おまつり
夏まつりに行った。お祭りなんて2年ぶりだ。「夏まつりに行ってくる」とムスメが言った時、「まさか。あるはずないじゃない」と言ってしまった。
ネットを見ると、本当だ。ちゃんと開催されている。町内会のお祭りではなく、「博多みなと夏まつり」という、わりとしっかりしたイベントのようだ。祭りと聞いて、オットががぜん張り切った。「おっ。俺も行こうかな」オットはまつり好きである。フェスとかフェアとか物産展とかなんとかの祭典とか、そういう「ご当地イベント」のお祭り気分が好きらしい。
しかし、ムスメの顔が曇った。「え…お父さんたちも来るの?」そりゃあそうだ。同級生の仲良しグループとはいえ、高校生の親が遊びにまでついてくるとなると、友だちはドン引きするだろう。まあ、気持ちはわかる。
ただ、お祭りの場所はうちからは遠い。17時に現地集合と聞いて、オットは「車で送ってやる」と言った。ムスメはしぶしぶオッケーして、3人で現地へ向かった。
お祭りは賑わっているようだった。お祭り会場はぐるっと四方がフェンスで囲ってあり、出入り口は一箇所しかない。そこでは検温と消毒が行われ、QRコードでの登録を要求された。友だちと待ち合わせているムスメとはそこで分かれて、わたしたちは会場に入った。
たくさんの屋台が出ていたが、ワクワクしなかった。不思議。お祭りに行ったら「どれ食べよう」と迷ったり、賑わう人々を見て楽しそうだなあと思ったりしそうなものだが、心が少しも動かなかった。この2年で、お祭りの楽しみ方を忘れてしまったのか、わたしは。
ステージにポップな曲に乗って飛び出してきたのは『音女三銃士』だ。そしていきなり一曲披露した。3人組の女の子たちが歌って踊っている。前列で一緒に踊りまくる男性がいた。ああ、これが「推し活」か。本物を見ました、ありがとうございます、と心の中で手を合わせた。
彼女たちはYouTuberで、TikTokerで、「親不孝通り公認アイドル」だそうだ。「親不孝通り」というのは、天神の北側にある繁華街で、昔、突き当たりに大きな予備校があった。彼らが繁華街のライブハウスや飲み屋の誘惑に負けてしまうので、「親不孝通り」と命名されたらしい。
元気よく歌う彼女たちのステージが終わったら、お待ちかねのヒーローショーだ。『ドゲンジャーズ』はご当地ヒーローだそうで、それなりにファンがいるようだ。オリジナルグッズも売れていた。知らなかった。こんなヒーロー戦隊が福岡にいたとは。
それにしても暑そうだ。見ているだけなのに、自分も息が苦しくなる。そうだ、これは脱水症状だ。 まずいまずい。水分補給をせねば。わたしとオットは、友だちとのん気に唐揚げをかじっているムスメを残してお祭り会場を離脱した。
つづく
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