LA BOHÈME
緊張が解けて、喜びも痛みもすべて混じって、身をほとんど仲間の肩に預けつつもこの瞬間を待っていたという足どり。それぞれの帰る道、友のもとに向かう足どり。
ストーリーの終わりが近づいている。
日も落ちる頃になり、人生の無常さだとか愛だとかを歌ったテーマが流れる。
言いたいことはたくさんある。
それとも時には口を閉じて、ただ目の前に起こるすべてをそのままにしておこうと思う。
それでもこの口は止まらず、出る言葉は二酸化炭素程にもならない。
嘘も愛想も吐いてきた。あるいは芸術のためには仕方がないとでも言うか。それすらも告白してしまうことの卑怯さに、耐えきれないのは最も自分なのである。
だからと言ってしまってはそれもまた傲慢ではあるが、サッカーは好きだ。
自分がどんなに考えや図らいを持ったところでゲームはお構いなしに進んでしまって、戸惑っている間もなく、あるいは戸惑いを見せてはいけない。
どんなにいいことをしようと思っても、それよりも早く体を動かさなければいけないし、少なくともボールを奪われるよりはましだ。
判断が遅すぎたか、自分のミスのせいで失点してしまった時に、目に涙を浮かべて外にいるママを見たって助けてはくれない。
兎にも角にも時間はないんだ、たったの90分間だぞ。
たとえビハインドでもピッチの真ん中にボールを持ってきて、負ける気もゲームを投げ出す気も更々ない。
こんなにもスリリングでスペクタクル。それでいて芸術的。
アディショナルタイム、最後の1分まで勝ち負けはわからない。一瞬のスキからのチャンス。ボールが浮かんでいる。ゴールネットが揺れている。逆転の世界。奇跡のまち。
どっちに転がるかは分からない。勝負の分け目は、たまたま今目の前に転がってきた、それをものにした、それだけのこと。
小さなことのつながりの先にしかゴールはなくて、でもその1つを掴めなければ何も残らない。いつかは1番、本気で信じ続ける。
今日はありがとう、うまくいった。気づけば終わり、テーマが流れる。
ラ・ボエーム
もう何も言うことはない。
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