頭部外傷を再確認する
目の前で強烈な頭部外傷が起きたらどうしますか?
すぐにDrがかけつけられない状況だったら何をしますか?
スポーツ選手・患者様・利用者様、誰もが起こりうる重大アクシデントである脳しんとう・頭部外傷をまとめていこうと思います。
何度確認し、経験しても受傷を目の当たりにすると、ほぼほぼ焦ります。
概要やメカニズム、直後の対応方法、危険な徴候など確認していきますので最後まで読んでいただけると嬉しいです。
関連する疾患名の整理
はじめに、複数ある頭部外傷関連の疾患名を簡単に確認していこうと思います。
頭部外傷
衝撃や衝突によって生じる頭部のケガ全般を指す総称
頭部外傷というおおきな枠組みの中に脳しんとうや脳挫傷などが含まれています。脳や脊髄を損傷している可能性があるため、慎重に対応しなければなりません。
脳しんとう
頭部への直接的または間接的な外力によって脳が急激に揺さぶられ、脳細胞が一時的に機能停止、または一部損傷を受けることで生じる脳機能障害です。
頭痛や嘔吐が主症状であり、意識消失を伴うこともあります。
また後述しますが、短期間に脳しんとうを繰り返してしまうことで命に関わるような疾患を引き起こす可能性があります。
脳挫傷
頭部への強い衝撃が原因で脳に断裂や浮腫、少出血などの損傷が生じ、運動麻痺、嘔吐、意識障害などの症状がみられます。
直接衝撃があった部位と反対側に疼痛や損傷がみられることが多々ありますが、これは脳が反対側の頭蓋にぶつかったから、というわけではありません。衝撃部位から頭部の左右へ振動が伝わっていき、後方でその振動が出会うことで頭部への2つ目の衝撃となり、損傷が生じると言われています。
脳挫滅・DAI・SISなど
脳挫滅
衝撃により頭蓋を骨折し、直接脳を損傷した状態です。
DAI(びまん性軸索損傷)
頭部に回転性の外力が加わることで、脳の神経突起や軸索が広範囲に損傷し機能を失う状態です。高度な意識障害や、治療後も記憶障害・認知障害などの後遺症が残ります。
SIS(セカンドインパクト症候群)
セカンドインパクト症候群といいます。脳しんとうあるいはそれに準ずる軽症の頭部外傷を受け、数日から数週間後に二回目の頭部外傷を負い、致命的な脳腫脹をきたすものを言います。
死亡率が30~50%と高く、生存しても何らかの後遺症が残ることが多いようです。
脳の周囲は硬膜に覆われているため、大きく腫脹してしまうと行き場がなくなり、圧迫状態(脳ヘルニア)となってしまいます。
アクシデント直後の対応・評価
フローチャート
実際の対応時の流れを簡単にフローチャートで確認していきます。
CRT5
CRT5は2017年から世界で用いられている脳しんとう認識ツールです。
SCAT5というスケールもあり、そちらはより詳細に評価を行えます。
アクシデント後の動き・伝える情報
アクシデントから数十分経過すると、救急隊へ引き継ぐか、経過観察のどちらかになると思います。その際の注意点を確認します。
対象者から目を離さない
頭部外傷後はいつ急変が起きてもおかしくありません。特に24-48時間は急変が起こりやすいので、受傷者が一人にならないようにしてください。
また以下のような症状が1つでもあれば直ちに病院を受診してください。
救急隊への引き継ぎ
救急隊やDrへの引き継ぎの際に以下の情報がまとまっているとスムーズに受け渡しが行なえます。
少し余裕が出てきたら受け渡しの前にまとめておけると良いかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
頭部外傷は頻出するアクシデントではないですが、だからこそ定期的な知識の確認が必要だと思っています。
こういった場面で少しでも落ち着いて動ける理学療法士になりたいです。
また次の記事も読んでいただけると嬉しいです。
参考文献
永廣 信治.他, スポーツ頭部外傷における 脳神経外科医の対応. Official Journal of The Japan Society of Neurotraumatology.神経外傷.2013;vol36.p119-128
青村 茂.頭部損傷メカニズムの解明-頭を強打すると何が起きるのか-.バイオメカニズム学会誌,2012:Vol. 36, No. 4:p212-128
今井 一博.他, 競技者に対するスポーツ医学の役割 ~競技者の健康を生涯守るために~. 体力科学,2017 第66巻 第5号:p323-333