山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第118回 あなたが多分知らないオブスキュア・ソウル特集part2
はいどうも。
指示待ち世代のカリスマ・山塚りきまるです。
今回は、以前ご好評頂いた“あなたが多分知らないオブスキュア・ソウル特集”のパート2をやっていきたいと思います。
『は? オブスキュアって何?』っていう方にカンタンに説明しますと、オブスキュアというのは『はっきりしない/あいまいとした/人目につかない/世に知られていない』という意味を持つ英単語でして、ここ五年ぐらいの間に音楽業界で盛んに用いられるようになった言葉です。
超簡単に言うと、一般的にかなり無名だし情報もほとんど存在しないけど超イイよね。って音楽のことです。
それのソウル・ミュージック版ってことですね。
『は? まずパート1の存在自体知らねーし! ていうかオマエが誰かも知らねーし! よくよく考えたらそもそもオレが誰なのかもわかんねーし! 私は一体誰?』っていうアイデンティティ・クライシスに陥った方はですな、取り急ぎ前回の記事をお読みになったのちホスピタルへGo Toキャンペーンしてください↓↓。
まぁとにかくレアなソウル・ミュージックをご紹介していこうと思いますので、みんな、ついてきてね!
一曲めはシュガーで『アイ・ウォント・ユー・ガール』。
すっっさまじいレア感ですね。
そしてすっっっさまじく良い曲。
スウィート・ソウル・バラードと呼ばれる音楽は色々聴き漁ってきましたけども、この曲は余裕でトップ・ランカーに入りますね。
たぶんバンドじゃなくてソウル・コーラス・グループだと思うんですけど、演奏が非常に素晴らしいです。
美しすぎるコードワークを紡ぐピアノ、フニャフニャ鳴き続けるギター、ファンク・マスターすぎるベイス、アル・グリーンよろしくシンバルを叩かずハイハットで巧みにグルーヴを操るドラム、もう100点満点中で2京点ですよ。出来過ぎですよ。出来杉くんですよ(ここ、笑うトコロですョ!)。
ソフトに乾いた録音もとても気持ち良い。イントロのハイハットとリムショットの時点で信用できます。こういう音の粒が分かる(?)感じのハイハット最高だよね。妖しさ全開のミキシングも素晴らしい。
これ1973年のシングルなんですけど、ヤッバイですよねー。
なんだろう、全然この曲を演奏してる光景が想像できない(笑)。
その瞬間は、確かにかつてこの世に存在していたハズなのに(笑)。
うまく言語化できないんですけど、こういう異次元感の溢れるソウル・ミュージックってたまにあって、『この当時どういうテンションでこれ演奏してたの?』とか『この人たちどういう音楽聴いてたんだろう?』って疑問が浮かんでくるようなヤツってたまにあるんですよ。
これとかね。
以前にもこちらでご紹介させて頂いたロバート・ヴァンダービルト&ザ・ファンデーション・オブ・ソウルズですけれども、これとか明らかにおかしいんですよ。
だってこれリリース1978年ですよ。
1978年ってあーた、ブラック・ミュージックが一番ケバかった時代ですからね。ディスコが隆盛を極め、ヒップホップが産声を上げた時代ですよ。そんな時代にこんなグルーヴを打ち出していたバンドがいたという奇跡。
しかもこれゴスペルなんですよ。こんな自閉的で内省的なゴスペルないですよ。
だってもし自分がバンドやっててさ、対バンにこれ出てきたらヤバくないですか?
『どうすんだよ!!!!!!!』って感じじゃないですか?
どうするよ?
リハ見てヤッベ〜〜〜〜って硬直してたら、袖にたくさんヒモついた銀色のスーツ着た黒人が降りてきて、ニッと不敵な笑みを浮かべながら肩をポンって叩いて、
『お晩どす〜、今日はよろしゅう頼んますえ〜』
って言ってきたらどうするよ?
『あっ京都の人だったのか!』って思うよね!
それはどうしても思っちゃうよね!!
うん、やっぱさ、人を見た目で判断しちゃいけないですよ!!!
