ばくばく

ソファでうたた寝をしていた。夢を見ていた。

わたしは、どこかの家にいる。大きな家だ。そこにいるのは、女子中学生や、小さな子を抱えた若いママたち。なぜだかみんな床に座っている。

一人、また一人とどこかへ出てゆく。そして、わたしもまた、ここから出なくてはならない。自分の帰る家はないので、わたしは別の場所へ向かう。ここからは公共交通機関はバスしかなさそうだ。薄暗い山道を行く。舗装されていなくて、ゴロゴロと大きめの石が転がっている砂利道だ。

バスから降りて、すっかり日が暮れた闇の中で、出口に灯が煌々とついている建物があった。あそこで一晩過ごさせてもらおう。建物の前では、女子高生が「じゃあまた」「明日ね」などと挨拶をしていた。玄関の外には灯りがついていたが、建物の中は真っ暗になっていた。そこでムスメとその友だちに会った。逆光でポニーテールしか見えないが、あれはわが子である。

声をかけると「あ、おかーさん」と返事をした。「今夜一晩、ここで過ごさせてもらえないだろうか」と言ったら、「あー、もう鍵閉めちゃったよ」と断られた。「あなたはどうするの」と聞いたら、「え?帰るけど?」と言う。家がないのに?それとも、どこかに家があるのだろうか。

次の瞬間、わたしは建物の中にいた。電気もついていない真っ暗な中、大きな掃き出し窓のある廊下に立っていた。部屋のドアからはオットが入ってこようとしていた。そして、窓の外からはガコガコガコ!と大きく網戸を揺らす音がして、「開けろ!開けてくれ!」と男性の声がした。鍵がかかっていないのか、網戸とガラス戸がほとんど同時に30センチほど開いた。風が入ってきて、カーテンが揺れた。開けっぱなしだと虫が入ってくるかもしれないので、わたしは早く窓を閉めたい。ただ、その声の主が誰なのか、悪い人なのか、いい人なのかもわからない。開け放たれた窓に向かって、恐る恐るわたしは聞く「どなたですか」。

返事はなかった。オットに「早く!早く来て、窓を閉めて!」と頼んだが、わたしの方が断然窓に近い。窓を閉めようとするが、力が入らず、どうしても閉められない。「誰かいますか。窓を閉めますよ」ともう一度声をかけるが返事はない。もしかしたら、悪い人だったのかも、と思うと怖くなって急いで窓を閉めようとする。外はすっかり夜になっていて、わたしは自分の居場所がわからない。

そこで目が覚めた。心臓がバクバクだ。恐ろしい、という気持ちになった。
鼓動が落ち着くまでしばらく時間がかかった。寿命も縮まったかもしれない。


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りかよん
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