ロシアのフェイクアカウントについて その56:JBpress/矢野義昭
【概要】
元陸上自衛官で最終階級は陸将補。学位は博士(安全保障)だそうです。「本格攻勢に出始めたロシア軍と崩壊寸前のウクライナ軍」というタイトルで理解不能な記事を書いています。2022年12月21日にJBpressに掲載されました。
因みにですが、矢野義昭が参政党の松田学と対談している動画がYouTubeに上がっています。こちらも酷いです。
また、矢野義昭はチャンネル桜という保守系の動画制作会社の番組によく出演しています。馬淵睦夫が頻繁に出演している動画です。
追加でもう一本noteを書いています。こちら。
【本文】
①今回反論する記事はこちらです。
<矢野氏の主張①>
ここで私がマイダンクーデターと呼びマイダン革命と言わないのは、選挙で合法的に選ばれた親露派のヤヌコーヴィッチ大統領を武力により放逐した「民主革命」の名を騙った実質的なクーデターであったからである。
<私の反論①>
クーデターではありません。軍隊は動いていませんし、憲法停止という事態にも至っていません。「ヤヌコーヴィチ大統領が逃亡して職務放棄により失職」という展開を辿っています。
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<矢野氏の主張②>
2013年12月に起きたユーロマイダン広場でのデモ隊の民衆と当時のヤヌコーヴィッチ政権側の警備部隊の間に、極右武装勢力が銃弾を撃ち込み、デモ隊に潜入した過激派がデモ隊を暴徒化させ、その後親露派のヤヌコーヴィッチ大統領をロシアに逃亡させるに至った経過も判明している。
<私の反論②>
機動隊が市民に向けて発砲している映像が大量に残っています。
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<矢野氏の主張③>
同クーデターを企画し支援したのは、当時のビクトリア・ヌーランド米国務次官補などであり、彼女が現地に入りデモ隊を激励しているビデオも、クーデター後の新政権の指導者人事を指名しているウクライナ駐在米大使との電話内容も確認されている。
<私の反論③>
マイダン革命。市民たちは発砲する機動隊に立ち向かい、自由・民主主義・独立を勝ち取りました。尊厳の革命とも呼ばれています。香港の時代革命もマイダン革命の影響を受けています。
「ビクトリア・ヌーランド米国務次官補がマイダン革命の黒幕だ。クッキーを配りながらデモ隊を激励している動画が残っている」という幼稚な主張は、ロシアのプロパガンダです。「クッキー配ったから革命が起きたわけじゃない」とは、小学生でもわかる話です。
「ヌーランドのクッキー」については、日本では馬淵睦夫やキャノングローバル戦略研究所の小手川大助が言及しています。小手川がどういうつもりでこの記事を書いたのか分かりませんが、ロシアの情報戦に利用されています。この状況を示すnoteはこちら。
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<矢野氏の主張④>
宇軍は今年9月から10月にヘルソン西部やバフムート周辺で反復攻勢を行ってきた。しかし、その攻勢は十分な対空・対地火力の掩護も戦車その他の装甲車両の支援もなく、歩兵主体で行われ、大規模な損害を出したと思われる。
<私の反論④>
矢野義昭の主張はウクライナ側の消耗を印象付けるプロパガンダとみてよいでしょう。ロシアのプロパガンディストは、「経済制裁は効いていない」とか「ウクライナは負けている」といったデマを流します。ウクライナに対する国際社会の支援が途切れることを狙っています。
2022年12月下旬時点のウクライナ軍の消耗と残存戦力については、私は信頼できる情報を持っていません。ウクライナ軍の公式発表であっても、正確とは限らないためです。9月以降にハルキウとヘルソンで反撃を成功させたのは事実です。
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<矢野氏の主張⑤>
特にヘルソン西岸での攻勢は、航空掩護もないまま、隠れる場もない平坦開豁地で強行されたため、大規模な損害を招いたとみられている。露軍は意図的に消耗戦略の一環として後退行動とその後の遅滞行動をヘルソンとハリコフで行ったとみられる。計画的な後退行動をとったことは、捕虜、遺棄死体、遺棄兵器の少なさから裏付けられる。敗退したのであれば、大量の捕虜などが出るはずである。
<私の反論⑤>
これもプロパガンダとみてよいと思います。「効いていない」と強がっているだけです。
