが、感傷にふける瞬間があることでより印象に残るライブとなっていると思う。MCについてもそれぞれモードを切り替えるような内容になっており、
MC1→挨拶+それっぽいように見えて真っ赤なウソの宣言(4曲目への導入)
MC2→毎日過ごしていると大変なことや思うこともあるよね、という想いの吐露(8曲目への導入)
MC3→全国ライブ通してのミニコーナー(クイズ・早口言葉etc.)とエンジェルず(バンドメンバー)紹介(12曲目への導入)
という流れになっている。

総じてしっかりとした起伏があり様々な種類の曲が披露される、とてもバランスの良いセットリストになっていると思う。


横に見るセットリスト

ここからは全公演のセットリストを通した傾向を考える。

全公演で共通している項目としては以下が挙げられる。
①1曲目が「二度目の花火」
②4曲目が「んなわけないけど」
③上記2曲に加えて「陽傘」「恋愛脳」を披露
他にもいくつかの共通点はあるが、分かりやすいのは以上の3点だろう。
②については前節のMC1の仕掛けを成立させるための様式美である。

①③について、3曲とも今回の全国ツアーに合わせてリリースされたシングルの収録曲であるため、全曲披露されるのは自然な流れだろう。また、「二度目の花火」と「陽傘」は曲調がすこし近いこともあってか、演奏タイミングがMC1前とMC2~MC3の間に分けられており印象がひとまとまりにならないように工夫されている。

恋愛脳に関しては明確な節目が存在する。8月と9月(以降)である。
8月はアンコール前の最終盤に披露されていたが、9月に入ってからはアンコール1曲目での披露に代わっている。この曲では様々なライブパフォーマンスが入っていたが、アンコールにして再入場を合わせることでよりインパクトの強いパフォーマンスが実現できるという判断だろう。ちなみにアンコールで披露された最初の会場は茨城だが、この公演は台風で延期された振替公演のため、当初のセットリストから手が入っていることが想像できる。

他にも9月以降のセットリストにはメジャーデビュー以降の再録がない曲の披露がなされていることも特徴である(8月は0)。この集中度合いを見ると意図的に狙ったのではないかと筆者は考える。


一方でイレギュラーな項目も散見される。特筆すべきは
①茨城・大阪のみダブルアンコールを実施
②東京のみMC2~MC3の間で5曲披露
の2点だろう。
①について、茨城・大阪は台風の影響で公演が延期になり、別日程の振り替えが行われた回である。延期により公演を待ちわびたファンに向けてのサプライズサービスであると考えられる。
②についてはMC中にナナヲ氏本人が語っていたが、ツアーファイナルということで特別な曲を披露したいという想いがあり、通常の構成に1曲追加される運びになった。考えさせられる歌詞であるため、ぜひ一読してほしい。


余談

セットリストを横で見た時に、明確に違和感を覚える公演がある。最初の北海道である。実際に参加していないため真偽不明だが、気になる点は2つ。
①MC1からMC2の間が3曲(他は4曲)
②MC1前に「逆走少女」、MC1からMC2の間で「ハノ」

②について、ハノは他公演ではすべて3曲目、逆走少女は曲調的にMC1~MC2かMC3~アンコールの間で演奏されうると考える。この2曲の場所が逆になるとより自然なセットリストになり、なおかつ全公演で3曲目がハノという統一感も生まれる。

また、①については1曲情報が足りていないと考えるのが自然だろう。その場合に気になるのは「どの曲が披露されたのか」であるが、こちらは横にセットリストを見ると「完全放棄宣言」の可能性が高いと考えられる。この仮定であれば全公演で完全放棄宣言が披露されたことになるため、3曲目のハノ同様に統一感ができるため、この結論に至った。横の並び順を見るに、完全放棄宣言→ラブみ→MC2、という順序だと思われる。


再生回数と併せて見るセットリスト

筆者は直近でYoutube再生回数の多い動画を紹介する記事を執筆している。そこで紹介した曲と今回のセットリストを比較して考えてみる。


上記3記事で紹介した曲を色付けした表は以下の通り。

各曲の披露回数はこちら

チューリングラブ 2
ダダダダ天使 5
インスタントヘヴン 0
完全放棄宣言 10
ディスコミュ星人 0
恋愛脳 11
逆走少女 1
Higher’s High 11
ワンルームシュガーライフ 2
メルヘル小惑星 11
ハッピーになりたい 7
んなわけないけど 11
雷火 5
お釈迦になる 2
アイがあるようでないようである 0
マンネリライフ 0

ここから2つのことが読み取れる。

①再生回数が多い曲は明るめの曲が多い
②再生回数が多い曲の中でも披露頻度に大きな差がある

①については明確だろう。色付きの部分がMC1~MC2の間とMC3以降に集中している。メルヘル小惑星とワンルームシュガーライフはMC2~MC3の間でも披露されているが両曲とも別の会場では明るめの曲ゾーンに組み込まれており、上記の特徴に当てはまる。

②について、2回以下の曲(8曲)と10回以上の曲(5曲)の二極化が表から見受けられる。ツアーの主役である恋愛脳やメンバー紹介のリズムから自然につながるメルヘル小惑星はともかく、Higher's Highが全会場で披露されているのは少し意外だった。やはり純粋に前向きな曲という唯一無二の特徴が大きかったか。
対照的に1000万回以上の再生数を誇る曲のうち3曲が2回以下(うち2曲は0)というのも大きな特徴だろう。誤解を恐れずに言えば、超人気曲に頼らずとも盛り上がれるセットリストが難なく作れるほど曲が増えたということだろう。



おわりに

ここまでツアーのセットリストを多角的に眺めてみた。横に並べてみるとツアー全体を通した一体感があることが分かり、とても興味深かった。単発のライブでは分からない、ツアーならではの楽しみ方だと思う。また、再生数とライブセットリストの比較はいつかやってみたいと考えていたのでツアーというまとまったデータを使って考察できたのはとても有意義だった。

セットリストに対して縦の流れだけでなく横の流れやほかのデータとの比較によって発見が得られることが提示できたと思う。この記事によってライブの新たな楽しみ方を提示できたとしたら僥倖である。他のアーティストのセットリストに対して分析すると全く違う結果が得られる気がするのでぜひ試してみてほしい、というところで締めとさせていただきます。


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