キヅキ
これは彼と外を歩いていたときの話。
前に家族連れがいた。
その中の一番小さな子どもが不思議な歩き方をしていて、私にはその理由がわからず特に深く考える事はせずただ首を傾げていた。
横目で彼も同じようにその子のことを見ていたので、なんとなく「前の子、面白い歩き方をしているよね」と話しかけたら
『色がついたところだけ踏んで歩いているんだよ』とすぐに返事が返ってきた。
彼の言葉に驚いて地面をよく見てみると白と灰色の細長いタイルが一定のリズムで並んでいて、小さな子どもでないと一つ一つ踏み選ぶには難しい幅のものだった。
まったく予想もしていなかった応えによく気づいたねと感心していると『ほら、子供の頃ってよく白線しか踏んじゃいけないとか、そういうことしなかった?』と続けた。
すぐに納得した。子供なら誰でも通る道じゃないだろうか、それをしては親に怒られたり、転んでほら言ったでしょうと笑いながら叱られたり。
うーん、あまり私にはない記憶だったかもしれない。あはは。
そんなことより、その子のしていた行動の意味をすぐに見抜いた彼のことがすごく魅力的に思えた。周りをよく見ていて、洞察力のあるところや物事の捉え方が好きだ。大きなことじゃなくてそういう小さなことでいい。小さなことひとつひとつ、その積み重ねがいいんだ。
いつも私一人なら気づかないことに気づかさせてくれる大事な存在。
だから私は彼の隣を歩いたり、会話をする、そういう時間の全てが大好きであり、愛おしいと思う。