正夢
春になるといつも夢で逢う彼女。
綺麗な庭園のような場所で噴水に腰掛けている。
話しているが内容が聞こえずに目が覚めてしまう。
僕はリョウ、高校2年生。
朝起きたら顔を洗ってから制服に袖を通す。
犬のフレッドに挨拶をして餌をあげる。
お母さんに挨拶した後、朝ごはんを食べる。
歯磨きをして、髪の毛を整えたら
「いってきます!」
気合を入れて家を出る。
春は好きな季節だ。
桜が満開で風が吹くと花びらが舞うのが綺麗だし、新しいことが始まるのもワクワクする。
早めに出たこともあって、のんびり歩く。
周りには誰も人が居ない。
「早起きが得意だと余裕を持って行動出来るからラッキー♪」
独り言が出ちゃうくらいテンションが上がっている。
強い風が吹いて目を閉じる。
学校についてクラス表を見ると見慣れた名前がチラホラあって安心した。
クラスに到着してしばらくすると去年同じクラスだったメンバーと再会し、始業式の時間まで楽しく過ごした。
始業式後は帰宅の時間となり、友人に声をかけた。
「ごめん、これから部活紹介だわ!またね!」友人はそれぞれ部活に所属しており、1年生の部活紹介のための準備があるそうだ。
残念だけど、一人で帰ることにした。
帰宅部なので、のんびり校門へ向かっているとチラシを渡された。
「良かったら見に来てください!」
どうやら1年生と間違えられたようで、美術部の新入生向けの展示の案内のチラシをもらった。暇だから見に行こうと思い、美術室へと向かった。
美術室には人がおらず、作品だけが展示されていた。
彫刻のデッサンや自画像、イラスト風な絵など色んなジャンルの作品があった。
その中でも1つ印象的な作品を見つけた。
「夢で逢えたら」というタイトルで庭園に男女が居るという作品で、夢で見た景色と全く一緒だった。
作者はシズクという同じ学年の人だということが分かった。
その場には誰も居なかったので、また今度会える機会があれば話せればいいなと思い、家に帰った。
家に帰ると、次の日の準備をしたり愛犬のフレッドと遊んで過ごすと、すぐ夜になって眠りについた。
夢の中ではまた庭園にいた。
いつも一緒にいる女の子と2人で楽しそうに会話をしているが、会話は聞こえない。
明日こそはシズクという子に会えたら良いなと思った。
朝になり、いつも通り準備を整えて学校に向かった。
部活勧誘で色んな部活の部員がチラシ配りを懸命にしている。
美術部のシズクも勧誘をしているのではないか?
そう思い、周りを見渡すと女子2人がチラシ配りをしていた。
顔も見た事がなかったし、クラスも見忘れてしまったので失敗した。会話したこともないのにシズクさんですか?と聞くのもきっと怖がられるだろうから、また今日の放課後にクラスを確認しに行くことにした。
放課後までとても長い時間が経過したように感じた。
急いで帰る準備をし、引き続き部活勧誘のため友人たちとはまた別行動となり、1人で美術室へと向かった。
昨日と同様に誰もおらず、シズクさんのクラスを確認することに必死だった。
2年A組と書かれていた。隣のクラスだということが分かった。
「あの!見に来て下さり、ありがとうございます。この作品がどうかしましたか?」
10分ぐらいこの作品の前に立っていたから、怪しまれてしまったようだ。
「いえ、とても素敵な作品でどなたが描いたかどうしても知りたくて。」
「えっと、私が描きました。」
「え?!あなたがシズクさん?」
まさかのシズクさんとエンカウントを果たしてしまい、驚きと嬉しさで大声を出してしまった。
「はい、そうです。」
「あの、この作品の景色、夢で何度も見たことがあって。あまりにも同じ景色だったので、夢の中の相手はシズクさんじゃないかと思ったんです。」
「そうなんですか!私も実は何度も同じ夢を見ていて素敵な景色だったので、景色を思い出しながら描いたんです。」
「いつも会話の内容は分からないし、男性の顔もぼやけてたんです。」
「僕も同じでした!でも実在してるなら絶対にいつか会いたいって思ってて、まさか会えると思ってなかったので感動してます!」
「まずお名前を聞いてもいいですか?時間が空いてれば話しませんか。」
「はい!もちろんです!2年B組のリョウっていいます。」
お互いに正夢になったことに驚きながら、夢の時の話をしたり、お互いの事を話した。
話しているうちに発覚したのは、保育園が一緒の時期が数年間あった事だ。
お互い小さかったこともあり、記憶には残っていなかったようだが3月に彼女が引越ししてからは今まで会うことがなかった。
小さい頃から春になると同じ夢を見ていたのは、昔の記憶を思い出していたのかもしれないねという話をした。
春風がそよそよと吹き、心地よい空気が流れ、新たな出会いに感謝している。
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