見出し画像

東京高検検事長の定年延長

 こんにちは。今日も今日とて気がついたことを文章化していきます。

 事案の概要

 さて、今朝の新聞に表題に関する記事が掲載されていました。政府が、2020年1月31日、同年2月7日に定年を迎える東京高検検事長、黒川弘務氏(当時62歳)の勤務を同年8月7日までとする人事を閣議決定したとのことです。この閣議決定が、政府の恣意的な人事権の行使であり、政府に何かしらの思惑があるように受け取れることが問題となっています。

 検察庁法は、検察官の定年を63歳とし、検事総長、すなわち検察のトップの定年のみを65歳としています(検察庁法22条)。以下は条文の引用です。

「第二十二条 検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。」

 東京高等検察庁の検事長は、その他の検察官にあたりますので、定年は63歳です。上述の閣議決定は、政府が、検察庁法の例外を閣議決定で認めたことを意味します。また、東京高検の検事長は、検察官の階層構造でいえばトップクラスといえる地位であり、上には次長検事、その上にはトップの検事総長がいるのみです。

 この閣議決定の本質

 このことから、この閣議決定の本質は、政府が検察トップの人事に口を出した、というところにあります。では、その問題の本質はいかなる点にあるでしょうか。

 まず、検察官は国家公務員であり、行政権の一翼を担う立場にあります。いわば、行政権の上命下服のピラミッド構造に含まれる存在ですから、行政権のトップたる内閣・政府の命に従うこともあるでしょう。

 次に、検察官は公訴権を付与された唯一の国家機関です。公訴権とは、「国家刑罰権の具体的適用・実現を目的として「公訴」を提起し追行する権限」(酒巻匡『刑事訴訟法』有斐閣2015年 219頁)を言います。つまり、刑事裁判を起こすことができるのは検察官だけで、検察官が起訴しなければ刑事裁判が始まらないということです。

 さらに、この刑事訴追の相手方には、当然に国会議員も含まれます。例えば、IR誘致関連の収賄容疑で身柄を拘束された国会議員がいたことは記憶に新しいでしょう。

 したがって、起訴の権限を独占する検察官は、司法的な役割を担う点で、行政権から独立していることが求められます。なぜなら、国家の公訴権が行使されなくなる危険があるからです。例えば、自民党の議員に罪を犯した疑惑があるとしても、政権を握る自民党が検察側に圧力をかけられるなら、疑惑は疑惑のまま、その議員が訴追されない危険があることは想像に難くないでしょう。

 そして、今回の閣議決定の問題は、検察官の行政権からの独立を奪おうとする行為が露骨になされていることです。定年を延長してまで、黒川氏に検事長を続けて欲しいということは、黒川氏ならば、政府に関係する人を訴追しないでくれる、という期待が隠れていると推測することも可能です。前例のない定年延長には、検察の人事に介入してまでも、訴追されたくない、という政府の魂胆が透けて見える気がします。

終わりに

 政府の検察人事に関する露骨な介入の問題を紹介しました。でも僕は、この問題は、検察官の独立が危ぶまれるという点に留まらないと思います。ここまでして政府が訴追を逃れたいと考えたのは、おそらく「桜を見る会」の問題が、公職選挙法違反や政治資金規正法違反に当たるものであることが影響しているでしょう。

 そうすると、逃げようとしている政府を許していいのか、という問いが主権者たる国民一人一人に突きつけられていることになりませんか。疑惑を疑惑のままで終わらせていいはずがありません。 

 この疑惑を、いま、野党は国会で追及しています。彼らがいなければ、与党は何をやってもバチは当たらないと増長してしまうでしょう。主権者たる我々国民は、今の国会の動きを注視する必要があります。

 なお、この文章には推測に頼らざるを得ず書かれた記述があり、書かれた内容が全て正解というわけではありません。ただ、こんなふうに考えることもできるのでは、という意識のもと、筆を走らせた次第です。誤った記載があれば、ご指摘よろしくお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!

sucrose0915
よろしければ、サポートをお願いいたします。今後の思考と執筆の糧となるように使わせていただきます。