おひとりさま。
飲食店に一人で入ることができない。
理由は二つあって、その一つは『自意識過剰』ゆえである。自分が食べているところを人に見られていると思うと、緊張してしまう。年に一度の健康診断を受けると、ランチが提供される。そこでは全く知らない人たちが個々に食事をしているのだが、どうにもこうにも緊張してしまい、食べた気がしない。「誰もあんたの食べてるとこなんて、興味ないし」と友だちは笑うのだが、もともと人見知りなので、初対面の人にはたとえそれが食堂の店員でも緊張するし、知らない人がいっぱいいる店内は気が休まらない。
もう一つの理由は『間が悪い』からである。お店に入ったとたん、すでに店内にいるお客さんが「すみませーん」と声をかけ、お店の人がいなくなってしまう。これがかなりの確率で起こる。どこに座っていいかわからず、おどおどしてしまう。「あの…」と声をかけると「少々お待ちください」とあしらわれて、しばらく手持ち無沙汰に佇んでいる。やっと座って、メニューを見て、どれにしようかなと思っていると「お決まりですか?」と聞かれる。「あ、ちょっとまだ…」と言うと、そのまま放置される。こちらから「すみません」と声をかけても、全然振り向いてもらえない。声が小さいんだと思って「すみませーん」と言ってみたら、聞こえてますよと言わんばかりに「はーい。少々お待ちくださーい」と大きな声で返される。ここでもうメンタルはぺしゃんこだ。いかんせんうつむきがちである。水も出てこなくて、「あの…お水を…」と言いかけると、「あちらでーす」と言われて初めて、セルフコーナーがあることを知る。
「お決まりですか?」と聞いてくれる人もいるが、わたしの生命力が弱いためか、大抵は「で?」みたいな感じでやってくる。ここまでで、すでに心臓がバクバク鳴っている。やっとこさメニューを伝えると「ご注文をくり返します。」と言われるが、緊張と凹みのあまり、そんなのは上の空で聞いちゃいない。「は、はい」と答えるだけで、自分では確認していない。そして、待てど暮らせど、料理は出てこない。わたしよりも後から来たお客さんの方が先に食べていることもザラにある。まじか、と内心思うのだが、まあ厨房の都合で、そうなることもあるよね、と自分に言い聞かせる。
「お待たせしました〜」と出された料理が3割の確率で間違っている。プロ野球の選手だったらかなりの年俸で契約できそうだ。一度、ファミレスなら間仕切りがあるからいいかと思って入って、チーズドリアを頼んだら、なんの手違いか、チーズが全く載っていなかったこともあった。(フツウ気付くよね?厨房の人も、運ぶ人も。)
そんなこんなで、「うどん屋」と「ファストフード店」がかろうじて一人で入店できる飲食店だ。注文が複雑すぎず、何が出てくるのかもちゃんとわかっている。さっと食べて、さっさと店を出る。食券を買って、黙ってふだを出せば良い、立ち食いうどんも好きだ。オススメは博多駅3〜4番線の博多ホームうどん。(かしわうどん推奨)
ひとりで海外に行ったことが一度だけある。その時も、ほとんどをマクドナルドかデリのお持ち帰りで済ませている。当時、トルティーヤで巻いた「ラップ(wrap)」という商品があった。現地のテレビCMを見て、珍しいから食べてみたくなった。お店で注文したら発音が悪かったらしく、首を傾げられ、何度言っても通じない。メニューを指さしたら「ああね」という顔をされた。
だからうどん屋で「ごぼてんうどん」(駅ではかしわうどん)を頼むのが精いっぱいのいくじなしだ。
※写真は 人気チェーン店「牧のうどん」のごぼう天うどん。(一番人気は、「うどんウエスト」らしい。)
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