見出し画像

おひとりさま天国 前編

アナウンス
本日の便は昨日発生した台風の影響により滑走路が一部剥がされ全便欠航になっております…

尚、復帰の目処はたっておりません…
ご迷惑おかけしますが…

○ : とんだ災難だな…

今年の春から東京の大学院に進学する○○は
都会の空気と人混みから逃げるように

休暇を利用して人里離れた島に旅行にきていて
まさに今帰ろうとしていたのたが…

季節外れの台風の影響で帰れなくなった

○ : 復旧するまで泊まるしかないか…

あいにく空港は利用できず
船も出ていないので、お手上げ状態だ

○ : 入学式って確か丁度 1週間後だったよな…
       間に合うかな…

○○は泊まっていたホテルにもう一度
チェックインした

部屋に入り、キャリーケースを広げ
必要な物を取り出していく

とはいえ戻っても特にすることも無く
目星をつけた場所はひと通り周ったので
動画を見ながら時間を潰すことにした

しばらくして、流石にダラけるのも勿体ないと思い
台風のせいで行けなかったビーチへ行くことにした

人里離れたこの島は1年を通して暖かく
1年中 半袖半ズボンで過ごせる

ホテルから歩いて行ける距離なので
ショルダーバックからワイヤレスイヤホンを取りだし、最近聞いている乃木坂の曲を掛けた

「おひとりさま天国」

歌詞に入り浸りながら聞いていると
目的地のビーチに辿り着いた



台風が通った事を感じさせないビーチは
太陽の光に照らされとても透き通っていて
綺麗だった


○○は音楽を止めてビーチを散策する

砂浜を見ると、暴風で荒らされた草木が
まばらに散らばっていて
まるで自然が作りあげたアートのようだった

○ : ん?

岩の片隅の方を見ると、小さいお地蔵様が
草に覆われ、息苦しそうにしていたので
綺麗にする事にした

○○はちょっぴり優越感に浸りながら
お地蔵様に手を合わす

何だかお地蔵様が笑ってる気がした

幸いお地蔵様の場所が日陰になっていて
気温も涼しく、気持ちよかったので岩に腰掛け
波音を聞きながら水平線の向こうを眺めていた

ただ、時間が過ぎるのが遅かったので
すぐに飽きてしまった○○はサンダルを脱ぎ
浅瀬に浸かりにいく

○ : 気持ちぃぃぃ

身体の緊張感がほぐれ、リラクゼーション効果が
感じられた気がする

○ : ん?なんだこれ…

視線を下に落とすと何か光り輝いていたチェーンが砂に埋もれ剥き出し状態になっていた

○○はそれを拾い上げると…

○ : 綺麗…

星砂が入ったペンダンドでとても綺麗だった

中身をよく見るとさくらの形をした星砂が入っていて、○○は見入っていると…

? : あったー!!

○ : !?

お地蔵様の方から声がして振り返ると
麦わら帽子を被った綺麗な女性が
○○の方へ走ってきた

? : これ!!
      どこで見つけたんですか?

○ : これ?砂に埋もれてましたよ…

? : これ…私のなんですけど..凄い大切な物で…
       昨日からなくて探してたんです!!

○ : そうなんだ…

拾い物だが、このストラップを心底気に入ってるわけでもなく、人の物だとわかったので
すぐに彼女に渡す

? : ありがとうございますニコッ

太陽に照らされた彼女の笑顔がとても可愛く
眩しかった
そんな彼女を見てると、ストラップの事などすぐに忘れてしまった

       

? : ありがとうございます
       お礼と言っちゃなんですけど…

“1週間だけこのペンダントをあなたに預けます”

○○は彼女の言ってる意味が理解できなかった

大切な物だと言って返したのにすぐに戻ってきた
       
○ : どうゆうことですか?

? : 1週間後また取りに来ます!
       それじゃー!!

○ : え!?ちょっと!?

彼女はそのまま笑顔で走り去っていった

——————-

その夜..○○はベットに横たわり
彼女から預かったペンダントを眺めていた

○ : 明日..また会えるかな…

翌日
○○は昨日と同じ時間にビーチへと向かった

ビーチに着くと昨日○○の前に現れた
笑顔が眩しくて美しく凛とした女性が
再び脳裏に浮かび上がってきた

○ : いた…

○○は彼女の元に駆け寄り話しかける

○ : こんにちは!

○○が声を掛けると彼女は笑顔で○○の方に駆け寄ってきた


? : 昨日ぶりですねニコッ

○ : あの..お名前…

? : あれ?言ってませんでした?
       賀喜遥香って言います

珍しい苗字…

遥 : あなたのお名前は?

○ : △△○○と言います

遥 : ○○さん…良い名前ですねニコッ

彼女の笑顔を見ると
心がドキッとした…

○ : あの..昨日の事なんですけど
       このペンダント..1週間だけ俺に預けるって
       どうゆうことですか?

