学校がすべきSDGsの授業について
ここ数年でよく耳にする『SDGs』。
一体なんなのか。
一言で言うと
『子供たち、そのまた子供たちが地球で暮らせるような環境を整える行動』
ということだと私は解釈している。
先日、日本唯一のSDGsビジネス総合スクール Start SDGsの受講を終え、無事に『SDGsビジネスマスター』の認定を取得した。
5ヶ月の間隔週で4時間の受講をこなし、その間の課題や勉強を重ね、SDGsへの理解度を深めた私が行き着いたのが
SDGsとは未来の子供達が安心・安全に地球で生活出来るよう環境を整える行動
ということだ。
SDGsは世界が定めた基準だが、そう難しく考える必要はない。
ただ単に、このままだと地球資源が足りなくなっちゃうよ?
このままでいいの?
という問いに対する答えである。
私はこのSDGsの理解を深めていき、最終的に行き着いたのが
将来大人になる子供たちが主体的に『現状』を問題視し、どうしていくべきかを考えられるように導く。それが私たち大人のすべきことだ。
ということである。
もちろん『今』すぐにすべき行動も沢山ある。
その沢山ある中で私が選択したのが『子供たちが主体的に自分たちの未来を考え行動するよう導く』ということである。
SDGsは2030年の未来に向けて課題を解決するための行動目標である。
貧困を無くそう、飢餓をゼロに、福祉、教育、ジェンダー問題、環境問題、エネルギー問題などと、これまで一部で問題視されていたことを世界的な問題として、全人類で取り組み2030年までに全て解決しようというのがSDGsである。
私たち日本では地球2.8個分の資源を今、消費していると言われている。
それはつまり、孫の代までの資源を私たちが蝕んでしまっているのだ。
今の生活は必要以上の物に溢れている。
まだまだ使えるのに買い替えたり、安いからと大量に購入し大量に廃棄する。
それは本当に必要な行動なのだろうか。
孫の代の資源を使ってまでする事なのだろうか。
家電製品は10年での買い替えが一つの目安となっているが、今家電メーカーも持続可能な家電の開発を求められている。
つまり、ちょっと使ってすぐ捨てる、という時代は終わったのである。
我々個人で出来る行動はとても小さい。
だけど一人一人がこの問題に対して主体的に考え行動する事。
それこそが今個人に求められている事なのである。
新品同様で捨てられる大量のダンボールについて
ビジネススクールの同期の中で『一度しか使われていないダンボール』が大量廃棄されている事が大問題であると言った人がいた。
コロナ禍になりネットショッピングが増え、それにより新品のダンボールがたくさん使われたくさん廃棄されている。
まだまだ使えるものが大量に捨てられているのを目にし、涙が出てきた、と彼女は言う。
ダンボールの95%はリサイクルに回されている。
しかしそのダンボールをリサイクルするために水が大量に使われているとのことである。
あまり世の中で問題視されておらずその水も再利用可能という情報もあるが、彼女はそこを非常に問題視しておりダンボールではなく持続可能な梱包材を使うべき、と言っていた。
ネットショップで何かを買った際に、送られてきた商品が使用済ダンボールに入っていたら、この企業は怪しいのではないか、と思ってしまいがちだ。
しかしながら、新しいものだから良い、という考えは一旦捨ててはどうだろうか。
再生可能なダンボールはまた使用するべきだし、リサイクルするにしても大量のエネルギーが使われることは事実である。
本来リサイクルは最終手段なのだ。
リユースやアップサイクルこそがまずすべき事なのである。
エコだとか経費削減だとか、そういう事ではなく、単純に『勿体無い』のだ。
『勿体無い』『まだ使える』『いいものをずっと使う』
そうした感覚を今一度取り戻してみてはどうだろうか。
つかう責任とは
SDGsのゴールの中に『つかう責任』というものがある。
作る側だけでは無く、使う方にも責任があるのである。
つまり消費者側もしっかりと考えて選択して欲しいという思いが込められているのである。
私はSDGsについて勉強するようになり、便利グッズにも簡単には手を出さなくなった。
本当にその便利さは必要なのだろうか。
そう一度自分に問いかけ、確かに便利かもしれないけど無くてもさほど困らない、というものは買わなくなった。
また、不要になり廃棄する際のことも考え素材を選ぶようになった。
どの素材がいいのかははっきりとは分からないが、プラスチック製品は避けるように気をつけている。
コーヒーチェン店がストローの使用を廃止したように、今プラスチックは海洋問題と直結して分かりやすく『避けたいもの』となっている。
そしてプラスチック製品は今、石油由来の従来のプラスチックでは無く『バイオプラスチック』への転換が求められている。
詳しくは日本バイオプラスチック協会資料にてご確認ください。
今できるSDGsのゴール達成に向けた行動
こうした分かりやすい基準を少し意識するだけでも、今できるSDGsのゴール達成に向けた行動になるのである。
そうした行動ひとつひとつでいいのだ。
今できるSDGsの行動とはそういうことである。
そしてそれは誰かに言われてやるのでは意味がない。
どうして今SDGs的な考えが必要なのか。
今問題視されているのはどうしてなのか。
このままだとどうなってしまうのか。
これらの事をしっかりと主体的に考えられるようにならなければならないのである。
SDGsのゴール達成に向けた行動は子供も出来るようになるべき
学校教育におけるSDGsの授業はどのように進められていくのだろうか。
近しい教員に話を聞いたところ
「どうやって授業を進めていいのか分からない」
とのことだ。
学校教育のゴールは
子供達が主体的に自分たちの未来を考え行動できるようになること
ではないだろうか。
そう私は考えている。
我が家の子供は無駄に文房具を買う傾向にある。
折り紙なども買ってはゴミにするという事を繰り返している。
その折り紙は1枚1円で買えるかもしれない。
しかしその為に木が伐採されエネルギーが使用されている。
それが最終的に自分たちの住む地球環境に影響を及ぼしている。
本当にそれは必要なのか?
