ping call
英語でワン切りのことを『ping call』というらしい。
昨日、20時。電話が鳴って、手に取ってみると、着信表示に「ナウル」と出ていた。ナウル?どこだ。wikipediaで調べたら、ナウル共和国は、オセアニアの小さい島国だった。あるサイトには「世界で三番目に小さい国で、国民のほとんどがニートで肥満」と書いてあった。そんな国があったのか…。
わたしにはよく間違い電話がかかってくる。ワン切りも多い。国内外の迷惑メールも、多いときは一日に100通くらい届く。しかし海外からのワン切りは初めてだ。
表示された番号をネットで調べてみた。spamcall net.usaでヒットした。
サイトを見てみると、「信用できない番号」として投稿した人の国籍は、チェコやトルコ、キプロスなどの国名があった。それが昨夜。今朝、同じサイトを見てみると、日本からの投稿者が増えている。福岡、名古屋、京都、横浜、東京。じわじわと北上している。
そうこうしていたら、午前9時。今度はバヌアツからの電話だ。
世界情勢に詳しい人なら、ナウルやバヌアツが、ワン切り詐欺の拠点となっている理由を知っているかもしれないが、わたしにはわからない。ただ、おとぎ話かSF小咄のように、島国から島国へ、謎の電話がかかる、という認識でしかない。そこに、物語を成立させようとするわたしのクセが出て、ぼんやり妄想に浸ろうとしていた。しかし、勉強不足で現地の情報があまりに乏しく、ちっとも情景が浮かばない。
今日の夕方、またしてもナウルから着信があった。前回とは違う番号だ。だんだん薄気味悪くなってきた。これをうっかり取ったり、掛け直してはダメだとネットにあった。アダルトの有料電話サービスに繋がり、課金されてクレジット決済で何十万もの通話料を取られるらしい。こういうことを考える人が、世界中にいると思うと、げんなりする。こんなことを思いつくくらいなら、もっと前向きな儲け方を編み出せないものか。
夕食の用意をしていたら、ソファの方から、「あっ」とオットの声がした。「パプアニューギニアから電話がかかってきた。」その声はとても冷静で、感情の動きが無いように聞こえた。「それは、課金サイトに繋がるらしいから、取っちゃダメだってよ」と言ったら「そもそもパプアニューギニアに知り合いはおらん。出るわけがない」と答えた。さすが、わが家の危機管理大臣だ。危ない橋はぜったいに渡らないし、石橋も叩きまくってからじわじわ渡る慎重派だ。その点、わたしとムスメは「あれ?なになに?どうしたの?」と、すぐに覗き込んだり、手を出したりしてしまう。いつか大失敗をしそうでこわい。
さっき、またググってみたら、まとめサイトに『ナウル共和国から電話がかかってきたら』が投稿されていた。どうやら日本中で、ナウルからの着信が急増しているらしい。じきに、バヌアツやパプアニューギニアも、まとめサイトに載るんだろうな。