バリューチェーンとビジネスモデル
2020年11月4日(水)のMBA Essentialsのレポートです。
今回は、菅野 寛先生による、
「バリューチェーンとビジネスモデル」
です。
菅野先生については下記を参照ください。
https://www.waseda.jp/fcom/wbs/faculty-jp/6033
今回の講義では、下記の順番で講義が進んでいきました。
- バリューチェーンとは
- バリューチェーンの目の付け所
- ビジネスモデル構築の手順
一つ一つ説明してきます。
〇 バリューチェーンとは
バリューチェーン(価値連鎖)とは、企業の活動は、一つの活動のみで成り立っているのではなくて、複数の活動が連鎖的に繋がって成り立っています。
例えば、
R&D -> 生産 -> 流通 -> アフターサービス
というような感じです。このように、価値を生み出す活動が連鎖して、最終的に顧客に価値が届けられる、ということになります。
また、それぞれの活動を全部自社でやる場合もあれば、一部を他社に任せて行なう、ということもあります。
例えば、自動車産業では、
原料生産 -> 部品生産 -> 組み立て -> 流通販売 -> アフターサービス -> 中古車販売
とバリューチェーンがありますが、自動車メーカーがやっているのは、組み立て・流通販売・アフターサービスの一部くらいで、その他は別の企業が担っています。
ただ、このバリューチェーンの鎖がDXで緩んできています。直接モノを扱っていた時代には、バリューチェーンの各要素は代替が簡単には利きにくかったのですが、デジタルの時代になってくると、バリューチェーンの各要素が容易に代替可能になってきます。その結果、バリューチェーンのある部分に関しては、他社に任せたり、そこをフレキシブルに他の他社に変えたり、ということが出来るようになってきます。
そうしていくうちに、バリューチェーンのある要素は、一つの企業が独占的に担うケースが出てきて、それをプラットフォーマーと呼びます。顧客に価値を届けるには、そのプラットフォームを使わざるを得ない、という状況です。(こうなっていくと、プラットフォーマーが力を持つようになってきます)
こういった形で、バリューチェーンも時代と共に変遷を遂げてきています。
なお、バリューチェーンの書き方ですが、Who(誰が)ではなく、What(機能)で書くことが重要です。顧客に価値を届けるに当たってどんな機能が必要か、ということです。
〇 バリューチェーンの目の付け所
バリューチェーンの目の付け所としては、自社はバリューチェーンのどこにいるのか?また、なぜそこにいるのか?を考えてみることです。
そして、
- バリューチェーンの上のポジションを変えるべきか?
- バリューチェーンの構造自体を変えるべきか?どう変えるべきか?
ということを考えていくことが重要です。もちろん、バリューチェーンのポジションを転換したり、構造を変える時には、そちらに行って勝てるのか、とうことを考えることが重要です。
また、下記でも述べますが、顧客にどういった価値を提供していくのか、を考える上で、自社でバリューチェーンのどこを押さえるべきか?を考えることも非常に重要です。
〇 ビジネスモデル構築の手順
ビジネスモデル構築の手順は、下記の5段階となります。
1. バリュープロポジション(顧客に対する提供価値)を考える
最初に考えるべきは顧客に対する提供価値です。当たり前のように思われるとも思うのですが、なぜこれが重要なのかというと、顧客に対する提供価値が何かによって、バリューチェーンのどこを自社でやるべきか、ということが変わってくるからです。
例えば、LOUIS VUITTONが提供している顧客価値は何か?を考えてみます。これは、単におしゃれで高品質なバッグだけを売っているだけではありません。実は、LOUIS VUITTONを購入するお客様は、お店で購入するプロセス(高級感のある雰囲気、店員のおもてなし、店員との会話など)に価値を感じています。なので、ここに価値を感じているお客様は、中古品などを購入することはありません。なぜなら、それでは購入プロセスに価値を感じられないからです。
そして、お店で購入するプロセスが提供価値、ということになるのであれば、販売は自社でやるべき、となります。
2. バリューチェーンを考える
次に、バリューチェーンを考えます。
- 顧客にその価値を提供するにはどんな機能が必要か?
- 各機能を誰が担うのか
ということを考えていきます。
3. レベニューモデルを考える(1)
次に、顧客は誰にどんな名目でいくら払ってくれるのか、ということを考えます。要は、お金を払ってくれる人は、バリューチェーン上の誰にお金を払ってくれるのか、ということです。
4. レベニューモデルを考える(2)
次に、誰にどうやっていくら分けるのか、というレベニュー配分の仕組みを考えます。要は、バリューチェーンの各機能を担当している人に誰が幾らずつ支払うのか、ということです。
5. 経済性を考える
最後に、各プレイヤーの経済性が成立するかどうかを考えます。経済性が成り立たないと、バリューチェーンがそのうち成り立たなくなるからです。
〇 まとめ
バリューチェーンをベースにしてビジネスモデルを考えるのは非常に考えやすく、理にかなっていると感じました。
また、セブン銀行など、バリューチェーンの一部のみを狙ってくる企業も出てきたりしているので、ビジネスモデルも多様化していると感じます。
菅野先生、色々と示唆に富んだ内容をありがとうございました。
次回は2020年11月18日(水)「サイエンス・ビジネスとイノベーション」(牧 兼充先生)です。
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