『「売春はヤクザが取り仕切っているから、みかじめを払え」と言われた、いたいけなわたしたちは。』トーキョー’90クロニクル vol.13
いたいけ……とはとても言えないとは思うのだけど、10代の女が援助交際という名の個人売春なんてしていたら、当然怖い目には合う。ある日、援交仲間のひとりが暗い顔をしているので「どうしたの?」と尋ねたところ、こう相談された。
「昨日、テレクラで出会った男の人とホテルに行ったら、部屋に入った瞬間に態度が豹変してつめられた。売春はヤクザが取り仕切っているから、みかじめを払えって。学生証を見られて家の住所もバレてしまっている」と。
最悪of最悪のカードを引いてしまった彼女。どうすればいいのか。3日後までにとりあえず10万円を用意しろといわれた彼女に対して、わたしたちが出来ることを考えることにした。
ひとつは彼女にお金を渡すこと。が、わたしたちは当時、稼いだ分だけ服やらコスメやら遊び代やらに使っていたので、手持ちのお金はもちろん、そんなにない。(女子高生が将来のために貯金をしてどうする?むしろ貯金とか未来のためとか、生活のためではなく、ただただ目の前の“欲しい”という欲求のために体を売ることが出来るということが、ある種の特権でもあった)。ではこれから彼女のために体を使って金を稼ぐか。でも、そういうことをすると、友達関係みたいなものがおかしくなってしまう気もするし、人助けのために体を売るほどまでには、残念ながら情に厚くもなかったので一旦保留。
元ヤンあがりの武闘派のひとりは「地元の先輩たちに相談しよっか?」というアイディアを出してきたけれど、それは彼女の願うところではなかった。援助交際をしていることは、仲間内以外、誰にも知られてはいけない秘密だった。「援助交際している女の子」なんて知られてしまっては、価値がさがる。
警察に駆け込むという手段も、絶対になしだった。そんなことをしたら親にも学校にも、事実が知られてしまうからだ。わたしたちは人生をうまく生きようと考えていた。うまく効率よく稼ぐために援助交際をしていた一方で、うまく人生を渡るために卒業後は、大学に進学しようと思っていたし、大学に入ったら正々堂々と時給の高いキャバクラでバイトをして遊び尽くした後、きちんと就職をして、それなりの相手と結婚してまっとうな家庭を築こうと思っていた(「きちんと就職」という件に関していうと、その後、ちょうど就職氷河期に見舞われてわたしは完全に失敗したけれど、まぁそれはさておいて)。
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