レディーファースト 第30話
美 : 皆さん初めまして福岡から転校して来ました
美 : 一ノ瀬美空です
よろしくお願い致しますニコッ
初めて彼女を見た印象は、とても美人で品があり
周りの目を惹きつける不思議な魅力があった
この子はクラスのマドンナ的存在になる
それでも私には関係ない
なぜなら..今日で辞めるつもりだから…
先 : では..一ノ瀬はさん五百城さんの隣で
美 : はい!
一瞬 教室が静まりかえった
美 : 初めまして!よろしくねニコッ
茉 : よ..よろしくお願いします…
茉央は美空の目を見ず返事だけした
先 : では朝礼が終わったら五百城さんは
一ノ瀬さんに校内の事 案内してください
なんで私なのよ…
午前中に辞める意志を伝えようと思ったのに…
まぁいいや、いくらでも時間はある
あいだ見て伝えよ
美 : よろしくね!
茉 : う..うん…
先 : では朝礼はこれで終わり
茉央は美空に校内を案内しようと思ったが
周りの生徒から質問攻めにあっていた
あんだけ美人だったら、人気が出るよね
茉央は教室の空気が息苦しかったので
教室を出て人気のない場所にいった
茉 : はぁ…
教室にいると誰かに見られてるんじゃないかと
過剰に反応してしまう
誰も居ない場所でやっと一息つける
すると…
美 : みーつけた!!
茉 : な..なに…
美 : 先行かないでよニコッ
一緒に校内探検しよ!
茉 : 探検って…
美 : その前に…1つ聞きたい事があるんだけど
茉 : なに?
美 : 茉央ちゃん家ってお金持ちの家庭だよね?
茉央はそれに対して返事をせず
ただ黙っていた
美 : 五百城って苗字..中々見た事ないし…
茉 : そうだね…周りの人達よりお金はあると思うよ
美 : やっぱり!?私と同じじゃん!!
同じじゃない…お金持ちでも
一ノ瀬さんみたいに人を惹き付けるような魅力はない
私は…ただの凡人だ
茉 : そんなんじゃないよ…
私は一ノ瀬さんみたいに可愛くない…
美 : そんなことないって!
スキンケアして..お化粧もして..
ヘアセットとか..
美 : ちゃんとしたら絶対に美人だと思う
私は一ノ瀬さんが言ってることを信用できなかった
ただ..馬鹿にされてるだけだと…
この子もクラスの雰囲気に馴染んだら
絶対..私をいじめるにきまってる
だから…早く辞めたい…
美 : 「茉央ちゃんはここにいる誰よりも美人だよ!」
茉 : !?
(何言ってるの…)
茉 : 馬鹿な事言ってないで早く行くよ
茉央は聞く耳を持たず
そのまま扉の方に向かう
美 : ほんとだって!じゃあ今日から茉央ちゃんの
垢抜け計画始めよっか!
茉 : 残念だけど…
茉央は立ち止まり美空の方を見つめる
茉 : 私今日で辞めるから…
美 : え…なんで…
茉 : つまらないから…
美 : じゃあ私が…
茉 : 知ったような口聞かないで!!
美 : !?
茉 : 今日来た人間が…私の何がわかるのよ!!
誰にも笑顔で接せる明るく無邪気な性格と
無知で思ったことをそのまま話す人柄
まるで昔の自分を見てるようで
余計に腹が立った
美 : ご..ごめん…
茉 : 一ノ瀬さんは、私の立ち位置知ってる?
美 : わ..わからない…
茉 : いじめられっこだよ
美 : ..え…
すると美空の瞳から涙がこぼれていた
茉 : 少し身分が良いからって
何も良いことなんかない
茉 : だから…こんなつまらない学校に
いる意味なんかない…
“誰がいじめとーと?”
茉 : え?
その時に見た美空の顔は今でも覚えている
涙交じりに瞳の奥から感じる静かな怒り…
美 : 誰が茉央をいじめとるの!!!
美空の気配に圧倒された茉央は
口を震えながら正直に答えた
茉 : ク..クラスのみんな…
美 : それだけ?
茉 : うん…
美 : ちょっと行ってくる!
茉 : ダメだよ!そんな事したら…
一ノ瀬さんもいじめられる
美空を止めようとしたが
彼女の力は意外にも強く止められなかった
美 : 高貴な私達に手を出すとどうなるか…
ここで待ってなさい
美空は自身ありげに言って教室に向かった
どれぐらい経ったのか…
あれ以降 美空は戻ってこなかった
茉 : だから言ったのに…
(一ノ瀬さんも私のせいで…)
私と関わらなければクラスの
マドンナ的存在になってた
私は怖くなり…クラスの様子を見に行くことにした
足取りが重く身体中の震えが止まらなかった
必死に足を動かし、クラスに到着するまで
30分はかかったと思う
クラスの前に着いた時、すごく静まりかえっていた
茉 : (みんな…どこかに行ったのかな)
緊張と恐怖から今でも心臓が
口から飛びでそうだった
おそるおそる扉をあけると…
みんなの視線が一気に私に集中していた
茉 : (一ノ瀬さんはどこ…)
美空の席を見ると…
美 : おかえりニコッ
朝礼で見せたいつも通りの笑顔だった
すると…
美 : さぁみんな
茉央に謝りなさい!
明るい声から一気に普段聞かない
重みのある声に変わった
美空の声に反応しクラスメイト達は
茉央の方にゆっくりと寄っていた
クラスメイトとの距離が縮まる度に
心臓の鼓動が段々と早くなっていった
、
茉 : (や..やばい…いじめられる…)
茉央は怖くなり目を閉じていた
しかし..何もされない…
茉央はおそるおそる目を開ける
すると…
ク1 : ま..茉央ちゃんごめんなさい…
茉 : え?
ク2 : どうか…今までの行いをお許しください
ク3 : 茉央ちゃんが身分の高い人だと思ってなくて…
1人ずつ深々と謝り
中には泣きながら謝る生徒もいた
茉央はどう反応していいかわからず
その場に立ったままだった…
すると…
美 : 茉央ちゃん!
ビクッ!?
茉 : 一ノ瀬さん…一体何したの?
美 : ちょっと来て
茉央の話を聞かず、美空は茉央を連れ出し
先程いた人気のない場所へ行くと
美空は笑顔で振り返った
美 : 言ったでしょ?
茉央ちゃんは…
「ミクの大切な友達」
茉 : い..一ノ瀬さん…
学校に来て一日も経ってないのに..なのに…
どうしてこんなに安心するのか…
自分でも不思議だ…けど…
彼女の笑顔を見ると..信頼出来る
中学に入って奈央と沙耶香以外に
初めて信用できる人ができた
美 : む…その呼び方嫌だ…
もう私達は友達だよニコッ
美 : 今度から美空って呼んで!
茉 : み..美空…
すると満面の笑みを返してこう言った
美 : みーーキュンキュンニコッ
茉 : クスクス..何それ
美 : 私の必殺技ニコッ
美 : 私の前では素の茉央ちゃんを見せて欲しい
茉 : い..いいの?
美 : もちろん!
茉 : あ..ありがとう…グス
美 : 今までよく我慢したね?
美空は茉央をそっと抱きしめた
美空の温かい抱擁が
今まで溜めていたストレスという重圧から解放され
茉央はその場で泣きじゃくった
私と茉央の違い..それは口だけじゃなく
行動に移すこと…
いつか私も美空のようになりたい
それ以降…
クラスメイトからいじめられることはなくなった
茉央はその後 美空と一緒に
退学届をビリビリに破り捨てた
To be continued
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