
映画『27CLUB』公開開始しました
ワタシが脚本を務めた映画『27CLUB』が、ついにYouTube上に姿を現しました。
本作は“月間映画”というプロジェクトでございまして、ちょうど雑誌の月間連載のように、
毎月1話ずつエピソードが更新されてゆくというシロモノなので、
ぜひ皆様におかれましてはリアルタイムで追っかけていただければと存じます。毎月27日更新します。
(ちなみにこの、毎月映画を連載する。というアイディアは、
2000年代初頭に発刊されていたショートフィルム連載マガジン『Grasshoppa!』からインスパイアされております。加瀬亮や庵野秀明、STUDIO4℃といった豪華メンツが顔を揃えた、なかなかに凄い企画物です)
まぁそうですね、『観てくれや』と『出来たら投げ銭してくれや』以外に言いたいこともないのですが、少々付け加えさせていただきますと、まずワタシは暗い映画がキライです。正確にいうと、なんの救いもない映画がキライです。
なぜならそれはあまりにも非現実的すぎるからです。われわれが生きる現実には、絶対、必ず、どこかに救いがある。どんな苛烈な人生にも、愛や笑いといった休息のひとときがインクルードされているとワタシは信じています。ただ無闇矢鱈にシリアスで深刻で重たいだけの映画は、ワタシにとってあまりに嘘臭すぎて観る気が起きません。
高温多湿なお国柄ゆえか、我が国では、悲しみや孤独といった感情が、嬉しいとか楽しいという感情より『偉い』と思っている人が多いと感じます。『シリアスでなければリアルでない』という価値観がとても強い。そうした主張を否定はしませんが、ワタシはユーモアの力に賭けます。
ユーモアとは、あらゆるメッセージに砂糖をまぶし、より食べやすく、より伝わりやすくするための人類の叡智です。『面白いというのは、とても大事なことだ』とジェリー・ガルシアは言いました。
では、逆にどんな映画が好きなのかというと、『映画みたいな映画』が好きです。『うわっ、オレ、いま映画観てる~~!!』って思わされるような映画が好きなんです。
たとえば『サボテン・ブラザーズ』。西部劇のスター三人組が、ロケで出向いたメキシコのある村で、ホンモノの英雄だと勘違いされて、村を襲う盗賊たちと戦うハメになる。三人組のうちの二人は『オレらは単なる俳優なんだから、ガチの盗賊と戦って勝てるワケないじゃん』とかいって逃げようとするんですが、残りの一人が足元に線を引いてこう言う、『男かネズミか、選べ!』、そして最終的には渋っていた二人もそのラインを超えて戦いに挑むんです。
たとえば『マーズ・アタック!』。家族の中でも疎まれている落ちこぼれの青年リッチーと、ボケちゃって家族の顔も解らなくなったおばあちゃんが、火星人の襲来によって危機に瀕した世界を救うというお話です。リッチーとおばあちゃんが車に乗っているシーンで、リッチーは言います。
『生きてるうちに火星人に会うなんてマジ驚きだよね。でもおばあちゃんは歴史の証人だから、汽車の発明だって知ってるでしょ?』
『そこまで歳取ってないわよ。ああ、スリムに会いたいわ。会いたいのはスリムと、マフィーと、リッチーね』
『……おばあちゃん、僕がリッチーだよ』
『ええ、トーマス。いつだってリッチーがいちばん大好きよ』。
たとえば『マグノリア』。末期ガンの老人を世話している在宅看護師が、最期に老人と生き別れの息子を会わせてあげようと電話をかけます。
『息子の行方を探す父親。なんだか映画みたいな話だけど、でも現実に起こり得ることだから映画にも描かれるんだろう。いま、実際にここで起こってる。お願いだ、力を貸してくれ。だってもしこれが映画だったら、必ずここでそうするだろう?』。
たとえば『アゲイン』。年老いた殺し屋が、かつてのライヴァルと再会し、深夜の大通りで決闘する。殺し屋はライヴァルにピストルを放り投げ、ゆっくりと歩きながらこう言います。
『さぁ、勝負しようぜ。そうとも、ケリはまだついちゃいねえんだ』。
たとえば『ビフォア・サンライズ』、たとえば『いつかギラギラする日』、たとえば『カッコーの巣の上で』、『カイロの紫のバラ』、『赤毛』、『マインド・ゲーム』、『魚からダイオキシン!』、『ワンス・アポン・タイム・イン・ハリウッド』、『ラスト・ムービー』、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』、『映画ドラえもん おばあちゃんの思い出』、『マイク・ザ・ウィザード』、たとえば、たとえば、たとえば……たとえ話は尽きません。
ウソで描いた真実。リアルよりリアリティ。偽物がホンモノになる瞬間。血液が沸騰し、肌が粟立ち、胸がざわめくようなミラクルがたったワンシーンでもあれば、ワタシにとってそれは不朽の名作映画なのです。
果たしてこの映画が、そうしたミラクルをモノにできるかどうか、ぜひ最後まで見届けてくだされば幸いです。映画みたいな映画を、ワタシは作りたいと思う。