マイクの前の孤独とディレクターが出来ること。
私の職業はラジオ・ディレクター。
たくさんの番組を担当している。
電波の向こうには、何万人、何十万人というリスナーがいて、全国のいたるところで番組を聞いてくださっている。
同じ時間や思いを共有する仲間がたくさんいる。
それが、ラジオの魅力だ。
しかし、意外なほどマイクの前に座るパーソナリティは孤独だ。
リスナーは遠く離れた電波の向こうにいるのだ。
そのリスナーは今、どんな気持ちでラジオを聞いているのだろう?
パーソナリティは、そんな不安と戦いながらマイクの前でしゃべる。
それは、2人しゃべりでも、ゲストがいても変わらない。
「自分の話を楽しんでくれているのだろうか?伝わっているのだろうか?」
そんなパーソナリティの物理的に一番近くにいるのが我々ディレクターだ。
一番近くの、一番最初のリスナーがディレクターだ。
だから、私は大げさなほどパーソナリティのしゃべりに反応する。
おおげさに笑ったり、うなずいたり、ブーイングサインを出したり、曲合わせて踊ったり。そして笑顔。
それは、スタジオだけじゃなくロケでも同じこと。
ロケの場合、余計な音を出すわけにはいかないけど大きく頷いたりね。
目的はパーソナリティを安心させること。
この私のやり方が正しいかは解らない。
落ち着きがないと言われたこともある。
それに、生放送なんてテンパっちゃって、しかめっ面になってしまうことももちろんある。
けれど、しかめっ面だらけのスタジオからは楽しい番組は生まれない。
スタジオの空気を作るのもディレクターの大切な仕事だ。
だから、サブルームで番組も聞かずスマホを触っているような人間は、ハッキリ言ってスタジオから出ていって欲しい。
最近は自分でミキシングしながら放送するワンマンスタイルや自宅でひとりで録音するヒトも増えている。いろんな番組があり、いろんな番組の作り方があるので、これはあくまでも私個人の考え方だ。
それもつい最近の考え方。
20年以上ラジオ業界にいて、私自身でやっと見つけたディレクターとしてのポリシー。
私はカーレースが好きだけど、ラジオ番組制作とカーレースは似ている。
走り出したら、レーサー(パーソナリティ)を信じるしかない。
ある意味「手が出せない」
そして、レーサーはスタッフを信じられないと思いっきりアクセルが踏めない。ブレーキが壊れているかもしれない車では全開走行出来ない。
パーソナリティもスタッフを信じていないと全開トークが出来ない。
パーソナリティを安心させるのがディレクターの仕事。
安心させるために精神面だけはなく、技術面も磨かねばと思う。
まだまだ自分も出来てはいないけど。
先週、10月からの新番組の録音がスタートしました。
反省とともに、自分の気持ちを整理しました。
それともうひとつ。ディレクターはパーソナリティ以上にメンタル大事。
(カーレースの監督がレーサーよりパニクっちゃいけないでしょ?それと同じ)
このメンタルトレーニングが一番の私の課題でもあるのですが。