あのひと
昨日の夢の話だ。
わたしたち家族は結婚式に招待されている。なぜかムスメは小学校低学年くらいの年齢のようで、まだ小さい。初めての結婚式に浮かれているが、着ていく服が見つからない。かわいいスーツを買っていたのだが、上着が見つからないし、靴下もない。
わたしは探しに探すが、少しも見つからず、イライラがマックスだ。そうこうするうちに、披露宴が始まってしまう。わたしは、式場と家を行ったり来たりしているのだが、ムスメ、服、自分のバッグが見つからずに慌てている。
壁面にプロジェクターで映像が映し出され、それが航空写真で、新郎新婦の思い出の場所のようだが、どう見てもハウステンボスの街並みだ。ん?それか、本当のオランダなのか?
わたしは料理に手をつけることもできず、また自宅へ戻る。散らかった家の中からムスメの服を探すが、やはり見つからない。「ちゃんとしまっときなさいって言ったでしょ」と文句を言いながら、必死に探す。
式場の入り口に戻ると、オノさんがいた。彼女はオレンジ色のトレーナーを着て、ゆるゆるのデニムを履いて、入り口に座り込んでいる。ベリーショートで日に焼けたペコちゃんみたいな顔のオノさんは、わたしが若い頃にお世話になったデザイナーだ。ただ、その佇まいが家のない人のように見えた。いけないものを見たような気持ちになって、知らん顔をしようかと思ったが、「あら久しぶりね」と声をかけられた。
「お元気でしたか?」と聞いたら「うん、まあね」とオノさんは笑ったような顔で言う。なぜここに座っているのかはわからないが、わたしが中に入りたがっているのを見てとって、「もうメインディッシュが出たみたいよ」と言った。わたしは白い壁伝いに窓の下まで行き、そこからよじ登ろうとするのだが、出窓から茶色の廃油がダラダラと落ちてきて、洋服が汚れる。
それをタオルで拭って、わたしは会場に入る。するともう宴席は片付けが始まっていて、招待客は誰もいなかった。「えー。わたしは一口も食べてないです。食べたかったです」と言うと、シェフが困ったような顔でこちらを見た。お、もしかして、なにか食べさせてくれる?と期待するがまたすぐに視線を手元に戻して、片付けを始めた。ダメか。まあ、仕方ないよね。
ムスメは誰かに連れて行ってもらったのか、友達の家族と一緒に遊んでいる。中途半端なおめかしで、ジャケットも着ず、靴下も片方履いてない。
式場を出ると、オノさんはまだそこにいて、「どうだった?」と聞いてきた。「間に合いませんでした」と答えると、「そうなの」と、今度は本当に愉快そうに笑った。
目が覚めてから思い出したのだが、オノさんは何年も前に亡くなったと聞いている。