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商業出版する方法#97〜断言しよう。本を書きたい!と思っている人はなぜか読者ニーズを汲み取れない・・。

元KADOKAWAの編集者でビジネス・実用書コンサルタントの渡邉です。

本を書きたい!と思っている人が本にしたいな、と思うネタの9割は「読者ニーズがない」くらいに考えててもいいのではないでしょうか、って改めて思うわけです。

色々相談を受けていても、「それって本当に売れるのかな?本として」てな意識がよぎること9割8分ですね。
それくらい・・・なぜでしょうねえ。本を出したい!と思っている人は、適切に「お客様」=読者のニーズを汲み取れないですねえ。

というかね、どうしてこんなにも読者ニーズを汲み取れないのか。
本を出したい・本を書きたい人はなぜ”読者”への意識・マーケットニーズを読み取りづらいのか、これについて少し考えてみたいと思います。


原因1)本を書きたい!出したい!と思う人は、読者=お客様が何を知りたいか・何を欲しているのかを求めている以上に、とにかく「自分の意見や考えを伝えたい」というめちゃくちゃシンプルな動機が”先に来て”いる。

まずはこれですかね。
批判覚悟ではっきり言いますが「主張したい、言いたい!」そういった気持ちのレベルが高いお方は多いかな・・・って思います。
それこそ「承認欲求が高い」人とも言い換えられるかもしれません。

みんな聞いてよ!
みんな読んでよ!
みんな私を見てよ!

てな意識は「本なんか出さなくたっていいんじゃない?」と考える人よりは強いと言えるでしょう。
で、これが良い悪いは全く別の話です。ただ事実としてそういう気持ちが「特に本だそうとか思わないんですけど。。」と考えている人よりは強くお働いているし、モチベーションとしてのレベルの高さも根底としてあると考えます。
また加えて言うとすれば・・


”本を出している人は・・ひとかどの立派な人!”


といった意識もお強いかな、って思います。
出版をビジネスブランディングに利用したいと考える起業家・経営者が後を絶たないのは、こうした「権威性」への魅力があるからでは、とも考えます。
ただこれもこの事が良いとか悪いとかの話ではないので、そこは前提としておいて欲しいのですが。。。

でも確かに出版の世界は歴史背景を見ても「金持ちの坊とお嬢が動かしてきた」それでもあり、世が世なら金持ちのハイスペック&エリートでないと、文章表現で食っていくなんてとてもじゃないと無理だった。

その意味ではちょっとした「上級市民」「貴族性への帰属」意識・憧憬などもあるのかな?と考えたりもします。

だって、本出したらよく知らない人からも「先生」扱いですからね。
確実に持ち上げられるし、社会的に「認められる」感はそりゃ半端ないです。
私もある著者から「本を出しています、と言うと、目の色が変わるんですよ!」「態度があからさまに変化した」などと話されたことがあります。

日本は本への信頼性・高価値をおいている社会システムであり文化です。その意味においても「本を出している」ことのブランドを持ちたいという気持ちは、隠しようがないし、よくよく理解できることでもあります。

しかし「そこだけ」に目が眩んでいるように見受けられる人も結構な数いらっしゃるんですよ。

私の言うことを世の中は聞いてくる「はず」といった、なんだかよくわからない根拠です。

これは本を出していて、メディアに登場する作家(著者)の人たちが、丁重に扱われていたり、自論を持ち上げたりされているからこそ、勘違いされやすいのかな、って思ったりもします。
なんだか”偉い人”にメディアも「持ち上げ」ますからね。

だから自分の表現を本にするだけで本も売れるし、読者も応援してくれる!と思い込まれる風潮も「読者=お客さん」という意識が本来は働かないといけないのに、他のビジネスとは一線を画した世界に見られて、読者ニーズより、本を出したい自分の考えや意見こそ全て、みたいな発想に陥りやすいのかなと推測したりします。


原因2)読者=お客様の意識が今ひとつ・・・薄い
上記に関係してきますが、本を出したい!と思う方に接して常々思うのが「読者」=「お客さん」の認識がどうあっても薄いかな、と感じられずにはいられないことです。

