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レディーファースト 第32話

花火大会 当日

茉央達は浴衣を着て会場にやってきた

赤く黄色くかすかに黒を含んだ色彩の空と
屋台の無数の灯りが

茉央達の魅力をより引き立てている

美 : 茉央めっちゃ可愛いよ
       多分ねここにいる誰よりも輝いてるよ

茉 : またまた〜そんなに私の事褒めちゃって

茉 : 美空の方が一段と輝いてるよニコッ


美 : そう?照れちゃうな//

茉 : クスクス..満更でもないみたいだね

美 : ちょっと!絶対私を揶揄ってるでしょ?

茉 : さぁーて、何を食べようかな〜

美 : 話逸らさないで!笑

茉 : 早くしないと置いてっちゃうよ〜

茉央は足早に屋台の列に向かった

美 : 待って〜

———————-

屋台でたくさん堪能した茉央達は
一ノ瀬家がセッティングしてくれた場所へ
向かうことに

茉 : す..凄い見晴らしが良い場所だね…
       (私達しかいないし…特等席じゃん…)

美 : ここなら人混みにも邪魔されないから
       2人で堪能できるね

茉 : ありがとう美空
       でも、どうやってここの席取れたの?

美 : お父さんに友達と花火大会を見に行くって
       行ったらね 取ってくれたんだ〜

茉 : そ..そっか〜お父さんに感謝しないとね…
        (絶対お金払ってるじゃん…)

美 : だね〜ニコッ

….

茉央は美空の笑顔を除き込むと急に涙を零し始めた

美 : ど..どうしたの?

急に泣き出す茉央に美空は困惑した

茉 : 美空がくしゃっと笑うとさ
       あの時の事を思い出しちゃうんだよね…

美 : あの時って?

茉 : 私が自殺しようと思ってた日…

茉 : あの時に見せた美空の笑顔が
       私の心の中に閉ざされてた葛藤を
       一気に解放してくれて…

茉 : 今でも忘れる事もないし…
       これからも絶対忘れないよ…

美 : もしこれからも茉央が傷ついたら
       いつでも私に言ってねニコッ

美 : だって茉央は…私の”親友”なんだから…

茉 : 私だって…美空は親友だし..”命の恩人”だから

美 : ヘヘッなんかそこまで言われると照れちゃうな

美 : ありがとう…茉央…

すると…ドーンっと大きな音が鳴り始めた

茉,美 : 綺麗…

次々と絶えることなく巨大な菊型の花火が
2人を照らすように大きな音が鳴り響いた…

それはまるで2人の絆を表してるかのような
無数の美しき輝きだった…

——————

花火大会が終わり茉央達は
花火の感想を話しながら帰っていた

美 : なんかさ…今回の花火は今までで
       特別な花火大会だったな…

茉 : 私も…不思議な感覚だったよ…

美 : そうだね…ありがとう茉央
       ミクと一緒に見に行ってれて

茉 : こちらこそだよ
       また来年も見に行こうねニコッ

美 : 絶対見に行こ!約束ねニコッ

小指と小指を絡めて、2人で約束を交わし合う

美 : 私はここで…執事が迎えに来てくれるから…
       茉央ちゃんも乗っていく?

茉 : うぅん…私はすぐそこだから
       歩いて帰るよ

美 : そっか…気をつけて帰るんだよ

茉 : はーい…また学校でねニコッ

美 : うん!新学期も頑張ろうね

茉 : 頑張ろ!じゃあね

美 : バイバーイ

茉央は美空の乗る車が走り去るのを
見えなくなるまで眺めていた

茉 : さて…私も帰ろっと…

茉 : (美空と出会えてほんとに良かった…)

これならまた小学校の時みたいに
学校を好きになれるかも…

過去のトラウマを自ら引き離すように
新たな期待と決心を胸に再び歩き出した

すると…背後から…

? : もしかして…茉央ちゃんか?

