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嗅覚を麻痺させてはいけない
振り返ってみると、もともとわたしは、すべての感覚が敏感だったのだと思います。でもそれは自分にとっては生まれつきの極々普通の感覚だったので意識することはなかったのですが、幸か不幸か香害がきっかけで「気づかされた」という感じになりました。
とくに嗅覚については今一番のわたしの関心事であり、今回はそこを深く掘り下げてみたいと思いました。
嗅覚の仕組み
嗅覚は、鼻腔の奥にある嗅上皮に存在する嗅細胞がにおい分子を感知することで働きます。におい分子が嗅細胞に付着すると、そこから信号が嗅神経を通じて脳に送られ、わたしたちは「香り」や「臭い」を感じるのですが、特筆すべきは、この嗅神経が直接、脳の大脳辺縁系という部位に結びついている点です。
この大脳辺縁系は、いわゆる原始的な脳で、わたしたちの生命活動や感情や記憶を司る役割を担っています。
嗅覚と感情のつながり
嗅覚はわたしたちの感情に強い影響を与える感覚です。
ある研究では、特定の香りがストレスを軽減し、リラックス効果をもたらすことが確認されています。
たとえば、ラベンダーの香りはリラクゼーション効果があることが広く知られており、アロマテラピーにも多く使われています。逆に、腐敗した食べ物のような不快な臭いは、わたしたちに危険を知らせる信号として機能します。
わたしが日頃苦しめられている昨今の合成洗剤や柔軟剤に代表される香害製品は、不快を通り越して緊急性のある危険なニオイとして、一気に恐怖や怒りなどの強い感情を呼び起こします。
また、香りは人間関係にも影響を与えることが知られています。
人は無意識のうちに他者のフェロモンを嗅ぎ取り、好意や親近感を形成すると言われ、わたしたちの日常的な人間関係やコミュニケーションにも密接に関係しています。
嗅覚と健康の関係
嗅覚は、わたしたちの身体的・精神的な健康状態とも深く結びついています。
嗅覚が鈍る、あるいは失われる症状(嗅覚障害)は、単に香りを感じられないだけでなく、食欲の低下や栄養不足を引き起こすことがあります。また、嗅覚障害はアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の初期症状として現れる場合もあり、嗅覚は健康のバロメーターとしても機能します。
嗅覚の重要性を再発見する
嗅覚は視覚や聴覚ほど注目されることは少ないかもしれませんが、その力は非常に大きいものです。
図らずも香害によって、その重要性を再認識させられてる今、個人にとっても社会にとっても「本当の豊かさとは何か?」を考えるターニングポイントに来ているように感じます。
香りを通じて記憶や感情を呼び覚ます力、わたしたちの行動や健康に影響を与える力は、日常生活を豊かにする一助となります。
わたしたちが日々感じる香りに少し意識を向けてみることで、今まで気づかなかった新たな発見があるかもしれませんし、好きな香りを生活に取り入れたり、自然の中で新鮮な空気を感じる時間を増やすことで、嗅覚を通じて他者に対する思いやりを育むきっかけになるかもしれません。
ですから今一度、この感覚にフォーカスしてみませんか?
自分のために、社会のために、そして、この美しい緑の地球を守るために。