生まれたところや皮膚や目の色で一体この僕の何が分かるというのだろう、とあの偉大なるブルーハーツも歌っていたじゃないか……。
まぁまぁまぁ、話が盛大にスリップしましたけども、とにかくこの曲は素晴らしいですよ。
ちなみにシュガーはこれ一枚きりしかシングルを出していません(B面の“モスト・インポータント・シングス”って曲も軽快なモダン・ソウルでかなり素晴らしいです)。
よって映像はおろか、写真さえも残っておりません。メンバーが誰で、何名なのかも解りません。
まさしくオブスキュアな逸品であります。
なお、このシングルは、アーカンソー州のソウル専門のインディー・レーベル、“トゥルー・ソウル”からリリースされております。60年代末から80年代半ばにかけて運営されていたレーベルですが、非常に素晴らしい作品群をリリースされていますので、気になった方はこちらも併せてチェックしてみて下さい。
二曲めは、スウィート・アンド・イノセントで『エクスプレス・ユア・ラヴ』。
70年代にたった二枚だけシングルを残した女の子二人組ユニット、スウィート・アンド・イノセントでございます。
まぁまぁまぁ、70年代のガールズ・ソウルで、“スウィート・アンド・イノセント”って名乗ってる時点でもう最高ですよね。
既に素晴らしすぎる。
で、これは1973年頃のシングルだと思うんですけど、まぁ一聴して異常なサウンドですよね。
なんせベイスとドラムの音が極端に小さい。ディレイの効いたペナペナしたギターと、2つのコードをロング・トーンで繰り返すオルガンしか聴こえません。そしてその異様な枯山水サウンドの中を遊泳する、ほのかに哀愁を帯びた甘い歌声。もう100点満点中で2京点ですよ。出来過ぎですよ。出来杉くんですよ(ここ、笑うトコロですョ!)。
超絶スウィートでとびきりストレンジな、ガールズ・ソウルの突然変異。
三曲めは、タイロン・アシュレイズ・ファンキー・ミュージック・マシーンで『ダズ・フランキー・エヴァー・コール・マイ・ネーム』。
あのー、P-FUNKっているじゃないっすかぁ。
パーラメント・ファンカデリックとも言いますけどねぇ。
派手派手な格好して、超絶スペーシーなファンクやってる大所帯のグループね。
あれってもともとジョージ・クリントンちがやってた床屋の常連客で構成されたグループなんですけども、一番初めってのはファンク・バンドじゃなくてドゥー・ワップだったんですよね。
そのドゥー・ワップ時代のパーラメントのメンバーらしいですこのヒト。
で、その頃は本名のサミー・キャンベルって名前でやってたんですけど、パーラメントを離脱してバンド活動を始めるって際になぜかタイロン・アシュレイに改名したみたいです。
どういう経緯でそうなるのか気になりまくりますが、そんな彼が68年から72年の間に録音した楽曲(当時未発表。2007年にリリースされた編集盤にてコンパイル)であります。
まぁめちゃくちゃ変ですよね。
こんなソウル・インスト聴いたことないです。全体的に漂う酩酊感が凄すぎる。“全員よくわからないままやっている”感がハンパない。
どことなくフィッシュマンズの『ロング・シーズン』を想起させます(オレだけか?)。
超ドラッギー。
超ミラクル。
超ドラッギーで超ミラクルなソウル・セッション一発録りってえと、オハイオ・プレイヤーズの『アローン』っちゅうね、ギターと鍵盤奏者が“もう立てねぇ”ってぐらいキメまくってから二人でスタジオ入って一発でレコーディングしたっていう曲があるんですけどね、これに比肩する名曲だと思います(まぁ、こっちは歌モノだけどさ)。
当noteで良く申し上げておりますが、サイケデリックとは『極彩色がブンニョリドッカーン』みたいなことではないです。それはサイケデリックの非常に表面的なものに過ぎません。サイケデリックとは元来、『己を見つめる』という意味です。
まあまあ、異形かつ大変な名曲ですよ。
サイケデリックでオルタナティヴな、ソウル・インストの極北。
『フランキーはまだ俺の名前を呼んでるのか?』というタイトルも意味深でめちゃくちゃカッコええです。
四曲めは、プロジェクト・ソウルで『スウィート・シングス・オブ・ライフ』。
プロジェクト・ソウル。
そのバンド名を聞いてもピンと来ないという方も、コン・ファンク・シャンの前身バンド、といえば膝を打たれるのではないでしょうか。
コン・ファンク・シャンは70年代から80年代のディスコ・シーンを数々の名曲で彩った大所帯ファンク・バンドで、ツイン・リード・ヴォーカルであることや分厚いストリングス&ホーンセクションなどサウンド的にも類似していることからアース・ウィンド&ファイアーと良く比較されるグループなんですけども、彼らがまだ“プロジェクト・ソウル”と名乗っていた時期にリリースされた唯一のシングルです。
リリース年はハッキリしませんが、69年に“プロジェクト・ソウル”が結成され、74年に“コン・ファンク・シャン”に改名してるんで、その間の時期ですね。たぶん73年頃じゃないかと思うんですけど。
のちのパーティー感溢れるディスコ・ファンクからは想像も出来ないほどに削ぎ落とされたソウル・ミュージック。粗い音質やヘタウマな演奏も実に味わい深いです。
ハイ、というワケでいかがでしたでしょうか、山塚りきまるの『なんかメロウなやつ聴きたい』第118回 あなたが多分知らないオブスキュア・ソウル特集part2、そろそろお別れのお時間となりました。
次回もよろしくお願いします。
お相手は山塚りきまるでした。