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デザイナーの社会的責任を考える|RightNight#10「デザインとフィクション」

RightDesignInc.のnoteでは、弊社が携わってきたプロジェクトに限らず、社内の文化をご紹介していきます。今回ご紹介するのは、2024年5月24日に弊社で実施された交流イベント「RightNight」の様子。株式会社テコより代表の石井玲緒さんをお招きし、「デザインとフィクション」についてお話いただきました。

弊社デザイナーによる今回のKV。石の(石井)ライオン(れお)がモチーフ。

新しい視点と交流の場「RightNight」

RightNight当日の様子

「RightNight」とは、月に一回、弊社と関わりのある方を招いて開催している交流イベントです。毎月1つのテーマに対してゲストがプレゼンテーションを行い、お酒や軽食を楽しみながら、みんなで議論していきます。参加者の職業が多種多様なため、あらゆる角度の真剣なディスカッションから笑える話まで幅広い話題が展開され、毎回オフラインならではの熱気を見せながら、RightDesignInc.を介して新たな人と人のつながりを生み出す場にもなっています。

これまでのRightNightでは「麻雀」から「AIとクリエイティブ」、「日常のUX」、「B Corpから考える“正しい”ビジネス」、「コンテンツ全史」、「検索の学校」など、狭義の「ビジネス」や「デザイン」に留まらず、幅広いテーマを扱ってきました。回を重ねるごとにゲストの発表も熱のこもったものになってきており、RightNightもまた、RightDesignInc.のインプットの機会としても機能しているのです。

デザインは社会に嘘をついている?

ゲストスピーカーの石井さん

今回ゲストスピーカーを務めた石井さんは、ブランディングから広告キャンペーンまで幅広く担当するアートディレクター/デザイナーであり、数年前からRightDesignInc.と多くのプロジェクトを共にしてきたパートナーでもあります。

さまざまなプロジェクトに携わった経験をもつ石井さん。2年の浪人経験に伴う焦りから、大学へ入学してすぐにフリーランスとしてデザイナーの仕事を始めていたと言います。

自分のデザインが評価されて価値がつき、社会に広がっていくことに楽しさと満足感を覚える一方で、石井さんは「綺麗ではない仕事」の存在を知っていくことになりました。WEBマーケティングの隆盛と共に増える誇張表現や嘘の広告、そうした「見せかけ」のデザインを目にするなかで、美大予備校生の時に抱いていた「デザイン」の理想が崩れるとともに、広告が社会に嘘をつく手段にもなっていることに危機感を覚えるようになったといいます。

宗教・デザイン・フィクション

果たして、デザインは社会に何を提供しているのか。数年前に日本でも大ブームとなったユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』を読んだ石井さんは、ブランドや企業、クリエイターの思いをロゴやビジュアルに込めていくデザイナーの営みは、教典の内容を伝えるために描かれた宗教画と通ずる部分があるのではと考えるにいたりました。

『サピエンス全史』では、私たち人類=ホモ・サピエンスが生き残った理由のひとつは目の前に存在し得ない「フィクション」を信じられたからだと説かれています。宗教や思想、通貨など、ある種のフィクションを多くの人々が共有するために、絵画のような創作物が重要な機能を果たしていたことも事実でしょう。

松田行正『宗教とデザイン』でも詳述されているように、宗教とデザインは深くつながっています。加えて古代や中世の宗教のみならず、現代においてもプロパガンダや地図、グラフなど、私たちは広義のデザイナーがつくったフィクションを介してコミュニケーションを行っているはずです。

広告のフィクションと向き合うためには

こうしたデザインとフィクションの関係を考えるうえで「広告」は無視することのできない存在です。石井さんは例としてバブル全盛期の1988年に一世を風靡した栄養ドリンク剤「リゲイン24」の広告を挙げます。

いまでも多くの人の記憶に残っているメインコピーは「黄色と黒は勇気のしるし!!24時間戦えますか」。当時はテーマ曲と共にヒットを記録したものの、働き方改革が進められている現代にこの広告が打ち出されたら物議を醸すでしょう。かつては信じられていたフィクションも、時代の変化に伴い効力を失うこともあるわけです。

他方で、参加者のひとりからは現代の「リゲイン24」としてレッドブルの広告を捉えられるのではないかという指摘も。レッドブルのコピー「翼をさずける」も捉えようによっては「死ぬ気で頑張れ」=「24時間戦えますか」を意味するものと言えるでしょう。普遍的に“正しい”メッセージが効果的とも限らない一方で、広告の生み出すフィクションは時代とともにつねに変化せざるを得ないのかもしれません。

とりわけ広告の良し悪しは絶対的な基準がなく、時代や背景によっても変わってくるものです。しかし広告を含む「デザイン」に携わるデザイナーやクリエイターこそ、自身が生み出すフィクションがどんなメッセージをもちうるのか注意する必要があるはずだと語り、石井さんは発表を締めくくりました。

RightNight#10での議論の様子

モノや情報が飽和し、AIのように高度なテクノロジーが発展したいま、デザイナーの役割も変わっていくでしょう。フィクションのあり方さえも変わっていくからこそ、広告やブランディングの領域に関わる私たちはよりその倫理を問われるようになっていくのかもしれません。


RightNightは月1回のペースで今後も開催される予定です。現在はセミクローズドなイベントとなっていますが、これからは広く多くの方に参加いただける場を設けることも検討しています。今後も記事や公式SNS(X、Instagram)にて紹介していきますので、ぜひご覧ください。


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