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橈骨遠位端骨折後に頻発する長母指伸筋腱断裂
橈骨遠位端骨折は転倒による代表的な骨折のひとつですが、その合併症として長母指伸筋腱断裂(EPL断裂)があります。今日はEPL断裂についてお話ししていきます。
参考文献:
橈骨遠位端骨折に対する長母指伸筋腱断裂の検討,堀之内駿ら,整形外科と災害外科67,475~478,2018
骨折後の、発生頻度としては、0.8〜4.9%で、
受傷後数週間以内に転位の少ない骨折に多く発症すると言われています
転位が多い骨折より少ない骨折に多く発症するのは意外ではありますが、なぜでしょうか?
理由としては、
転位が少ない場合、骨折による疼痛や手関節の可動時痛が少ないため、短い外固定期間で早期に手指または手関節の可動域訓練を始めることが可能になる。このことが原因となり、受傷時の腱損傷や機械的摩擦、血流不全などの要因と合わさってEPL断裂をきたす可能性が考えられる (近藤,1995)
といったことが有力かと思います。
発生機序としては
・背側皮質のsharp edge
・リスター結節の不整 (リスター結節:橈骨遠位端背側にある骨隆起)
・EPL grooveの狭小化
があげられており、
簡単に説明すると、橈骨骨折転位による尖った部分の形成によって、摩擦を受けたり、長母指伸筋腱が通る溝が狭くなることで阻血が起きるということになります。
EPL断裂を避けるためには、早期発見が重要になります。そこで使える指標を紹介します。
EPL at-risk sign
リスター結節のわずかな骨不整
Ⅱ,Ⅲ区画遠位部の限局性腫脹
リスター結節の限局した圧痛
母指運動時痛
EPL腱滑動時のcrepitation(捻髪音),snapping(引っ掛かり)の視・触診
まずこれらの症状を早期発見し、対策を講じることが重要です。
対策としては
まず、固定期間の延長、thumb spica追加(母指の固定)の検討が必要です。
そして理学療法士としては、とにかく痛みを伴う運動は避ける必要があるので、
・患者指導をしっかり行うこと(無理して使わせないように)
・過度のROM訓練をやらないこと
が当たり前ではありますが、重要かと思います。
また個人的な見解としては
長母指伸筋腱ではなく筋腹でのマッサージは積極的に実施する
筋伸張位での収縮は負荷がかかるため、まず背屈可動性を改善する
こういったことを意識してアプローチしたりしています。
以上、EPL断裂に関してでした。
何か良いアプローチ方法など見解があればコメントください。
みていただきありがとうございました。