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ワードローブの森の中から(46)「Tailor & Cutterのジャケット」

 2018年の夏。私の物語の第1作「春は菜の花」を出版し、南青山にあるBar JADAで出版記念パーティーを催しました。ただ、問題がありました。当時サラリーマン(at WOWOW)をしていた私は、夏に着るちゃんとしたジャケットを持っていませんでした。もちろん、夏の仕事用のは持ってはいましたが、プライベートでサクリと着るのは持っていませんでした。そして…Bar JADAのバーテンダー小澤さんに相談したところ、教えてもらったのが、南青山にあるTailor & Cutterでした。
 昔昔。WOWOW入社前の、英国政府機関で働いていたころ、一度だけ、サービル・ローでジャケットを作って以来、採寸から裁断・縫製をしてもらったことがなく、ダラダラとしたジャケット人生を過ごしていました。ダラダラとはいえ、何十年も着ているブルックス・ブラザーズのジャケットの完成度が高いことも一因です。
 ジャケットの布地と裏地を相談しながら、背中を押してもらい決めたのが、ピンク色したフラミンゴの裏地でした。
 あれから5年という時間が流れましたが、まだまだ着こなせぬ私がいます。素敵に仕立てられたジャケットは、人を選ぶものだとつくづく思います。ここから5年。着こなせる人間になれればと願うばかりです。
 靴はコールハン。パンツはリーバイス。シャツはブルックス・ブラザーズの白のポロ。中身は私。
 素敵な服とは、結局、「私」でしかないのだとつくづく思います。昔読んだ話ですが、柴田錬三郎さんが銀座のバーに飲みに行くとき、ベルトが見当たらず、そのあたりにある紐をズボンに通して出かけたという逸話があったはず。中嶋雷太

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