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ロボ化

肋骨が痛い。

肋骨が痛いような気がしているが、本当はどうかわからない。肋骨を覆っている筋膜が傷んでいるのかもしれない。けっこう広い範囲で痛む。

昨日、あまりの痛さに外科へ行ってみた。行ってみてわかったこと。それは「痛み」は歩行を大きく阻止するということ。

痛くなってから、わたしはわたしなりに、家で安静にしていた。出かけることはあっても、車や自転車を使い、自分の足をあまり使っていなかった。しかし、昨日は運転するにもハンドルを回そうと腕を動かすと痛みが増すし、小さな振動でも痛むので、バスに乗ることにした。

まず、バス停まで歩く。これが難しい。右足の次に左足を出す、ただそれだけのことが難しいのだ。もちろん、超スローペースではあるが、それはできる。ただし、足が着地するごとに、『じーん、ズキッ』という、二段階の痛みが肋骨に走る。じーん、ズキッ、じーん、ズキッ、と、ゼンマイ仕掛けのロボットのように、体内で音がする。わたしはまるでロボットになったようだ。これでは時速1kmくらいのスピードしか出せない。

自ずと両腕は、バランスを取ろうと、軽く肘を曲げた形で前に出る。腰も着地のショックを和らげようと、軽く曲がる。そして、軽い前傾姿勢。荷物はリュックに詰めて背中に背負っている。

どうみても、この姿は、初代ASIMOである。昨日は着ている服が全身が黒だったので、黒ASIMO。ただ、ASIMOはAIを搭載しており、動きについては軽快で滑らかだ。だから、見た目だけ、ASIMO。ああ、ASIMOの足元にも及ばない。

外科でよく見てみると、高齢者の皆さんも、同じ体勢で同じ歩き方だ。じーん、ズキッ、じーん、ズキッ、そんな音がしそうだ。そして、時々、予期せぬ場所で止まる。じーわじーわじーわ、と空回りするゼンマイの音がする。しばらくして、また意を決したように動き始める。ぎっ、じーん、ズキッ、じーん、ズキッ。ああ、同じだ。

人間はロボ化していくのか。骨や筋肉は脆くなっていくから、ボロ化もしていく。ボロいロボ。回文だ。

こうして座って、椅子の背もたれに体を預けている今も、何秒かおきに「ズキッ」とする。は〜。

さて、ボロいロボは考えもまとまらないまま、今日も茶碗を洗う。


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