グローバルビジネス~海外戦略
2020年12月9日(水)のMBA Essentialsのレポートです。
今回は、「グローバルビジネス~海外戦略」(平野正雄先生)です。
平野先生については下記を参照ください。
https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6054
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E9%87%8E%E6%AD%A3%E9%9B%84
今回は下記の順で説明していきます。
・グローバル戦略を構想するためのCAGE/AAAフレームワーク
・コロナ後の世界展望(マクロ)
■グローバル戦略を構想するためのCAGE/AAAフレームワーク
グローバル戦略を構想する上で使える2つのフレームワークを紹介します。
◎CAGEフレームワーク
こちらは、自国から海外に進出する際に、距離(差異)を明確にするためのフレームワークです。
距離というと、物理的距離を思い浮かべることが多いですが、それだけではなく、さまざまな距離が存在するので、それを考慮に入れて戦略を立てる必要がある、ということです。
・Cultural distance(文化的距離)
こちらは、使用する言語や宗教、社会規範、ライフスタイルなどです。その他に、取引慣行や歴史的/政治的関係性なども含まれます。
・Administrative distance(制度的距離)
こちらは、法律や規制などに関することや、政治的安定性などが含まれます。
・Geographic distance(物理的距離)
こちらは、様々なインフラの整備の度合いや、敷地面積(移動距離)や、気候などが含まれます。
・Economic distance(経済的距離)
こちらは、市場規模や所得水準、為替・インフレや金融システムなどが含まれます。
下記にも記載がありますので、こちらも参考にしてみてください。
https://www.kikakulabo.com/tpl-cage/
https://www.sbbit.jp/article/cont1/22166
ちょっと難しいですが、PEST分析と同じように、出来るだけ漏れなく視点を洗い出すためのフレームワークだと思えば理解がしやすいと思います。
https://www.leadplus.net/blog/pest-analysis.html
このように、CAGEフレームワークを使って距離を検討することで、他国に進出する際の検討項目の抜け漏れを減らすことができます。
また、距離(差異)に関しては、それをチャンス(活用)と捉えるか、チャレンジ(障害)を捉えるか、の二通りがあり、活用するのであればそれを最大限に活かし、障害があるのであれば、それを取り除く施策を考えていく、ということになります。
◎AAAフレームワーク
こちらは、他国に進出していく際に、どういう戦略をとっていくのか、を考えるためのフレームワークです。
・Adaptation(現地化・分権化)
こちらは、基本的に他国に進出する際に積極的にローカル化を進める戦略です。典型的には分権分散型組織となります。
・Aggregation(標準化・集権化)
こちらは、基本的に地域を束ねて、製品や業務の標準化・共通化を追求する戦略です。典型的には集権型組織となります。
・Arbitrage(差異化・専門化)
こちらは、地域間の差異を活用した事業展開・ビジネスモデルを用いる戦略です。典型的にはコスト差を利用した水平分業型の事業展開となります。
下記の記事にも記載がありますので、こちらも参考にしてみてください。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/22166?page=2
https://toyokeizai.net/articles/-/57433?page=2
基本的に、AdaptationとAggregationはトレードオフの関係にあり、CAGEフレームワークで分析した距離(差異)に着目して、どの程度のAdaptation/Aggregationを進める必要があるのか、もしくは、国ごとのローカル化ではなく、地域でのローカル化を進めるのか、といったことを考える必要があります。
また、講義では、COE(Center of Excellence)をグローバル組織内のどこに位置付け、運営すべきか、という話もありました。
Center of Excellenceとは、
「固有の技術的、業務的、人的優位性を開発・再生産・流通するためのリーダーシップを発揮する共有組織やリーダーである」
のように定義されます。
