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『かっこいいな』

今日はずっと前から約束していた前の職場の先輩とランチをする予定があった。
一緒に働いていた時はかなりお世話になったし、沢山可愛がってもらって、友達のようだけれど娘ほど歳も離れているし、私にとっては第二の母みたいな存在だ。


生憎の雨ではあったが、会えるならなんてことはない。
約束のお店まで傘をさして10分ほど歩いていく。
途中で先にお店に入っている旨の連絡がきて、少し急ぎ足でお店へ向かう。

お店へ到着し、店内を覗くとすぐにこちらに気付いて手を振ってくれる先輩がいた。お店の人に待ち合わせです、と一言断ってから席に向かう。
「久しぶりだね!元気だった?もう私は何頼むか決めたよ〜」といつもの明るさで話しかけてくれる。私も早々に何を注文するか決め、店員さんを呼ぶ。

注文をし終えてすぐに『お元気でした?最近お店とか大丈夫ですか』と私から口を開いた。元々働いていた職場は個人営業の飲食店なのだが、夫婦で営んでいて料理は美味しいし質の高いお店ではあったものの、今年に入ってから色々とあった関係で夫婦とスタッフの間にどんどんと溝ができていってしまった。その話は割愛するが、私が辞めてからもその空気は全く変わっていないどころか寧ろ悪化してしまっているらしい。それも全部夫婦の自業自得ではあるのだが、今も働いている先輩も含めて残っているメンバーのことは心配だし、同情する。

とりあえず先輩は元気そうでなによりだった。一通り仕事の話し終えてから私のプライベートの話をしたり、彼氏の話もしたりしていると丁度携帯が鳴った。この時タイミングというものは確かに存在するのだなと改めて実感した。画面に彼氏の名前が表示されていたのだから。特にメッセージはなく、ただ画面のスクリーンショットだけが送られてきているようだった。通知欄だけでは中身が確認できずLINEを開いてみるとなんと就職内定の通知だった。
びっくりして無言のまま画面を先輩に差し出したら、先輩も最初は意味がわからず首を傾げながら文章に目を通していた。しかし意味を理解した瞬間にパァっと笑顔になって「え!合格?!内定?!!おめでとうじゃん!!!」と私よりも喜んでくれた。続けて彼氏の本名を見てこの漢字なんて読むの?えっと…〇〇?とちゃんと読めていたので私がそうですよとにっこり笑い返すと「へぇ!いい名前だね、漢字もかっこいいし!」と続けて褒められて、私のことじゃないのになんだか私のことのように照れ笑いしてしまった。
割と今じゃありきたりな名前ではあるけれど私も彼の名前は好きだし、漢字も好きだ。私は自分の名前が好きじゃないからこそ少し羨ましく思うくらい。

そんなこんなで2時間ほど話が盛り上がったところで今日はお開きに。
また近いうちに次は飲みに行こうねと約束を交わして解散した。


帰り道、一人で歩きながら、そっかあ…と改めて彼の合格通知を実感した。
素直に喜べないところもあったり、でもそんな気はしていたんだよな、と少しずつ受け入れていた。

まず素直におめでとう、という気持ち。
やっぱりすごいなと思った。
努力家で頑張り屋の君なら絶対大丈夫だと信じていたし、ちゃんと結果を出しているのだからこれ以上のことはない。

『かっこいいな…』思わず声が漏れた。


やっぱり私の彼はすごい。



私なんかには、もったいないひとだ。

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