そして特に個人でビジネスをしている人に多く弊害になりやすいのは、読者よりも「目の前のクライアント」を見ていることです。

目の前のクライアントは、あなたの元に顧客としてやってくる上で厳選された人たちであって、その人たち「だけ」を相手に出版を考えていると、商業本では色々と難しくなることも多いです。

またクライアントをお持ちの個人ビジネスを展開している人は、自分の商材の価格が「高い」ことも多いので、簡単に売上と知名度を作りやすいです。
それゆえの自信が、本質的読者ニーズから目を逸らさざるを得ない環境を作り上げてしまうのかもしれません。

ただ一つ大事にしたいことは、一般的な大衆向けの本の価格は「1000〜2000円」程度のものが圧倒的ということ。この価格が高いか安いかはまた人それぞれの価値観になるとは思いますが、それであっても「比較的安価な商品」であると言えるでしょう。

そんな安いコンテンツ集を、しっかり会社が維持できるほどの売り上げとして確保するためには、確実に「広くたくさん!」購入してくれないと難しいワケです。
だから、何十人・何百人に売ればいい、ではないです。
それこそ現在のビジネス書の初版部数は低くて3000部、多くても5〜6000部「から」スタートするのがザラです。本を売ってきちんとした儲けを確保しようと思ったら「1万5000がくたびれもうけ」と言われるほどで、何万・何十万にリーチする必要が本来はある。

となると、ビジネス・実用書の著者になりたい!著者として活躍し続けたいと思う人が焦点をあてなければならないのは、目の前のクライアントとか、周囲1kmの人の意見とか以上に、万単位の人々が「欲しい!」「役に立つ!」「ためになる!」「買わなきゃ」と思えるようなコンテンツメイキングです。

商業本の世界において、真のお客さんはあなたの目の前の数十人や数百人のクライアントや受講生ではありません。

何万人・何十万のお客さんが「進んで+我先に!と買ってくれるコンテンツ」を考える事が大切なのですよね。

「万」単位の人が進んで買ってくれるコンテンツって何なのか?ここに意識を向けましょう。

万単位の人が意識できない・・・となれば、市町村単位で考えてみると良いでしょう。
例えばあなたの区や市や街を考えてみてください。3万人の市や町に住んでいるとすれば、あなたが住んでいる市の市民に全てあなたのコンテンツを買ってもらわないといけない。そうイメージした時、どんなコンテンツを売りますか?って話ですよ。

すると、思わずにはいられないのではないでしょうか。
視座と視野を広げないとやばいな、てことに。
意外と本を出したい!と思う人の視野や視座のスケールって、めちゃくちゃ狭いし細いのです。
でも商業本のスケールは、広く太い事が大事。その意味でも、視野や視座のレヴェルをアップさせるなど、あなたのコンテンツを本としてまとめた場合、未来の顧客に対する眼差しを変えていかない
といけないな、って思いに囚われていくのではないかと。

でも、そこが大事なんです。
ベストセラーが出せる作家は、そこの視座や視野と、自らの器量の「拡大」を意識的にやっていることが顕著だったりしますね。


3)出版業界・本のマーケットを正しく捉えていない。捉えられない。
なんせ「本を出したい!」人もそうですが、著者の人であっても見ているのは「自分の本」ばかりだったりします。
競合書(これを業界では”類書”と呼びますが)のことであったり、競合書がどれくらいあるのかのエッセンシャルなマーケット思考は確実に疎かになっています。
しかしこれは仕方のないことかな、って思いもあります。

一方で編集者や出版社のスタッフは著者や著者候補の「立ち位置」と異なります。
1社あたり月に10点〜大会社になると100点以上のアイテム(本)が、出版社の元から飛び出していきます。そしてはね帰ってくるのは、「リアルな販売の数字」と「現場の書店員から寄せられる現場の販売状況」です。

この身近な場に携われるのが編集者であり営業であり・・「出版社のスタッフ」たちです。出版社のスタッフは、それはもう「現実」をまざまざと日々突きつけられています。
売れ行きが良い本、悪い本のデータが日々あがってきます。
書店員からは時として「期待と違って売れてないですよ」といったダイレクトな反響やクレーム・厳しい意見なんかも寄せられます。

出版社はあらゆる著者のあらゆるテーマ+ジャンルのアイテム(本)を扱っているワケなので、”どんな著者・どんなテーマ・どんなジャンル・内容が売れているのか、売れていないのか”を細かく冷酷なデータとして「突きつけられ」ています。