2022年9月にウクライナ軍が実施したハリコフの反撃では、ロシア軍の遺棄兵器がTweetされていました。
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<矢野氏の主張⑥>
ダグラス・マグレガー退役米陸軍大佐は、宇軍の12月初旬の残存戦力は、ポーランド軍、米英の傭兵などを除き、約19.4万人と見積もっている。
<私の反論⑥>
「買収した著名人にロシアに都合の良いことを喋らせてからSNSで拡散させる」というやり方は、ロシアの情報戦の一つのスタイルでです。
以下の著名人は不自然にロシアに都合の良い情報を発信しています。
・馬渕睦夫(元駐ウクライナ大使)
・ジャック・ボー(スイス出身の元将校)
・パトリック・ランカスター(親露派ジャーナリスト)
・リチャード ブラック(元米国軍人/元上院議員)
・スコット・リッター(元米国情報将校)
・ダグラス・マクレガー(米共和党系軍事専門家/米陸軍退役大佐)
和訳して拡散させるアカウントとしては、以下があります。
・マヨ
・MK
・タマホイ
・Акичка
以下は、ロシアのプロパガンダを垂れ流す報道機関であるスプートニクがダグラス・マクレガーの主張を紹介している例です。記事はこちら。
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<矢野氏の主張⑦>
現在前線で主力となり戦っているのは、約4万人のポーランド軍、3万人のルーマニア軍など計約9万人のNATO軍であり、彼らは宇軍の戦闘服で戦闘に参加している。
<私の反論⑦>
2022年12月時点でNATOは参戦を表明していません。ポーランド人やルーマニア人の義勇兵が戦闘に参加しているとの報道はあります。
軍事ライターのJSF氏は「根拠の無い陰謀論」と指摘しています。
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<矢野氏の主張⑧>
このような一般国民の生活基盤を破壊するような意図的な全面破壊は、第2次大戦の都市に対する無差別爆撃、コソボ紛争におけるカーボンフィラメントによる電力系統破壊なども行われてきた。コソボ戦争では、NATO空軍の攻撃によりセルビアの総電力の80%が遮断された。(Washington Post, May 25, 2019)非人道的な行為ではあるが、戦時にはよくみられる戦法でもある。
<私の反論⑧>
民間人を標的とした攻撃は、戦時国際法で禁止されています。また、女性や子供に対して勇ましく攻撃を加え、ウクライナ軍の反撃を受けて敗退するロシア軍の振る舞いは、卑怯で醜悪です。
コソボを持ち出すのは、ロシアのプロパガンダです。別の話を持ち出して話話を逸らそうとするやり方は、ロシアの定番です。
【JSF氏による指摘】
<概要>
軍事ライターのJSF氏は矢野義昭について「予測を外す」と指摘しています。
<8月の大予言>
<9月の大予言>
<10月の大予言>
<2023年07月の戦況解説>
①矢野義昭は「戦況はウクライナに絶望的に不利である」とのプロパガンダを垂れ流しています。ロシアの侵略行為に協力しています。
【まとめ】
JBpressに掲載された記事は戦況解説の体裁をとったプロパガンダです。根拠の無い情報を混ぜ、いい加減な言葉遣いでミスリードを誘い、関係のない話を交えて印象操作を狙っています。全体として、ウクライナが劣勢であると印象付けようとしています。停戦を勧める国際世論を盛り上げたいのでしょう。
情報源としてはロシア側の発信する情報のみを採用しているようです。裏付けをとる習慣がないようですね。偏った情報を取り込んで、それを検証せずに発信しています。結果として、ロシア側が発信する願望/空想をそのまま語っています。
矢野義昭はなぜこういう記事を書くようになったのでしょうね。ロシアのプロパガンダに引っかかって信じ込んだのか、それとも何等かの理由でプロパガンダに協力しているのか。過去に自衛隊OBがロシアのスパイに籠絡されていた事例がありました。矢野義昭はどうでしょうね。
【補足1】
チャンネル桜の創始者の一人である田形竹尾はWWII時の有名な戦闘機パイロットです。特攻隊の教官でもあったそうです。
【補足2】
矢野義昭がデマをツイートしている例を指摘している人がいたので、紹介します。相変わらず、根拠を示さずに好き勝手喋っています。馬淵睦夫に少し似ていますね。
【補足3:Qアノン】
①矢野義昭はQアノンに引っかかっているようです。「DS」というキーワードで検索してみました。
②ビル・ゲイツを敵視しています。