小学生の時に聞き慣れたどこか懐かしさを
感じさせる温かみのある声…

茉 : え…
      (この声…)

茉央は思わず立ち止まり後ろを振り返ると…

茉 : △..△△さん…
 
△ : 高級車と見慣れた後ろ姿だったから
      もしかしてと思ったが…

△ : 中学生になってから、えらい可愛くなって…
      一段とお母様に近づいたね…

茉 : い..いえ…とんでもないです…
       △△さんもお元気そうで何よりですニコッ

茉 : △△さんも花火大会にいらしてたんですね…

△ : ここの花火大会は毎年来てるからね

もしかして..お孫さんも来てるのかな?

茉央は△△から孫の話は度々聞いていたが
実際に会ったことはない

茉 : (奇跡だ…
       まさか向こうから話しかけてくれるなんて…)
       
茉 : お孫さんもいらしてるのですか?

△ : もちろんですとも..今あちらのコンビニで
      買い物してますのでもう少しで来ますよ

茉 : 是非..どんな方なのか見てみたいです!
     
茉央は△△に再開した喜びと孫の顔を見れる
ドキドキ感からすっかり小学生の頃の気持ちに戻っていた

茉 : それより..何でおじ様は私が中学になると
       同時に私の執事を去ったのですか?

茉 : 何にも教えてくれずいなくなっちゃうもん
       私..すごく寂しかったです

△ : すまないねぇ..本来なら私も続けるつもり
      だったのだが…孫達の家族が…

いつも私の前では笑顔を絶やさず話してくれる
おじさま

ましてや、お孫さんの話になると生き生きと
話すのだが..

その顔は今までに見たことのない
取り返しのつかない
何かに絶望したような顔だった

茉 : ごめんなさい…おじ様にも事情がありますよね…

△ : いいんじゃ..今は少し落ち着いてきたから…

すると…茉央の携帯から着信音が鳴る

茉 : すいません一旦失礼します…
       (お母さん…)

📱茉 : もしもし…

📱茉(母) : もしもし?今どこを歩いてるの?

📱茉 : 今..自宅から1番近いコンビニで△△さんと
            お話ししてる

📱茉(母) : あら..△△さんと?
          お元気にしてらっしゃる?

📱茉 : うん..いつもの△△さんだよ
             ピンピンしてる

📱茉(母) : そう..それは良かったわ
          今からそっちに向かうわね

📱茉 : わかった…じゃあね…

茉 : すいません…お待たせしました…

△ : 大丈夫だよ…急ぎごとかい?

茉 : いえ..今からお母さんが迎えにきてくるので
       そのお電話でした

△ : そうかい..お母様は元気にしてるかい?

茉 : はい!是非会って挨拶したいと…

△ : 嬉しいねぇ…
      私なんかただの執事1人にすぎないからねぇ…

茉 : そ..そんなことないですよ!

茉 : △△さんは私の中でとっても大切な人です!

茉 : △△さんがいなければ..
       今の私はここにいません!

△△は驚いたように一瞬目を丸くして
こちらを見ていたがすぐに穏やかな表情に戻った

△ : フッフ..茉央ちゃんに言われたら
      私もまだまだ頑張れるよニコッ

優しく笑みを浮かべるその姿にどこか懐かしさを
感じ茉央は自然と涙目になっていた

茉 : ぜひ..また私のお家にいらしてください…
       きっとお母さんも喜びます

△ : ありがとう…お気持ちだけで十分だよニコッ

茉 : わ..私は本気ですからね!

すると背後から青白く照らされたライトと共に
ハイブリッド音が微かに聞こえてきた

黒のベンツが茉央たちの手前に停車する

 運転席から茉央の母親がそそくさと△△の元へ
やってきた

茉母 : △△さん!お久しぶりでございます!

△△ : お久しぶりでございます お母様…
         お元気でしたか?

茉母 : もちろんです〜
           “あの後”はお変わりありませんか?