下記の記事にも記載がありますので、こちらも参考にしてみてください。
https://jinjibu.jp/keyword/detl/1209/
このことから、より本質的に重要なことは
「グローバル市場で自社の優位性を担保する確固たるIP(テクノロジー、ブランド、ビジネスモデル、人材ほか)を確立することである」
ということであり、この優位性を用いてグローバルビジネスを行っていく、ということになります。
そして、優位性を最大限発揮するために、COEをどこに位置付けていくのかを考えていくことが重要、ということです。
例えば、本社で集約された開発に優位性があり、それをCOEと位置付けられるにも関わらず、ローカルの販売組織が開発にも強い影響力を持つことになると、商品開発が最大市場向けに偏ってしまう、といった状況が発生してしまいます。そうならないように、全体戦略から考えてCOEを最大限活かせるような組織やサプライチェーンを組む必要があります。
■コロナ後の世界展望(マクロ)
◎アフターコロナ
コロナは危機でもありましたが、様々なことに気付ける機会でもありました。
例えば、下記のようなことです。
・リモートでもやってみたらできた
・現地にやらせてみたらできた
・デジタル化が遅れていることに気づいた
また、こういったことがDXやSDGsなどに取り組んでみよう、という動きも増えており、触媒としての役割もあった、とも言えます。
◎アフターデジタル
コロナにより、各組織のDXが進んだ結果、下記のようなマインドフレームの転換が必要になってきています。
・ビフォーデジタル
リアルの一部をデジタルにしていく
・アフターデジタル
デジタルの世界の中にリアルを埋め込む
例えば、購買においては、スマホで買っても店舗で買っても同じなので、その環境下でリアルをどこに配置するのか?を考えることが問われています。
デジタルによりゲームのルールが塗り替えられる中、それに対応できないと脱落してしまう、ということです。
◎アフターグローバル
グローバル化は加速しています。情報・物流の移動は増えていますし、デジタルツールにより人が移動しなくてもよくなってきています。これはすなわち、距離を克服してきている、ということです。
また、世界の通商地図(各国の一番の貿易国で国を塗る)を見てみると、北米とヨーロッパを除くほとんどの地域で中国一色となっています。これは中国の影響力が世界的にかなり増していることを表しています(ちなみに、中国の最大の貿易国はアメリカです)。
また、サプライチェーン見直しの動きも進んでいます。リショアリングといって、今まで新興国でやっていたものが、自動化できるようになって、わざわざ新興国でやる必要がなくなり、自国に戻すような動きがあったり、チャイナプラスワンといって、中国の人件費高騰や政治的リスクを回避するために、中国とは別の国に工場などを構える動きです。
チャイナプラスワンに関しては、下記の記事も参照ください。
https://www.fujitsu.com/jp/group/fjm/mikata/useful/know/topics/020.html
◎アフターキャピタリズム
株主だけではなく、すべてのステークホルダーに目配りをしたり、社会的・長期的視点から経営することが求められてきています。また、SDGsに代表されるような社会的使命に対する注目も高まっています。
また、SDGs/ESG経営を後押ししているのはマーケットであり、ESG経営をやらない企業には投資しない、という投資家も多くなってきており、SDGs/ESGをビジネスに取り入れていくことが求められています。
◎アフタートランプ?
トランプとは直接関係ないのですが、世界最先進国のアメリカで、なぜあんなに選挙の結果が出るのが遅いのか?という話がありました。デジタル化が進んでいる他国では投票締め切り直後に結果が出る、というところもあるはずです。
また、変革を一気に進める期間(=ワクチンが普及して普通に戻るまで)というのは意外と短いため、その機会を逃さないことが重要、とのことでした。
Don't Waste a Crisis ! (危機を無駄にするな!)
■まとめ
今回の内容はかなり難しかったと思うのですが、グローバルビジネスを考える上で重要なことが多く含まれていたと思います。
個人的にも考えたことがないことが多く、まとめも非常に難しく、難解になってしまったかもしれません。
ただ、調べながら書いていくうちに、理解が進み、大きな学びがありました。
平野先生、ありがとうございました。
これで、MBA Essentials 2020の講義は終了です。
今まで読んでいただきありがとうございました。