朗読シナリオ【消えるひと】
※1人読み用のシナリオです。
配信・YouTube等でご自由にお使い頂けます。
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以下本編になります⬇
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誰かが泣けば、ひとつ消えた。
誰かが傷つけば、またひとつ消えた。
この世に負の感情が増えればひとつ、僕の身体は消えていく。
消えたぶんだけ誰かの痛みが癒される。
でもそれが僕の喜び。
僕の存在が消えることで、
誰かが幸せになるのなら。
だから僕は自分で自分を消したりしない。
僕がいなくなったら、癒されない痛みが増えるから。
僕の痛みは消えないけれど、誰かが笑顔になるならそれでいい。
誰かが悲しむ顔は、自分がいなくなることよりずっと苦しいから。
全ての身体が消えるまで、僕に生まれた痛みはずっと抱えて生きていく。
誰かの顔が輝く時、僕は幸せを感じるから。
…そう、僕は僕なんてどうでもいい。
けれど、もう残された時間は少ない。
僕の中の消せるものがほとんど無くなってしまったから。
僕が消えたら、この多くの悲しみを引き継ぐ者はいるのだろうか。
生まれ変わればもう一度、この役目を担うことが出来るだろうか。
それなら早く、僕の身体が全てなくなればいいのに。
そうすればまた最初から。
今より多くの痛みを引き受けることが出来る。
僕はその日を心から待ち望んだ。
ひとつひとつ消えていく身体に…痛みが増えることに…幸せを感じながら。
そしてやっと、最後の時が訪れる。
もう僕の役目が終わってしまう。
でもこれでまたひとつ、誰かの心が癒される。
悔いはなかったはずだった。
未練なんて感じるはずがなかった。
だけど、君が現れてしまった。
僕の身体が消える度に悲しそうに僕を見ていた君が。
どうしても僕が癒せなかったただ1人の君が。
霞んでいく視界には君の顔。
涙を浮かべて泣き叫ぶ君の顔。
「消えないで」
ああ、そうか。
僕が消えたら君の悲しみが増えるのか。
僕よりも僕を大切にしてくれた人。
僕が誰よりも救ってあげたかった人。
それなら次は、君の悲しみを癒すために生まれよう。
君だけの悲しみを癒すために。
君だけを笑顔にするために。
そうして僕はこの世界から消えた。
皆さんを巻き込んで一緒に幸せになる!そんなクリエイターを目指しています(´˘`*)