劇団青年座『シェアの法則』の感想メモ
2021年1月25日ソワレに中野ザ・ポケットで劇団青年団『シェアの法則』を。
夫婦が営むシェアハウスの物語、ただ妻は舞台に現れない。住人たちと周りの人々たちそれぞれの抱くものや関係性も少しずつ現れていくのだけれど、また仕掛けられた伏線もきちんと律儀に回収されていくのだけれど、終盤ちかくまで登場人物のそれぞれを俳優が個々にぶれなく端正に描かいている感じが続き、出来事の積み重なりにもそれぞれが抱く思いにもルーズさや混沌がない。でも、それゆえにエピソードが足し算で重なり、かけ算に膨らんで歩み出さない物足りなさを感じたりも。
ただ、そのことが、最後に家主である夫というか父とその妻の存在感や子の想いを歪みなく自然にまっすぐに描き出すための舞台の空気のバランスになっていて、ラストにはその想いの移ろいが埋もれることなく、歪むことなく、しなやかに観る側に渡されていたようにも感じた。また、この舞台の語り口だと、織り込まれたことというかキャラクターが背負う昨今の様々なことが、唐突さやあざとさやバイアスの掛かり方を感じさせず、まっすぐに心に残るのも良い。観る側が紡がれる出来事をリアリティとともに受け入れていくことができる。
観終わって、シェアハウス内部の日常の空気感、機微や淀みにもう少し染めてもらってもよいかなぁという感じがなきにしもあらずだったのだけれど、でも染まってしまうと逆に埋もれてしまいそうな人物の風貌や個性や場での存在感を俳優達が場にしなやかに編み込みつづけていたようにも思う。
まあ、カオスのなかから一条の光が訪れたりとか、一見ごった煮のような世界のフォーカスが定まって浮かび上がるなにかが観る側を捉えるみたいなテイストのお芝居にも心惹かれたりはするのだけれど、この舞台にはそういう手練とはひと味ちがう顛末の描き出しの削ぎ方やバランスがあって、夫というか父の想いの移ろいも終幕時にはぬくもりとともにしっかりと渡されて、なにかそうして訪れる想いの揺らぎがシンプルにも深くも新鮮にもぬくもりにも感じられた。べたつかず、突き放さず、良く研がれていたと思う。
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劇団青年座 第244回公演
『シェアの法則』
作 : 岩瀬晶子
演出 : 須藤黄英
出演 : 山本龍二 若林久弥 嶋田翔平
伊東潤 鹿野宗健 古谷陸
岩倉高子 佐野美幸 森脇由紀
黒崎照 尾身美詞