夜も眠れない
チクタク、チクタク。
時計の針の動きを目で追っていると、時計が進む音が聞こえてくる。
本日3回目のビートルが目の前を通り過ぎる。
今、頭の中にあるのは、サンティアゴ・デ・コンポステラ。スペインはガリシア地方にある、キリスト教徒聖地巡礼の終着点として知られる土地の名前だ。
名前の由来には諸説ある。
12使徒の1人である聖ヤコブの墓を指しているだとか、星の野原を意味するだとか。しかし、未だにどれが正しいのかは明らかにはなっていない。
今はそのことについてあまり話すつもりはない。それよりも、この音の響きが引っかかって、頭の中で何度も反芻しているのだ。ああ、何度でも言いたい、サンティアゴ・デ・コンポステラ。
何でも無かった物に、次第に意味がついてくる。人々が「道」の終わりにこの地を選んだのも、もしかするとこの音の響きのせいなのか。そんなことはないか。
しかし、僕たちのかたどる世界なんていうのは案外こんなものなのだ。ただ、繰り返される時間、記号、そしてその差異、その中に何か意味を見出してしまう。
例えば、あの伝説的なコメディ映画(僕はそう理解している)の「13日の金曜日」で有名なジェイソン。ジェイソンのイメージと言えば、ホッケーマスクにチェーンソー。だが、知っているだろうか。ジェイソンは一度もチェーンソーで人を殺めたことがない。
事実などは関係ない。僕たちにとってはジェイソンをかたどる恐怖のイメージの方が、それ自体よりもずっと大事なのだ。時にはそれが幻想であってもお構いなし、むしろその事実にすら気づいていないかもしれない。
また違う日、いつかの僕の頭の中にはアルジェリア系のフランス人もいた。いや、おそらく当時、ジダンのプレーは世界中のみんなの頭の中にあった。
相手ディフェンダーを足の裏を使ってくるりと回って抜き去ってしまう彼のターンは、日本でも彼の出身地にちなんで、「マルセイユ・ルーレット」と呼ばれた。
当時小学生だった僕も、あの華麗なターンに憧れて真似をしたものだ。初めての試合では、相手ディフェンダーに辿り着くまでに3回もかましていた。ぐるぐると、美しく、世界を回すマルセイユ・ルーレット。
それは、ジダンのイメージとともに特別な意味を持っていた。ジダンがあのターンを見せてくれれば、みんな一様に口をそろえるんだ。
「出た!これだ!」
心が揺れ動く時、日々の中で特別な瞬間だ。
大抵はその瞬間すら通り過ぎてしまって、気にもとめないのだが、繰り返し何度も頭の中で再生されるうちに、世界がかたどられていく。
気づいた頃には、忘れられない。いつでも、あの少年の目をしている。忘れてはいけない。
わくわくして夜も眠れないんだ。
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