その数字やデータは、もちろん編集者にもダイレクトにはねかえってきます。
私も経験がありますが、とにかく「シビアなこと」や「えー、マジかよ!」ってな悔しい思いもしょっちゅうしました。
でもこれは出版社に勤めている編集者なら誰でも経験している「日常」です。


出した本ぜんぶが「気持ちよく売れてるぜ!」てことは・・皆無なので。


となると、残念ながら著者以上に、出版社の編集者は「本のマーケット」に詳しくなるのは当たり前であり、真の意味で「読者ニーズ」に敏感になってしまうのです。


しかし著者や著者候補が知り得るのは、そういった詳らかな情報はなく、非常に断片的で極めて狭隘的でしかありません。
著者の場合は「自分の本がどうなっているのか」、、程度なものだったりします(それさえも知らせないことも多いですしね。。聞きたくない!と言いう著者さえもいますが。よって「重版」時にしかご連絡いかないわけで)。

その意味でも刻一刻と移り変わる本のマーケットに編集者ほど敏感ではない・・こともある意味仕方がないことだよなあ、と言えると思います。

紀伊國屋パブラインやトーハンや日販の売り上げデータも、著者は見ることができません。それを見られるのは、出版社のスタッフだけであり、その中でも営業の部署でしか見られない、、という情報の狭隘ぶりだったりもします(編集者は営業のシェアで販売のデータを知ることも多い)。


4)じゃ、どうすれば「読者のエッセンシャルなニーズ」を掴む事ができるの?
という話に行くと思います。

これには2つの方法があるかな、って思います。

その1:書店に行ったり、SNSで気になる著者をフォローして、「今何が流行っているのか」「どんな本が売れているのか」を細かくチェックしてみる

その2:思い切って専門家に訊いてみる


その1については、もうすでにそういうことしています。というかたも多いのでは?とも推測しますが、残念ながらリサーチ的な意味では、リサーチ力が十分ではない場合が多いです。
なぜかというと、本は1日200〜300点が随時垂れ流されている状態。
そして、著者もその本の数に比例してどんどんデビューします。
要は膨大な量の本がドバドバと市場に溢れているのです。あなたが「類書」としてマークしている本の他にもまだまだ埋もれていたりする「類書」もあるし「意外と見つけられきれていないヒット本」などもあります。


「ネットの世界は広大だわ」とはアニメ映画『攻殻機動隊』で草薙素子が発する言葉ですが、本の世界も同じです。
「本の世界も実に”広大”」です。
編集者でさえ、抑えきれていない”類書”がどんどんと存在したりもする事がありますし、意外と見つけられ切れていない「ヒット本」が隠れていたりする場合もあります。

だからこそ、そんな”広大”で”ディープ”な世界に真っ向から向かっていく必要があるわけで。そうした世界を正しく捉え、分析し、新たな読者の”潜在ニーズ”をキャッチする力が大事なわけで。
そのためには、常にアンテナを貼って、本の世界の動向・ニーズに細かく目を配り情報を取得していく行動が極めて必要になります。
要は「本のマーケットオタク」になることが重要なわけです。

が!本を出したい!と思う人がそれをやりすぎていても「本業」に支障をきたす。

だからこそ「その2」の”専門家に訊いてみる”があるわけです。

出版セミナーや出版塾・私のようなコンサルやプロデューサーがいるのは、広大な本のマーケットをおい切れない人に向けて「ジャーナル」するためです。

その意味でも、出版社で編集をやっていた出版のプロデューサーやコンサルは、確実に詳細な「本のマーケット」情報を掴んでいます。ようは「本のマーケットオタク」たちだからです。
何も宣伝するつもりはありませんが、できるだけ「正しく」「最短レベルで」有益な情報を掴んでもらうことが、商業出版の活動をよりよく行える近道であることは言うまでもありません。
「その道のプロ」がいるのは、そのためです。


ということで今回はちょっと長文になりましたが、ここまで読んでくれたあなたは、ビジネス・実用書の著者になれる資格があります。
なぜなら著者はなんといっても「長文を読む・書く」ことは基本スキルであることが必須であるからです。
一つの希望を持って、ぜひ良い出版活動になることを祈念しておりますよ!


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