遥 : どうって..そのまんまですよ
       1週間私と付き合って貰いますニコッ

○ : いきなり言ってる意味がわからないんですけど…
       付き合うって人付き合いってこと?

遥 : 違います..どちらかと言うと..
       特別な関係ですかね

○ : 特別な関係?

遥香さんの話し方..笑顔..全てが
自分をどこか違う世界に引き込んまれていく…
そんな気がした

遥 : 今変な事考えたでしょ?

○ : か..考えてないですよ!

遥 : ホントかなー?ニヤリ

彼女のニヤケ顔はどこか○○の心を見透かされてる気がして少し怖かった

○ : ところで何で1週間だけなの?

遥 : 一週間..それがあなたがここにいる
       タイムリミットだから…

○ : 俺が?

さっきまで笑顔だった表情から一変
少し寂しそうな顔をしていた

俺は最初、彼女が病弱なのかと思ったが
病弱な子が元気に海を歩き回れないと思い
その可能性は捨てた

俺は何か聞いてはいけない気がしたので
喉元まで出てきた疑問を飲み込んだ

遥 : もう行かないと..またねニコッ

そう言って彼女はまた笑顔で走り去っていった

彼女と会って2日目
わかったのは名前だけだった…

○ : 1週間もここにいるかな…

するとその日の夜、航空会社から電話がかかってきた

復旧の目処は…

遥香さんが昨日予言していた1週間後だった

たまたまだと思っていたが
俺は彼女には科学では証明できない何か
特別な才能を秘めてるのではないかと思った

この日から彼女の事が気になり
俺は残りの5日間…彼女と会うのがこの島での
唯一の楽しみへになった

3日目

同じ時間に行くと…

遥 : よっ!ニコッ

既に遥香さんが待っていた


○ : どうも..

遥 : まぁ..ここに座って座って

○○はそのまま促されるまま彼女の横に座った

○ : 遥香さんって歳いくつですか?

遥 : 急にどうしたの?
       あ..まさか私に興味でも湧いた?

ニヤリと笑う彼女の表情に
心が見透かされてる気がした

○ : まぁ..そんな感じですかね

そう言われ満更でもない顔をする遥香
      
遥 : それは嬉しいな〜
       私は22歳だよ..○○君は?

○ : 同じですね
       俺も22歳です

遥 : へ〜何月生まれ?
       
○ : 1月です

遥 : 私は8月生まれで早生まれ…
       だから私の方が先輩だね!ニコッ

○ : 何でですかw
 
○ : 一緒の年に生まれたんだから
       同級生じゃないですか笑

遥 : フフッ 同級生だけど私の方がちょっとだけ先輩…
       だから先輩命令ね

遥 : 今からタメ口で話しなさい!!ニコッ
    
○ : そこは敬語じゃないんですね笑

遥 : 敬語で話すよりタメ口で話した方が
       仲良くなるスピードも早くなるんだよ

遥 : 知ってた?

○ : 知らなかったも…

遥 : フフッそれなら覚えておきなよ
       “向こうに行っても使えるから”

あれ..俺が旅行で来たの話したっけ…

遥 : じゃあ○○は春から社会人?

○ : うぅん…大学院に進学するんだ

遥 : そっか…おめでとうニコッ

○ : ありがとうニコッ

○○は自分でも遥香の笑顔を見ると
頬が緩むのがわかった

お互いの素性について話してると
時間が経つのも早く…

遥 : もう行かないと…
       じゃあまたねニコッ

そう言って再び彼女は遠くの方へ走っていった

3日目…
遥香さんが同い年だということがわかった

旅行で来た事を伝えてないのに
旅行客だと認識されている

そして遥香さんと一緒にいれる時間が
何故か極めて短い…


○○は翌日、この時間が何か比例してるのでは
ないかと思い、測ってみることにした

4日目
その日寝坊した○○は
慌てて身支度を済ませビーチに向かったが…

○ : あれ…

何とか同じ時間に着いたが
彼女の姿がどこにも見当たらない

○○は隅々まで探したもの
彼女を見つけることが出来なかった

○○は諦めて帰ろうとしたが
何か視線を感じ、そっちの方に移すと…

○ : お地蔵様?

彼女と初めて出会った場所
小さなお地蔵様がこの日は○○を睨みつけてる気がした

気味が悪いと思い○○はそのままホテルへ
歩いて帰った

○ : そういえば遥香さんの事に頭がいっぱいで
       しばらく聴いてなかったな…

4日ぶりに聴く…”おひとり様天国”

自由で気楽なおひとり様天国…

友人..バイト..サークルの先輩との泥臭い関係…

ここはそんな事考えなくていい
自由きままに自分のペースで生活できる
Single life

○ : ナナナ、ナナナ、ナナナ、ナナナ〜
       天国だ〜

部屋に戻り、荷物を下ろし携帯を机に置いて
あることに気がついた

○ : ペンダント持っていくの忘れた…

                                                       To be continued 

いいなと思ったら応援しよう!