茉 : (あの後?いつのことだろ…)

△ : えぇ..何とか…あの後は元気に過ごしております

茉央は2人の会話を疑問に思いながら
聞いていた

二人の会話に意識を移していて
すっかり△△の孫の事を忘れていた茉央

すると…

? : おじいちゃん!アイス買ってきたよ〜

茉 : !?
       (聞き慣れない声…もしかして…)

△ : おぉ…戻ってきた…

茉 : え…

初めて見た○○の印象は前髪で顔半分が覆われていて目元が見えず陰湿な感じだった

茉母 : あら..○○君!久しぶりね!

○ : お久しぶりです茉母さん

茉 : (こ..これが..△△さんのお孫さん!?)

△△さんが沢山○○の事を自慢していたので
どんな人かと思えば、見た目は決して良くはなかった

茉央の心の中で抱いていた期待と
それを大きく裏切った現実を味わった茉央は

もう○○の事など、気にもしていなかった

茉母 : 茉央!○○君に挨拶しなさい

茉 : は..はい…

茉央はやむ無く○○の方に向き合い挨拶をする

茉 : 初めまして…五百城茉央と言いますペコリ

○ : 初めまして!遠藤○○です!
       ご丁寧にありがとうございますニコッ

笑顔でこちらを見て挨拶していたが
前髪で目が覆われていたため口角だけ上がった顔は
上部だけの面なのか、何とも表情が読めず
少し不気味な感じがした

茉 : お母さん..私..疲れたから車に乗ってもいい?


茉母 : そ..そうね…慣れない下駄でたくさん歩いた
          だろうから疲れてるわよね…

△ : すまないねぇ…急に話しかけてしまって…

茉 : とんでもないです!久々に△△さんと話せて
       楽しかったです!

茉 : ありがとうございました!

△ : こちらこそ..ありがとうございますニコッ

茉母 : では△△さん是非またいらしてください

△ : はい..ではまた…

茉母 : はい! ○○君もまたね!

○ : はーい

茉母は足早に運転席まだ戻った

茉央も後部座席に乗ろうとしたが…

茉 : (ちゃんと○○君にも挨拶しなさいと…)

そう言って茉央は振り返り○○に別れの挨拶をする

茉 : ○○さんもお会いできて良かったです…
       お元気で…

○○は少し驚いた顔をしたが笑顔で挨拶を返す

○ : こちらこそ…会えてよかったです

そう言って深々とお辞儀をする

茉 : (さて…乗ろうかな…)

○○と茉央…
2人の出会いは唐突にやってきたが初対面の
印象は良くなく、すぐに忘れ去ると思っていた

しかしそんな印象は一瞬で突風と共に消えた

○ : あ…ヒラリ…

風で○○の前髪がめくれ
少しの間だったが○○の目元が顔全体が
ハッキリと茉央の目元に映りこんだ

茉 : え!?


△ : いかん!○○!顔が見えとる!

○ : やべ…

○○は素顔を出したくなかったのか焦り出し
急いで前髪を覆って元の姿に戻した

しかしそんな行動も虚しく茉央の心は
一瞬で○○に奪われた…

茉 : あ..えっっ///
      (人生で初めて…理想の人と出会ったかも///)

○○の素顔は端正な顔立ちで誰から見ても
目を奪われるような容姿だった

しばらく○○の顔が頭から離れなかった茉央は
その場で固まったまま素顔を隠した○○を
見つめていた

すると運転席から…

茉母 : 茉央?何してるの早く行くわよ

茉 : あ..はい!

茉央は顔を○○の方へ傾けたまま
そのまま車へ乗り込んだ

茉母 : どうしたの?急に声上げてたけど
          何かあったの?

茉 : うぅん…何でもない…
    (大丈夫かな…私..ちゃんと可愛く見えてたかな…)

茉母 : でも顔赤いわよ?

茉 : 大丈夫…気の所為だから…

茉母 : そう?ならいいけど…

それからもお母さんから話しかけられたが
頭に入ってくることもなく○○の素顔で
いっぱいだった…

そして茉央の心の中で内なる野望が芽生える

茉 : 決めたボソッ

               “絶対○○君と付き合ってやる”

             
                                                      To be continued 

     



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