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声劇シナリオ『マリーの話』
※小説風に書かれたショート台本です。
※登場人物はマリーとロアの2人ですが、ロアのセリフ数が極端に少ないので1人用の朗読シナリオとしてご使用頂いても構いません。
※地の文(台詞以外)はマリーとしてお読みください。
※シナリオの内容を壊さなければ、演じる方の性別は不問です。
※シナリオのご使用は自由です。報告は任意ですが、教えて頂ければアーカイブを拝聴させて頂きます♪
※自作発言はご遠慮ください。
(上記の画像はAI生成を利用したものになります)
マ:マリー(♀︎)
ロ:ロア(♂︎)
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈本編┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
私はマリー。
かつて私には大切な男の子がいたわ。
名前はロア。
ロアは私を見るといつも駆け寄ってきてこう言うの。
いつか君を連れ出してあげるってね。
ロ「マリー!」
マ「あら、ロア。そんなに慌ててどうしたの?」
ロ「ほら! これ見て! 綺麗だろ?」
ロアが大切そうに握っていた手を開くと、そこにはいくつかの桜色をした貝殻がキラキラと光っていた。
マ「どうしたのこれ」
ロ「父さんと海に行った時に拾ったんだ!
マリーは海を見たことないだろ?
だから代わりにこれをあげる!」
マ「素敵!ありがとう。大切にするわ」
ロ「じゃあ僕、もう行かなきゃ。またねマリー!」
マ「ええ、また」
その晩、パパがやってきて私の目の前にある貝殻を捨ててしまった。
パパには私の言うことなんて聞いてもらえない。
ロアになんて言って謝ろう。
そればかりが胸に溢れて、窓から朝日が差し込むまで暗い気持ちでいっぱいだった。
そんなこととは露知らず、次の日もロアはやってきた。
ロ「やあマリー。昨日はよく眠れたかい?」
マ「ああロア…。あなたに謝らなければいけないことが あるの」
ロ「どうしたの? なんだか元気がなさそうだね。
あっ、ちょっと待ってて!」
マ「?」
ロアは呆然とする私の前から突然走り去って、しばらくすると一輪の花を持って戻ってきた。
ロ「ほら! 君には可愛い色がよく似合うよ」
薄紅色の花びらをしたそれを私に差し出し、ロアは私の隣の椅子に腰掛ける。
ロ「ここにないってことは、貝殻、捨てられちゃった
かな。僕が贈り物をするのをおじさんはよく思っ てないもんね…」
マ「…ごめんなさい」
ロ「でもいいんだ! 僕が君に色んなものを見せてあげ たいだけだから!明日も明後日も、新しい世界を
君に見せてあげたい。いつか君を連れ出すまで」
マ「ロア…」
ロ「この国は毎年戦争っていうひどいことが起こって
る。父さんも兄さんも兵隊で連れていかれたよ。
ここもいつ戦争になるか分からない。
だから僕が母さんと妹を守るんだ。
だけど、辛くなったらまたマリーに会いに来ていい
かな 」
マ「っ!当たり前じゃない!ロアが会いに来てくれる
のが私も嬉しい!」
ロ「ふふ…マリーが笑ってくれて良かった。
君といると心が安らぐんだ」
マ「私もよ、ロア」
それから1週間後の夜。
私たちの街は戦火に包まれた。
足が悪かったパパは逃げ遅れて、落ちてきた屋根の下敷きになってしまった。
マ「誰か、誰か助けて!」
轟音と悲鳴が行き交う街の片隅で、私の声なんて当然誰にも届かない。
最後にパパは私の髪を優しくなでて、これで自由だ、行きたい場所に行きなさいと言ってくれた。
その瞬間、呪縛が解けるように私の身体は動いた。
マ「ありがとう…パパ」
行きたい場所なんてひとつしかない。
私は軽くなった身体でロアの住む家を目指した。
どうか…どうか無事でいて!ロア!
目の前で導火線に火がついたかのように勢いよく炎が広がる。巻きこまれた人達が耳を塞ぎたくなるような叫び声をあげながら倒れていく。
地獄だった。
平和だった街が地獄と化していた。
マ「ロア! ロア! どこにいるの! ロア!」
ロ「マ…リー…?」
マ「!? ロア!」
微かに声が聞こえた気がした。
私は慌てて辺りを見回す。
崩れた建物の隙間に、いつもロアが着ている薄茶色の上着が見えた。
マ「ロア…なの?」
ロ「マリー…どうして…ここに…」
身体の左半分を建物に潰された状態で、ほとんど聞こえない小さな声で、ロアは私の名前を呼んだ。
マ「いや!ロア!しっかりして!誰か!誰か!」
意味のない叫びを、私は必死でまたあげる。
ロ「マリーが…無事で…良かった…」
マ「どうしてこんなことに…!お願い!
死なないでロア!」
ロ「…つか…」
マ「え?」
ロ「いつか…マリーに…綺麗な世界を…平和な世界を…
見せてあげたかった…」
マ「ロア…」
ロ「あのお店に…ずっと…1人で」
マ「…うん」
ロ「ずっと…寂しそうで…」
マ「うん」
ロ「約束…守れなくて…ごめん…」
マ「…嫌…」
ロ「最後に…君の姿を見れて…嬉しいよ…マリー…」
マ「嫌っ!」
ロ「どうか…このまま…無事…で…」
マ「ロア!」
声が聞こえなくなったロアを小さな手で必死に揺さぶる。
どんなに泣き叫んでも、私の瞳に涙はあふれない。
見開いた青い瞳と、ゆるく巻かれたブロンドの髪。
ロアの傍らに佇む固い肌の人形は、大切な人の命が静かに消えていくのをただ眺めることしか出来なかった。
そしてその日、地図からひとつの街が消えた。
ロ「(回想)
明日も明後日も、新しい世界を君に見せてあげた
い。いつか君を連れ出すまで」
私はマリー。
かつて私には大切な男の子がいたわ。
それを奪った人間達を、私は絶対に許さない。
私は争いを起こす者に死をもたらす、呪いの人形。
私はずっと、あなたの望んだ世界を守るために生きるわ、ロア。
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