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わたしの
職場の机の上に、ペン立てを置いている。ある日、私専用の赤ペンがなくなった。でも、借りたペンをうっかり自分のバッグにしまって、持ち帰ることってあるじゃないですか。だから、持ち去った人は「うっかり」していたんだろうと思う。
しかし、赤ペンがないのは困る。そして、黒のペンもそろそろインクが切れそうだ。だったら買うしかない。仕事で使うのだから、と、わたしは経費でちょっといいペンを買った。これまでの100円くらいのペンじゃなくて、300円くらいの、見た目も他とは違う感じのものだ。なぜなら、みんなが使っているものと同じなら、間違う確率は高くなるからだ。見た目から注意喚起をしようというわけだ。
ちょっとお高いペンは、書き味が抜群によかった。これにしてよかったわー、仕事がはかどる〜。わたしはそのペンを使うたびに、買ってよかったと思う一方で、もう誰も持って行かないで欲しいと心から願った。
念には念を入れて、テプラで所属の名称とわたしの名前を印刷して、ペンに貼っておいた。他とは違うペン、所属の名称とわたしの名前、これなら、ペンを使った人も「あ、返さなくちゃ」と思うだろう。さらにダメ押しで、ペンたてに「使ったら戻してくださいね」と書いたシールも貼った。どうだ。
翌週、職場に出てみると、黒ペンがなくなっていた。おい。あれがないと、仕事にならんのだよ。誰だよ、持って行ったのは。
3週間くらい、モヤモヤしていた。あのペンがないから、わたしは使いにくい油性ボールペンを使っている。油性ボールペンは、線にムラ出たり、書いていくうちに、インクが手についたりして、ストレスが大きい。
あー、あのペン、帰ってこないかなー。経費はそうそう使えないので、次のペンを買うのはまだずっと先のことになる。困ったー。
今日、ある人が、何かを伝えるためにわたしの机の前まで来た。小脇に抱えた書類と一緒に、わたしのペンを握っていた。わたしは「ああああああ」と心の中で叫び、その人の伝達事項は全く頭に入ってこなかった。
そのペン、わたしのです!と叫んでもよかったかもしれない。しかし、そこは生徒たちの手前、グッと堪えた。
あのペンはもう戻ってこないだろう。あるいは数日とか数週間とか経って、「ごめんね、職場の備品だと思って使っていたんだけど、ここにあなたの名前があるから、あなたのだよね?」とか言いながら、戻してくれるかもしれない。
などと、淡い期待を抱きつつ、無理やろな、とあきらめかけている。
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