死んでも縋りつく
映画レビュー
『女優は泣かない』
監督・脚本:有働佳史
園田梨枝:蓮佛美沙子
瀬野咲:伊藤万理華
猿渡拓郎:上川周作
飯塚真希:三倉茉奈
園田勇治:吉田仁人
内田仁美:青木ラブ
園田枝美子:幸田尚子
橋本:福山翔太
猪木則男:緋田康人
田所公平:浜野謙太
女将:宮崎美子
園田康夫:升毅
鑑賞後真っ先に思ったことは「人間臭いって最高」ということだった。
エンタメを享受する側の人間からしてみれば、やはり芸能界というものは華やかな世界を想像してしまいがち。
しかし、この作品は芸能界・エンタメ業界のリアルに近づけて描かれた作品なのかもしれないと感じた。
正直はじめは梨枝に対して感情移入ができないでいた私。
スキャンダルで仕事を失い、そんな中舞い込んだ大きな仕事に対して何故そのような態度が取れるのだろうか。
咲の「自分が引き受けた仕事は最後までやるのがプロなんじゃないですか」という言葉には首を大きく縦に振った。
しかし次第に彼女は傲慢な態度をとっているが、素直になれていないだけ。自分に自信がないだけ。ということに気がつく。
そんな彼女の姿は自分自身と重なる部分もあり、いつしか心惹かれていく自分がいた。
物語が終盤に差し掛かった頃、ずっと険悪ムードを築いていた梨枝と咲が腹を割って話すシーンがある。
その時に放たれた梨枝の言葉
「才能がなくても、私にはこれしかないから。
この仕事が好きだから。」
この言葉は"好き"と"適性"の間で心が揺れた経験がある私の心に深く突き刺さった。
正直"好き"を仕事にすることはかなりリスクの高いことだと自負している。
"好き"は移ろいやすい感情のひとつだから、永遠に保証できるものでもないし、"好き"の反対に走ることもあるかもしれない。
しかし自分の弱さを認めながらも、絶対にその道を諦めずに邁進する彼女の人間臭さに心を打たれ、背中を押された。
そしてもう一つ、この作品の魅力を挙げるとするならば、やはり愛のある小さくて温かい伏線回収だろう。
メイク中にケータリングではなく、タッパーに入ったご飯を食べる梨枝。
それが昔父親が作ってくれた焼飯だったり、
ファミレスにいる梨枝を熱烈に応援しているファンの正体が父親だったり。
梨枝と父親が直接関わるシーンは、回想を除けば最後の病室のシーンしかない。
しかし喧嘩をし、家を出て、長い間会っていなくても、いつまでも親子は親子のままで、決して消えることのない、与え、与えられる優しい愛を感じ、思わず涙した。
最後に我が推しである吉田仁人くんが演じた勇治にも触れておきたい。(あ~オタク人格出る)
ちょっとねえ 君優しすぎるよ
自分のことは二の次で正反対な性格の姉たちに対してもしっかりと向き合おうとする彼が大人すぎてもっと甘えていいんだよ(誰)になった。
絶対もっといい男になります。私がもらいます。
総じてこの作品は価値観の衝突が幾度となく描かれていた。
誰かにとっての1番が他の誰かの1番とは限らないし、衝突の原因となることもあるけど、大事なことは頭ごなしに否定しないことなのだと考えさせられた。
こんなにも素敵な作品に出会わせてくれた仁人くん、そしてコロナの影響を受けながらもこの作品を完成させてくれた有働監督、キャストさん全員に感謝の気持ちでいっぱいです。
今日は焼飯食べようかな。