ライブ会場で、涙はこぼれ落ちた。
開演と同時に、光の中に9人の姿が見えた。
タカシさんの歌声で会場が満たされる。
たくさんの歓声に包まれて、
気が付いたら私は何故だか、泣いていた。
ライブ会場の一番上のエリア、後ろから2列目。
涙がぽたぽたと落ちている事に、
自分自身でも、しばらくの間、気が付きもせずに、
遠くから彼らを見ていた。
生まれて初めて買ったペンライトを、
振る事すらできず、ただ、それを抱きしめている。
その時、私はどうして涙が出ているのか、
わからなかった。
悲しいわけではない。
もちろん、心からうれしかった。
でも、うれしい気持ちだけが心を震わせているのでは無いことは、何となくわかっていた。
「7人のメインダンサーと2人のバックボーカル」で構成される超特急の事が好きなった。
40歳を過ぎて、人生で初めての推し活だ。
超特急の事を知れば知るほど、ライブに行ってみたいと思う気持ちが強くなったのは、とても自然で、必然だったのかもしれない。
ダンス、歌、演出。超特急9人と8号車(超特急のファンネーム)が一体になる、かけがえの無い瞬間を、私も体感したい、そう思った。
でも、私にとってライブ会場は未知の世界。
余計なことを考えすぎる性格も相まって、
ライブに行ける事は、奇跡のようなもので、
そもそもが無理な事では、と思ったりもした。
仕事、体調、家族の状態、お金の事。
公共交通機関が止まらない事。
もちろん、チケットが当選すること。
全てのピースがきちんとそろって初めて、実現することだと思うから。
すこし、大げさなのかもしれないが、私にとってはライブに行くとはそれぐらいの事である。
どうしてそんな風に感じてしまうのだろう。
超特急と出会う前の私の日常は、
全ての優先順位が壊れてしまっていた。
最優先は仕事。
仕事をするために、体調管理が2番目。
体調を崩さないために、休みを取るが3番目。
体調を壊すと仕事に響くから。
仕事をするために体を休める。
何の為に休んでいるのか、
もう、訳が分からない状態だった。
過去の小さな積み重ねが、私をそうさせていた。
楽しみにしていた事を、
仕事の事で何度もあきらめた。仕事の調整がついたのに、そんな時に限って体調を崩した。そして、追い打ちをかけるように仕事にも響いた。
望めば望むほど、自分の手からこぼれ落ちていく。小さな事も、大きな事も。
人生とは、そういうものだと自分に言い聞かせ、
何も望まず、仕事さえしておけば傷つかないと、
考えることをやめて、
投げやりになっていたのかもしれない。
しかし、超特急と出会った私は、違った。
少しだけ強くなっている。
できない、やれないとあきらめずに飛び乗った。
奇跡を信じて。
幸運にも、チケットに当選した私は、
きちんと休みが取れるように必死に仕事をした。
全ての優先順位をひっくり返して。
数日前には夏バテで体調を崩したし、仕事の調整が難航したけれど、投げやりにはならなかった。何度もダメかもしれないと思う瞬間を、ひとつづつ乗り越えて、当日ライブ会場までたどり着いていた。
それでもなお、
開演を知らせる暗転のその時まで、不安だった。
私は、思いが叶う瞬間を迎えられるだろうかと。
感情の整理もできないまま、その時を迎えた。
タカシさんの歌声が、
こぼれ落ちた涙が、
私の心をやわらかくしていく。
私は幸せ者だ。
働けていることも、ただ生きていることも。
超特急の事を好きでいられることも。
私を、私でいさせてくれる全ての事に、
私は支えられて、存在しているのだと感じた。
うれしくて、ほっとして、でもまだ少し不安で。
だけど希望に満ちあふれている。
そして、ここにいられることを奇跡のように感じ、
何に対してかわからなかったが、
心から何かに、そして全てに、感謝した。
ライブ会場は、
8号車のみんなの声があふれていた。
大好きだと、ここにいさせてくれてありがとうと、叫んでもいいんだよと、たくさんの歓声が、
私の背中を押してくれているような気がした。
手に持っていたペンライトを、
少し控えめに振ってみた。
声を出しているつもりが、ちっとも出ていない。
でも、あふれる涙をぬぐい、
8号車のみんなと一緒に、
震える声で「ありがとう」と私は叫んだ。
#超特急 #走れ!!!!超特急
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