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トリチェリが真空を作り出した実験

「自然は真空を嫌う」古代ギリシャの哲学者”アリストテレス”の言葉です。

まったく何もない空間ができそうになると必ず何かの物質がそこを埋めるという考え方です。

ポンプで水を汲むことができるのも、空気を抜いて真空を作ろうとするとそこを埋めるように水が昇ってくるからと考えることができます。

この考えを覆したのがトリチェリの実験です。

トリチェリの実験とは?

トリチェリが行った実験は片方を封じたガラス管の中を水銀で満たし、それをひっくり返して開放部を下にした状態で水銀浴につけるというものです。

ガラス管が短いとガラス管内の水銀は何も変化がありません。しかし、長さが76cmを超えると上部に真空ができることをトリチェリが示したのです。

自然は真空を嫌っていたわけではなく、条件さえ整えば真空を作り出すことができることを示してアリストテレスの主張を覆しました。

自然が真空を嫌うように見えた理由

確かに自然は真空を嫌うようにも見えます。水銀柱でも76cmより短いと真空はできません。

水銀の重さで下に下がるように思えますが、下がってこないのは真空ができることを嫌っていると考えても仕方ないかもしれません。

これは真空を嫌っているのではなく、大気圧に押されているために水銀が下がらないということです。ですから大気圧で押す力より水銀の重さで下がろうとする力の方が大きくなると真空ができるのです。

私たちは常に大気圧下で暮らしています。その大気圧によっていかにも真空を嫌っているかのように思える現象が起きているだけなのです。

ポンプはどうなのか?

最初にポンプで水をくみ上げることができるのは、空気を抜いて真空を作ろうとするとそれを埋めるように水が上がってくると考えられていたことを話しました。

しかし、これも大気圧によって水が押し上げられるだけのことだったのです。

水は水銀よりもはるかに軽いです(13分の1くらい)。

ですから、76cm程度では真空はできず水は大気圧で登ってきます。

ただし76cmの13倍、10mになると真空ができてしまいます。10mもの高さが必要なので真空ができることが知られていなかったのです。

ですが、実は10mを超えるとポンプで水をくみ上げることができないことは、トリチェリの実験の前から知られていました。

空気を抜こうにも真空になっているのでそれ以上は無理だったということです。ただ、当時の人はまさか真空になっているとは思わなかったのです。

トリチェリの実験と気圧計

トリチェリの実験は大気圧によって押し上げられる以上に高い水銀柱を作ることで成り立っています。

水銀柱の高さが大気圧と釣り合うのが約76cm(760mm)なのです。

私たちは気圧が一定ではないことを知っています。低気圧、高気圧、天気予報で当たり前のように出てきます。

この気圧を測定するのにトリチェリの実験がそのままつかえます。

水銀柱の高さが気圧を表すのです。

ですから気圧の単位として、トリチェリの実験での水銀柱の高さをmmHg(Hgは水銀の元素記号)と表していたこともあります。

現在では気圧の単位としては使われていません(禁止されている)が、血圧の単位としてその名残りがあります。


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