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インクトーバー2022 3日目 お題は「コウモリ」
わたしが小さかった頃、まだ道路が舗装されていなくて、街灯の明かりがないと石ころにつまづいたりするような時代。すぐにアスファルトが敷かれて、あっという間に全ての道路が舗装されてしまった。
夕方、薄暗くなってくると家々から「ごはんよー!」というお母さんとかお姉さんの声がした。時々、お父さんとかおじいちゃんの声もした。
わたしは呼ばれることはなかった。みんなと遊んでいても、いつも一番最後に家に帰った。わたしの家族の晩ごはんはどこの家よりも遅かったからだ。
一緒に最後まで遊んでいた近所のお兄さんが「あぁっ、コウモリ!」と指さす。わたしは「へー」と返事をした。「怖くないんか」と聞かれて、「なんで?ただの鳥やろ」とわたしが平気な顔をしていると、「吸血コウモリ知らんのか」という。知らなかった。そして鳥でもなかった。
知らんことばかりだな、と思いながら玄関を開けた。夕食の支度をしている母に「コウモリ見たよ」と言ったら「へー」と返事が返ってきた。まあ、そういう家族だ。
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