FOR REAL2019感想
この記事はFOR REAL2019の私の感想をまとめたものでネタバレを大幅に含みますのでご注意ください。ネタバレに寛容な方のみご覧くださいませ。
時系列で追う流れだからこそ、私たちは未来を知って“しまって”いる。
目の前で胴上げをしてしまうことも、阪神にCSの道を譲ってしまうことも。
そう、筒香嘉智の最後の打席がいつかも。筒香が願った日本一が早い段階で儚く散ってしまうことだって。
画面の外でどれだけ私たちが彼らの笑顔を願っても叶わないのだ。どれだけ願っても未来は変えられないのだ。しかし、私たちはこの映画を観に来た限り、苦しくて辛い瞬間も見届けなければならない。これがどれだけ虚しいことか。そして、この虚しい瞬間を乗り越えて待っているのは「物語-筒香嘉智-の終わり」なのだ。
私は何度も映画の中で時計を見た。筒香嘉智との時間があと少しで終わってしまうのが本当に本当に嫌だったからだ。早くこの虚しい時間は終わって欲しいけど、この映画が終わったらベイスターズの筒香嘉智とお別れを言わなきゃいけない気がした。映画が1分、1秒進むごとに更に愛着が湧く私たちのキャプテンがキャプテンでなくなる瞬間を迎えるのが一番辛かった。
勿論その寂しさやいなくなる意識をしなければならないのはファンだけでは無かった。残された選手達もそうだった。
Twitterのフォロワーさんがもし柴田竜拓が終盤成績を残していなかったらああやって取り上げられたのかというツイートに対して、こんなツイートをした。
今年のFRは「戻らない瞬間、残されるもの」という副題通り、
1つのベイスターズの物語-筒香嘉智-が終わる中で新たなベイスターズの物語の始まり、簡単に言えば筒香嘉智に代わる新たな鍵へのバトンタッチな訳で、それは決して1人じゃないんだよね。
私は柴田の成績がもし振るわなかったとしてもそれなりにクローズアップされたんじゃないかなと思う。何故なら筒香の側にいてかつ次世代の核となる世代の人間だから。乙坂もそう。
チームの顔として引っ張る山崎と今永。
変わりゆくチーム、そして物語の象徴として、旧世代のバトンタッチを受けて若手から核に成り行く柴田と乙坂。
チームを全体的に見て支える立場になった石田と伊藤光。
映画よりは予告編を見てるとこういう構造にするのが物語として一番分かりやすいんだよな。
この映画は予告編でも取り上げられている通り、鍵になっているのは上述で挙げた6人だろう。ただ映画を観た人なら気付くだろう。予告編で取り上げられるほどの出番が伊藤光に無かったことに。強いて言うならば取り上げられた他5人とそれ以外の選手の間くらいの出番だっただろう。しかし、これも理由があったように思える。
伊藤光はキャリアを見ても分かる通り少しだけこの5人よりも先を知ってる訳で、唯一ターニングポイントのようなものを経験してきた人間なのだろう。それ故チームの鍵だとしても他の5人とは走る速度は違う。
しかしチームもフロントも、伊藤光はチームを支えるベテラン側じゃなくまだ全力で走る主役側って認識なのではないか。
若手が中堅に差し掛かるタイミングで、勿論まだまだ色んなものを吸収している最中ではあるが、「中心」に来るターニングポイントが見えてきた、その段階が映画の最後の時間軸だと感じた。
チームの一番前をこれから走るであろう山崎・今永・石田・柴田・乙坂。その5人と一緒に走りながら繋ぎ役も担う役が伊藤光なのだ。それ故がむしゃらに走る5人よりは引いた立場で出番も減るものの重要な鍵になる認識に変わりは無いのだろう。
この映画を私なりに一言でまとめるならば「心の中で筒香嘉智とのお別れを言う映画」だ。それが副題である「戻らない瞬間、残されるもの」なのだ。ひとつの物語の終わりと次の物語の始まり、そのピリオドこそが筒香嘉智だ。
映画を観ていた瞬間はこの時間が終わって欲しく無い気持ちでいっぱいだったが、今は少しだけこれからのベイスターズが楽しみである。筒香がいないベイスターズを6人がどう引っ張り、それを周りがどう支えていくのか。物語の続きを早く観たい気持ちでいっぱいなのだ。そんな気持ちを与えてくれたのは筒香嘉智が最後に私たちに残してくれたプレゼントである。
筒香のメジャー行きが決まった後、ホームタウンの横浜市にあるビブレ横浜の筒香の特大広告に「ありがとう横浜」と追記された。私たちもこう言い返したい。
「ありがとう筒香」