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パニック障害とは
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目には見えない苦しみがあるということ
私たちは、日々さまざまな感情とともに生きています。
楽しいときには心が弾み、不安なときには胸がざわつく。
けれど、心の動きは目に見えず、他の人と共有することが難しいものでもあります。
たとえば、「怖い」と感じる瞬間があるとして、その恐怖の大きさは人によって違います。
ある人にとっては気にならないことが、別の人にとっては耐えがたいほどの恐怖になることもある。
パニック障害を持つ方々の苦しみは、そうした 「目には見えない恐怖が突然襲いかかる」 ということにあります。
理由がわからないまま、突然、息苦しさや動悸、めまいに襲われ、
「このまま死んでしまうのではないか」
「どうにかなってしまうのではないか」
という強烈な恐怖に支配される。
その感覚は、経験したことのない人にとっては想像しづらいものかもしれません。
しかし、本人にとっては 「確かにそこにある恐怖」 であり、その瞬間、世界が自分を押しつぶすように感じることさえあるのです。
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パニック発作とはどのようなものか
パニック障害は、突然、強い恐怖や不安が襲いかかる 「パニック発作」 を繰り返す疾患です。
発作が起きると、次のような症状が現れることがあります。
心臓が激しく鼓動し、息が苦しくなる
めまいやふらつきが生じ、倒れそうな感覚に襲われる
手足がしびれたり、体の感覚が鈍くなったりする
「このまま死んでしまうのではないか」と感じるほどの強い恐怖が湧き上がる
これらの症状が突然現れ、数分から数十分の間、続くことがあります。発作そのものは一時的なものですが、本人にとっては 「いつ起こるかわからない」 という不安が常に付きまとうため、次第に 「また発作が起こるのではないか」 という恐れが大きくなっていくことがあります。
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「怖がらなくていいよ」という言葉が届かない理由
パニック障害を持つ方々がよく言われる言葉に、
「大丈夫だよ」
「そんなに怖がらなくていいよ」
というものがあります。
もちろん、それは安心してほしいという気持ちから出る言葉かもしれません。
けれど、パニック発作の恐怖は 「怖がるかどうかを自分で選べるものではない」 という特徴を持っています。たとえば、もしあなたが高い崖の上に立たされ、強風が吹いていたとしたら——「落ちるかもしれない」という恐怖を感じるのは自然なことです。
しかし、もしその崖が「実は安全な場所だから、怖がらなくていいよ」と言われたら、すぐに恐怖を手放すことができるでしょうか?
パニック発作の恐怖も、それと同じようなものです。
本人にとっては 「確かにそこにある危機感」 なのです。
だからこそ、「怖がらなくていいよ」という言葉だけでは、その恐怖を和らげることはできません。
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「いつ起こるかわからない」ことが、人を追い詰める
パニック発作は、特定の状況で起こるとは限りません。
何気ない日常の中で、突然、襲いかかってくることもあります。
そのため、発作を経験した人は 「次はいつ起こるのか?」 という不安に常に悩まされることになります。
「電車の中で発作が起きたらどうしよう?」
「人混みの中で苦しくなったら?」
「またあの恐怖を感じるのではないか?」
こうした不安が積み重なると、やがて「発作が起きそうな場所」を避けるようになります。外出を控えたり、人と会うことを減らしたりすることで、次第に行動範囲が狭くなってしまうことも少なくありません。
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「頑張れば克服できる」という考え方が、時に苦しみを生む
パニック障害を持つ方々の中には、
「気合で乗り越えよう」
「自分の弱さを克服しなければ」
と考え、無理をしてしまう方もいらっしゃいます。
けれど、心の不調は 「頑張ることで解決するもの」 とは限りません。むしろ、無理をしてしまうことで不安が強まり、発作の頻度が増えてしまうこともあります。
たとえば、風邪をひいたときに「気合で治そう」と無理をすれば、かえって症状が悪化することがあります。パニック障害も同じで、無理に「乗り越えよう」とするのではなく、「どうすれば少しでも楽になれるのか」を考えることが大切なのかもしれません。
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パニック障害を持つ方と接するときに大切なこと
もしあなたの周りに、パニック障害を持つ方がいたら——
どう接すればよいのか、戸惑うことがあるかもしれません。そのとき、覚えておいてほしいことがあります。
それは、「理解しようとする気持ちが、何よりの支えになる」 ということです。
「どうすれば、少しでも安心できるだろう?」
「発作が起きたとき、何かできることはあるだろうか?」
「無理に励ますのではなく、そばにいることが支えになるのかもしれない」
そうした視点を持つことで、言葉のかけ方や接し方が、少し変わってくるかもしれません。
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最後に——「見えない苦しみ」に気づくことが、やさしさの第一歩
パニック障害は、見た目には分かりにくいものです。
発作が起きていないときは、普通に過ごしているように見えることもあります。
だからこそ、「何も問題がないように見えるから大丈夫」とは限らない のです。
誰かが苦しんでいるとき、「どうしてそんなに怖がるの?」ではなく、「どれほど怖いのか、私はまだ分からないけれど、そばにいるよ」と言える社会であったなら。そのやさしさが、パニック障害を持つ方々にとっての 「生きやすさ」 につながっていくのかもしれません。
特別なことは必要ありません。
ただ、目には見えないものに、そっと心を寄せること。
それが、誰かにとっての安心につながるとしたら——
そんな未来を、一緒に考えていけたらと思います。
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