そこまで考えられるようになる為に導くのがSDGsの授業ではないだろうか。
(とはいえ、美的感覚や想像力、クリエイティブ力を伸ばす為に必要なものももちろんある。なので全て良くないと言っているわけではない。)
学校で教えることは17のゴールや169のターゲットを覚えさせる事ではない。
あなたがしている行動の中で、SDGsのゴールと関係してくるのはどんなことか。
ゴール達成のためにどう行動を変えたら解決できるのか。
その問いに対して答えられるようになり、どうして今こうした問題に取り組まなければならないのかを主体的に言えるようになる。
そこに導く授業をしなければ全く意味がないと私は考えている。
加えて『トレードオフ』についてはしっかりと理解できるように導いて欲しい。
SDGsでよく聞くトレードオフとは
SDGsの中でよく出て来るキーワードが『トレードオフ』である。
トレードオフとは、何かをするために何かを犠牲にしてはいけない、ということ。
これはSDGsにおいて非常に重要な考えで、ここを無視しては絶対にならないのである。
SDGsは『誰一人取り残さない』という考えのもと考えられているものであり、トレードオフは絶対にあってはならない事なのだ。
では『トレードオフ』とは一体なんなのか。
例えば私が住む沖縄では先日こんな事があった。
中国が台湾パインの輸入を停止した事により各国が台湾の支援をしており、SDGsもそれを推進し、日本、そして沖縄県も台湾応援の為に台湾パインを大量に輸入したことにより、沖縄県内で栽培されているパインの卸先が減り大量に余ってしまって農家が困っている。
支援自体は素晴らしいことである。
しかしながら、『台湾パインを支援した事により沖縄県のパインが売れなくなった』という、この事態を『トレードオフ』と言うのだ。
他の例を挙げるなら例えばこういうことも『トレードオフ』である。
ヤシの実洗剤で有名な『サラヤ』の話である。
植物由来で肌にも優しい洗剤として開発されたヤシの実洗剤。
環境問題や肌に優しい洗剤として販売されたがその後、使用されているパーム油が熱帯雨林を破壊し生息する野生の象へ悪影響を及ぼしているという部分を指摘されたのである。
つまり地球環境や肌に優しい洗剤が、実は熱帯雨林を破壊しそこで生息する象を脅かしていたのである。
これも『トレードオフ』である。
SDGsでよく聞くSDGsウォッシュとは
そしてその『トレードオフ』を無視し続けると言われるのが『SDGsウォッシュ』である。
サラヤは先述の指摘を真摯に受け止め、ボルネオ環境保全プロジェクトを立ち上げこのトレードオフを解決しようと行動している。
1971年に誕生した「ヤシノミ洗剤」は、石油系洗剤による水質汚染が社会問題となる中、環境にやさしい植物原料を用いた植物系洗剤の先駆けとして誕生した主力ブランドです。
しかし現在、世界の食用需要の増加などにより、植物原料のひとつであるパーム油の生産が拡大。熱帯雨林を伐採してプランテーションを拡大するなど、主要生産国のひとつであるマレーシア・ボルネオ島を中心に、さまざまな環境・社会問題を引き起こしています。
もはや「植物油=環境にやさしい・人にやさしい」と単なる一面だけで語る段階ではないのが現実。
サラヤでは、この問題に目を向けて出来ることから少しずつでも取り組んでいこうと各種団体と協力し、2004年よりボルネオ島の環境保全を行っています。(引用:サラヤ公式サイトより)
もしサラヤがこのような行動を取っていなければ『SDGsウォッシュ』である、と言われる事になる。
つまり『SDGsウォッシュ』とは、SDGsの行動によって発生した『トレードオフ』に対して何の解決も行動もしないことを指す。
最初から100%を目指すのではなく、今できる行動をしっかりと考え行動し、その上で新たに出てきた『トレードオフ』に対して真摯に受け止めまた新しい課題としてその解決策を取る、という事がSDGsにおいて非常に重要な事なのである。
新たに出てきた問題に対してまた解決をしていく事こそが重要なのである。
それがSDGsにおける『誰一人取り残さない』行動なのだ。
今できるSDGsは何かを考える
SDGsとは2030年に向けた世界的な行動目標であり、17のゴールと169のターゲットで構成されている。
この全てのゴールを解決することを考えるのではなく、自分や企業の行動がどの部分に影響を及ぼしているかを考え、行動を改める事がまず第一段階ですべき事である。
学校教育においてSDGsの授業とは、これらのゴールを覚えさせる事では決してない。
今世界で起こっている事、なぜ今SDGsが言われいているのか、このままだとどうなってしまうのか、今世界はどのような未来を描いているのか、そこをしっかりと理解し、では何が出来るのか考えてみよう、と導くことではないだろうか。
子供達が主体的に自分の未来を考えられるように導くこと。
そうした授業をするにはどうしたら良いのか。
そこについて今後もしっかりと考えて行きたいと思う。